風紀“副”委員長はギリギリモブです

柚実

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波乱の幕開け

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ブー、ブー

「んー……」


振動を続けるスマホに手を伸ばし、寝ぼけた頭で画面をタップする。


「…………ねむ……」


ベッドの上で身体を起こし、窓から降り注ぐ太陽の光に目を細めた。
今日はいい天気だなぁ。
こんなに雲ひとつない快晴なのに、俺の心はどんよりとくもっている。


「今日か……」


今日。ついに転校生がやって来る。


「……はぁ」


思わずため息をらす。
この日が来なければいいと、どれだけ願っただろうか。
しかし時間というものは残酷で……あっという間に今日になってしまった。


(何も起きないといいけどなぁ……)


この考えこそが思いっきりフラグであることを、寝ぼけた頭じゃ思い当たらなかったのだ。




ーーーーー




「────以上で、朝のHRを終わります。起立、気をつけー、礼」

『ありがとうございました』


担任が教室から出て行き、教室の中がガヤガヤと騒がしくなる。
いつもの朝の光景だ。
大丈夫、いつも通りだから、心配することなんて何も────。


「えっ、転校生が来たの!?!?」

「まじで!?え、見に行こ~!」

「どんな子が来たのかな?」


(フラグ回収が早すぎる!!!!!)


思わず叫んで机に突っ伏したくなったが、今まで培ってきた仮面でなんとか隠しきった。
生徒達が口々に話しながら一斉に教室を出て行き、俺は一人取り残されて遠い目で現実逃避をする。

二年の教室まで広まっているということは、もうすでに相当な騒ぎになっているに違いない。


(死ぬほど行きたくないけど、さっさと行かないと仕事が増えるよなぁ……)


憂鬱ゆううつな気持ちのまま、のろのろと席を立つ。
あー、まじで行きたくない。
どんな騒ぎになっているか想像するだけで胃が痛い。

できれば俺一人で対処しきれる騒ぎだといいな、と願いながら一年のフロアに向かった。




ーーーーー




「すみません、そこを通らせてほしいのですが」

「佐倉様!?どうぞどうぞ!」

「通り道を邪魔してしまってすみません!!」

「死んで詫びます」

「いや、死なないでください」


過激すぎるんだが。
どこの江戸時代だよ。


「おい、みんな!佐倉様がいらっしゃってるぞ!」

「なぜ一年のフロアに……風紀のお仕事でしょうか」


俺が通るというだけで、わらわらと群れていた生徒たちが一瞬で道を空けていく。まるでモーゼのなんとかだ。
仕事が早く済むのでありがたくはあるのだが、やはり少し居心地が悪い。

そんな敬われるような人間じゃないのに……と申し訳なさでいっぱいになるのだ。
こんなモブが下手に目立っちゃってごめんね。でも役職持ちではないから安心してほしい。


(転校生と天城先輩は……あそこか。
うまは多いけど、ちゃんと距離を取って見てるだけ偉いな。これならそんなに騒ぎは起きなさそ────)


「────じゃあ、柊人しゅうとさんは生徒会長なんだぁ、すごいね!」


男子にしては高い声が廊下に大きく響いて、その場が凍りついた。


(…………やばい)


この学園のトップである生徒会長に、一年生が、しかも初対面で、タメ口。
さらに、下の名前まで馴れ馴れしく呼んでいた。

これは、まずい。


「はーー!?!?何あの礼儀知らず!!」

「一年のくせにタメ口って非常識すぎだろ……」

「しかも天城先輩に……!信じられない……!」


全員そろって硬直したあと、再び動き出した生徒達は、みんな非難轟々だ。
そりゃそうだろう。
ただでさえ先輩後輩の関係に厳しい高校という社会、しかもここは名家の子息ばかりが集まる鳳凰学園だ。
礼儀には厳しいため、天城先輩の親衛隊はもちろん、全生徒が怒り狂うのもおかしくはない。


(想像してた中でも、わりと最悪に近い状況だな……)


転校生はその肩書きだけで騒がれてしまうだろうけど、本人がまともであれば少しはマシになる可能性もあった。
けれど、残念ながら転校生本人に期待はできないらしい。むしろ逆に状況を悪化させるタイプだな、これは。


「あんなバカな奴は、天城様にすぐ潰されちゃうだろうな」

「あの天城様にケンカを売るなんて……あいつ、頭おかしいんじゃないの?」


『黒狼の君』と称される天城先輩に馴れ馴れしく接する転校生。
誰もが、転校生に鉄槌てっついくだると思っていた。
そして、それによって溜飲りゅういんを下げる気でいたのだろう。

しかし、その期待はあっさり裏切られることになる。


「へぇ……お前、面白いな」


天城先輩は額に青筋を浮かべることも、不機嫌そうな顔になることもなく、むしろ楽しそうに笑みを浮かべて見せたのだ。


(あーあ……これで、正真正銘『最悪』の状況だ)


先輩の笑顔に頬を染めた転校生が、えへへと照れ笑う。
再び場が凍りつく。
俺は、全てを諦めて目を閉じた。

いやもうこれは、どうしようもない。うん、俺じゃ止められなかったからね、しょうがないよ。


廊下中に、生徒達のギャー!!という悲鳴が響き渡っていた。

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