番持ちのユリア

キラ

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ユリアの決意

「ユリア、、、本当に良いのか?」

ジュリアンが尋ねた。
ユリアに前世の記憶があると聞かされたのは、ラングレイと結婚すると告げに来た時だった。

前世では四年後、21歳の時に殺されたと話した。

そんな結婚はすべきではない。と反対したが、公爵家にさからえるはずがない。
そう言ってユリアは笑った。

ジュリアンの爵位の返上はその時に考えた。

ユリアは四年後にラングレイに殺されると話したが、子ができると将来は変わるかもしれない。

実際に前世では父はまだ生きていたと話し、
今世では他界している。

未来が変わる事に期待した。


アーシャが産まれたので、爵位の返上をユリアに伝えたら、公爵家を出る手伝いをして欲しいという手紙が届いた。

アーシャが産まれて、公爵家での夫人の立場が揺らぎないものになったはずなのに、どうした事かと王都に来てみれば、ラングレイとニードル侯爵家のご令嬢との恋物語が噂になっていた。

ユリアは悪女だ。

迷わず手助けをする事にした。
ユリアは手ぶらで公爵家を出る。
アーシャの物を買い揃えておかねばならない。

着替えの服を数枚。
食べ物は柔らかい物。
高速馬車での数日を過ごせるほどで良い。

そう思い街に出た日、ラングレイに会った。

彼は、聞いてもいないのにナタール嬢とのことを、笑って話した。

「ユリアを泣かせたりはしないと」

泣かしたりはしないかもしれないが、
今ユリアは悪女と噂されている。
ラングレイとナタール嬢の恋路を邪魔する女だ。
妻のいる男に言い寄る女の方が悪女だと思うが、世間はその所は考えないようだ。

ラングレイも笑って話せるくらいだ、噂を肯定しているようなものだ。

ユリアは前世でラングレイに殺された。
二人の事は全く知らないにも関わらず殺されたのだ。

これ程噂になっていれば嫌でもユリアの耳に入る。
ユリアがラングレイを問い詰めない事に疑問を持たないのだろうか?

一途にユリアを愛していた頃のラングレイが、相手をナタール嬢に変えたのだとしたら、、、、当然ユリアは邪魔になる

ジュリアンとしても、可愛い妹を殺されるわけにはいかない。

幸いリンドルに家がある。
ユリアから相談を受けて、一度リンドルに向かった。
昔ユリアが住んでいた家だ。
長い間空き家にはしていたが、持ち主はユリアだ。
家を住めるようにして迎えに戻ってきた。

社交シーズンの終わり、街がまだ貴族でごった返しているうちに、ユリアとアーシャを連れてリンドルに向かうつもりだ。

高速馬車の個室の切符も買った。

ラングレイと別れて、買い物をする。
宿で念入りに荷物を作り、買い忘れがないか手帳をチェックした。



街でジュリアンに出会った。
今年は夜会に出席しないので、久しぶりに顔を見た。
彼は相変わらず貴族らしくない貴族だ。
出会った瞬間、ジュリアンは顔を引き攣らせた。

噂になっているナタール嬢とのことだろうと思った。

ジュリアンの口からユリアの耳に入る事は避けたい。ユリア以外に愛する女性は居ないとはっきり言った。

噂は噂、ジュリアンも信じてくれただろう。
だが、前世では母がナタールを気に入って家に連れ帰った。
特に噂など立たなかったはずだ。

少しずつ、変わっている。

ユリアに話しておくべきか、悩んでいた。



社交シーズンも終わりに近づくと、早めに領地に帰る貴族が、街で土産を買うので、街中は人が多くなる。

「ユリア、、街は人が多い。しばらくは出かけない方が良いよ」

ラングレイはそう言って馬車に乗り込んだ。
最近は城での用事が多い。
頻繁に呼び出されるのか、行くのかは分からないが、出掛けていく。

ナタール嬢との噂は耳にした。
前世はユリアの耳に入ってこなかった。
二人の事は全く知らなかった。
今世は思っていたよりも早い。
ユリアは20歳になったばかりだ。

ラングレイの為に別れよう。
結婚した時に決めていた事だ。
幸いにアーシャがいる。
二人で生きていける。

「アーシャと兄の所に行ってきます。」

午後を過ぎた時間に出かける支度をして、ユリアは執事に言った。

「奥様、旦那様からしばらくの間は出かけるのをおやめになるなるように、今朝、、」

後が最後まで話す前に、ユリアは遮り、

「聞きましたけど、用ができました。行ってきます」

返事を待たずに馬車に乗った。

宿に着き馬車を返す。迎えは要らないと言った。
いつものことなので、馬車は公爵家に引き返す。

ジュリアンを訪ねる時、帰りは宿の馬車で送ってもらうようにした。

ジュリアンが王都に来てからこうする事にしたのだ。

最初は渋っていた御者だったが、宿の馬車はキチンと時間にユリアとアーシャを送ってくるので、信用を得ることができた。

今日、ユリアはアーシャを連れて国を出る。
これ程噂になっているのだ。ぐずぐずしていたらいつ殺されるか分からない。

死人に口無しである。

「ユリア、、、準備はしたが、これで良いのか?」

荷物を確認する。
ユリアのものは何とかなる。
アーシャの荷物が殆どだ。

「食べ物と水さえあれば。大丈夫よ。結構逞しく育てたもの」

トランクの蓋を閉じながらユリアは答えた。
アーシャはお昼寝中だ。

ラングレイとナタールの恋物語はユリアも知っている。
ユリアが悪女で、アーシャを盾に、二人の恋を邪魔し、ラングレイを縛り付けていると言うことも耳にした。

屋敷の使用人が口にしているのだ。
嫌でも耳に入る。
中にはユリアに早くラングレイと別れてくれと言ってくる者もいる。

先日はそんな使用人に足を引っ掛けられて、危うく階段から落ちそうになった。

ラングレイに殺されるのではなく、使用人に殺されるかもしれない。

たかだか子爵家の娘。
使用人の実家の方が高位貴族だったりする。

これ以上屋敷に居続けるのは、身の安全のために避けたかった。

ヤエの気持ちがわかる。
私は兄さんが爵位の返上を提案してくれたから、命まで落とさなくて済むけれど。


夕方、いつもだったら屋敷に帰るための馬車を頼むが、今日は兄を駅に見送りに行くのでと、馬車を断った。

ユリアがアーシャを抱き、ジュリアンが二つの荷物を持つ。

はたからみれば、仲の良い子連れの夫婦だ。

既にリンドル行きの高速馬車は入っていた。

「乗って待つ?」

「うん」

こんな場所に知り合いもいないが、誰にも会いたくなかった。

アーシャは産まれて初めて見る高速馬車が珍しいようで喜んでいる。

「「泣かずに良かった」」

胸を撫で下ろす。

窓のカーテンを開けた。

友人を見送りに来たクールレイが、馬車の中にユリアを見た事には気づかなかった。










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