風紀“副”委員長はギリギリモブです

柚実

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親友が天然すぎて困ってます

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七限までの授業を終えて、帰路きろに着く。
たとえ大量の仕事を押し付けられようとも、突然転校生が来ることを知らされようとも、授業はサボらない。
それがモブとしての誇りだ。


(ほんと、今日の昼休みは散々だったな……。いつもの二割増しで胃が痛い。この後も風紀室で書類の山が待ち構えているかと思うと……もう……)


めちゃくちゃ気が沈んでいるが、それでも愛想笑いは忘れない。
寮は学年ごとに棟が分かれていて、教室棟から歩いて五分くらいのところに三棟並んで建っている。
つまり、学園の生徒は全員もれなく登下校のルートが被るので、やはり帰り道でも気が抜けないのだ。
たまに『佐倉様~!』と呼びかけられるのに、にこやかに対応しながら寮への道を急ぐ。
なんでこんなアイドルみたいな真似をしなくちゃいけないんだ。


「よう、佐倉。おつかれー」


突然ポン、と肩を叩かれて、振り返るとそこには明るく笑う背の高い男子生徒が立っていた。
顔はまあ、イケメンの部類だろう。
この学園イケメン多すぎて最近イケメンの基準がわからなくなってきてるな。


「お疲れ様です、黒柳くろやなぎくん」


その男子生徒の名は黒柳くろやなぎ悠矢ゆうや
俺と同じ学年で、付き合いの長い友人だ。昼休みも、彼と一緒にご飯を食べていた。


「なんか疲れた顔してんな。昼休み呼び出されてたし、何かあったのか?」

「まあ、色々と……」


(色々あったというか、これから起こるというか……)


「ふーん……まあ、後で聞かしてくれよ!」


人懐っこい笑顔でそう言って、俺の隣に並んで歩き出す。
すると、さらに多くの視線が突き刺さった。


「『黒龍こくりゅうきみ』だ……!」

「あの二人、やっぱり仲良いよな~」

「お二人ともイケメンで、本当にお似合いだよね!」


(あー、また面倒なことに……)


この学園の奴らは、男二人が集まったらそういう関係だと思ってしまうのか?
普通、同性だったらまず友情だろ。その間にあるものは。間違っても恋愛感情ではないだろ……。


「……早く帰りましょう」

「そうだな!俺も疲れたし早く帰りたいなー」


(こいつもこいつで能天気のうてんきすぎるんだよ!自分が注目されてるってことをもっとちゃんと理解しとけ!)


黒柳はちょっと天然なところがある。

高身長で、イケメンで、性格も良くて、しかも、今年からは生徒会で書記をつとめている。つまり、『役職持ち』。
そんな奴がモテないはずはなく、当然多くの生徒から熱烈ねつれつなアピールを受けているわけだが、本人はまっっっったく気づかないのだ。


たとえば。


ドンッ

「きゃっ!」

「おっと」

「く、黒柳様……!すみませっ……」

「大丈夫、大丈夫!それより、君の方こそ怪我してないか?」


黒柳がすれ違いざまにぶつかった生徒を抱きとめて、心配そうにその整った顔を近づける。
いやお前、距離感おかしいって。


「だ、大丈夫ですぅ……」


ああ、オチたな。

誰の目から見ても明らかに、その生徒は恋に落ちていた。
目をハートにして、頬を赤く染めていた。
それに対して、黒柳は。


「そうか、よかった!」


ぜんっぜん気付いていない。
輝くような笑顔で完全スルー。
これが、黒柳悠矢という男なのだ。


「ありがとうございました!」

「なんか、あいつ……」


そして、きわめつけに、去っていく生徒の姿を後ろ姿を眺めながら、口を開く。


「顔赤かったけど、熱でもあんのかな?」

「お前ってほんとバカだな」


やっべ、思わず本音が。

聞かれてないよな?と周りをチラチラ見渡して、大丈夫そうでほっとする。
あまりにも黒柳が天然すぎて思わずツッコミを入れてしまった。
だって黒柳がラノベの鈍感系主人公みたいなこと言うから……。


「え!?なんで急に罵倒されてんの!?」

「……なんでもありません」

「いやいや!なんでもなくないだろ!」

「なんでもありませんから、早く帰りましょう」


この天然と一緒にいるとこっちまで気が抜けてきて、優等生の仮面が外れてしまいそうで怖い。
早く帰って一人になりたい……と思いながら歩くスピードを速めた。


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