19 / 29
かわいい後輩
しおりを挟む「とりあえず、転校生の動きをチェックするためにも、一年生に監視を頼みたい。佐倉、誰かいい奴はいないか?」
「でしたら……適任そうな後輩がいますので、頼んでみましょう」
「お、本当か。ありがたいな……ちなみに、誰なんだ?」
「そういえば、奏さんには紹介していませんでしたね。今度、連れて来ますよ」
ーーーーー
「────と、いうことなんですが。お願いできますか?」
「はい!任せてください!」
俺の真正面に座る人物は、満面の笑みで首を縦に振る。
俺はホッとして、作り笑いではない微笑みを浮かべた。
「ありがとうございます、雪見くん」
「いえいえ~。佐倉先輩の頼みでしたら、いくらでも聞きますよ」
嬉しそうに頬を染める彼は、一年生の雪見蓮。
雪見は俺と同じく高校からの外部生で、四月に事件に巻き込まれていたところを風紀の俺が助けて知り合いになった。
今でこそ、その可愛さで男子生徒から人気を博しているが、入学当初は顔に似合わない喧嘩っ早さで何度も問題を起こしていた。
まあ、無理やり言い寄ってくる男たちが悪いので、雪見に否はないのだが。
そんな風に、ずっと周りを警戒して威嚇している雪見が、一年前の俺と重なって見えて、つい話しかけてしまったのが始まりだった。
今では俺ともかなり打ち解けてくれて、元々の性格なのだろう明るさを取り戻している。
それによって雪見の可愛さに気づいたのかファンが急増したみたいだが、俺が風紀の方にも雪見を気にかけるよう言っておいたので、そう簡単には手を出せない。
もう雪見はうちの子だからね。雪見が欲しかったら俺を倒してから行くんだな!!
「本当にありがとうございます。雪見くんが適任だと思ったので、受けてくれて嬉しいです」
「僕は力が強くないので、こういった形でしかお助けできませんから……」
雪見は小柄で華奢な体型の通り、あまり力が強くない。喧嘩もどちらかといえば口論で挑むタイプだ。
しかし、その分頭の回転が早く、情報収集能力に長けているので、彼と交友関係を持てたことは仕事の面でもプラスになった。
めちゃめちゃいい子だし仕事もできるし、絶対風紀委員会にほしい。ていうかもうスカウトする気満々だけど。
「十分です。いつも、本当に助かっていますよ。
……でも、あまり無理はしないでくださいね。今回、転校生の情報がほとんどゼロなので、何かあったら深入りせずに、すぐ僕のことを呼んでくださって構いませんから」
「転校生が来てから、まだ三日も経ってませんからね……気をつけます」
そう言って頷くと、雪見は席を立ってぺこりと頭を下げた。
「では、僕はこれで……」
「昼食は?食べていかないんですか?」
雪見に転校生の監視を頼むために呼び出した場所は食堂だ。
なんとなく、このまま一緒に食べていく流れかと思ったんだが。
「皆の前で先輩を独占したら、色んな人に恨まれちゃいますよ」
雪見が苦笑しながらそんなことを言うから、俺は首を傾げた。
「どういうことですか?」
「……まあ、先輩は分からなくても大丈夫です」
「は、はあ……」
なんか弟を見守るような生あたたかい目で見られてるんだけど。
俺の方が先輩だぞ?
「それに……」
雪見はいたずらっぽい笑みを浮かべると、楽しそうに口を開く。
「どうせなら、先輩と二人っきりでお食事がしたいので」
「ウッ」
どうしよう、心臓を撃ち抜かれたかもしれない。
なんだこの可愛さは。もうはちゃめちゃに可愛いんだが。
ああ、今日が俺の命日か……?
(……って、違う違う。落ち着け俺、相手はちゃんとした男子だぞ。しかも、男にこんな風に思われたら雪見だって怖いよな。
あぶねー、もうちょっとで後輩に嫌われて病むとこだったわ)
「もう、雪見くん……。あまりそういうことを言ってはいけませんよ?勘違いしてしまう人もいるでしょうから」
「えー、佐倉先輩にしか言いませんよ?」
「だから、そういうとこですって……。僕の周りは天然たらしばかりじゃないですか」
どこぞの黒柳くんとかね。
人ってモテすぎると麻痺しちゃって、自分の可愛さとかカッコ良さを忘れちゃうのかもしれない。
はぁ……モテる人の友達は大変だなぁ……。
「……佐倉先輩にだけは、言われたくありませんけどね」
え?なんで俺はまた生あたたかい目で見られてんの?
162
あなたにおすすめの小説
笑わない風紀委員長
馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。
が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。
そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め──
※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。
※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。
※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。
※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
ビッチです!誤解しないでください!
モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃
「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」
「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」
「大丈夫か?あんな噂気にするな」
「晃ほど清純な男はいないというのに」
「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」
噂じゃなくて事実ですけど!!!??
俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生……
魔性の男で申し訳ない笑
めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!
平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています
七瀬
BL
あらすじ
春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。
政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。
****
初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m
聞いてた話と何か違う!
きのこのこのこ
BL
春、新しい出会いに胸が高鳴る中、千紘はすべてを思い出した。俺様生徒会長、腹黒副会長、チャラ男会計にワンコな書記、庶務は双子の愉快な生徒会メンバーと送るドキドキな日常――前世で大人気だったBLゲームを。そしてそのゲームの舞台こそ、千紘が今日入学した名門鷹耀学院であった。
生徒会メンバーは変態ばかり!?ゲームには登場しない人気グループ!?
聞いてた話と何か違うんですけど!
※主人公総受けで過激な描写もありますが、固定カプで着地します。
他のサイトにも投稿しています。
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
クラスのボッチくんな僕が風邪をひいたら急激なモテ期が到来した件について。
とうふ
BL
題名そのままです。
クラスでボッチ陰キャな僕が風邪をひいた。友達もいないから、誰も心配してくれない。静かな部屋で落ち込んでいたが...モテ期の到来!?いつも無視してたクラスの人が、先生が、先輩が、部屋に押しかけてきた!あの、僕風邪なんですけど。
王道学園のモブ
四季織
BL
王道学園に転生した俺が出会ったのは、寡黙書記の先輩だった。
私立白鳳学園。山の上のこの学園は、政財界、文化界を担う子息達が通う超名門校で、特に、有名なのは生徒会だった。
そう、俺、小坂威(おさかたける)は王道学園BLゲームの世界に転生してしまったんだ。もちろんゲームに登場しない、名前も見た目も平凡なモブとして。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる