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想い人はマイア……?

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 声がした方向にはひとりの男生徒が立っていた。
 身なりを見る限り貴族だろう。
 しかし、他の貴族のように豪奢な宝石や装飾がある服装ではない。無駄なものはそぎ落とし、かつ品のある装いと言える。

「「……げ」」

 カミラとノアの声が重なった。

「お前たち、またケンカか」

 男が5人の近くまで来ると状況を整理するように言った。
 見慣れた光景なのか男はそれ以上は追及しない。

「これはこれは、男爵家のレオ様がどうなさいました」
「おい、ノアその喋り方をやめろ」

 レオと呼ばれた男はノアの言葉に反感を示す。この場に居る者の中で一番背が高いこともあり、彼が凄むとウサギを食べようとするライオンのような構図に見えてしまう。

「はいはい。で、何の用なのレオ、って聞くまでもないか」
「そうだね。マイア様に会いに来たんだよねー」
「レオの目的はいつもマイア様」

 ノアが返事をすると他の者も同調するように口を開く。すると、きりっとした顔を保っていたレオは短く整えられた黒髪まで染める勢いで顔を赤くし、
「な、何を言っている!断じてマイア様に会いに来たわけではないぞ!」

 しかし、カミラとノアを筆頭に5人はニヤニヤとした顔でレオの顔を覗き込む。

「そうだねー。マイア様は今日はまだ来てないね」
「だから、違うと言っている!しかし、そうか。まだ来ていないのか」

 そう言い残し、レオは5人に別れを告げ校舎に消えていった。

「望みあると思う?」
「さあ、どうだろうね。マイア様は最近あの新しい侍女の人にご執心のようだし」
「まさか、マイア様って、そっちの気があるんじゃ……」
「ふ、二人ともその辺にした方が……」

 カミラとノアの話をミアが止める、その前にその人物は庭園の中に来ていた。

「あら、皆さん。ずいぶん楽しそうなお話をしているんですね」

「「……げ」」

 にっこりと微笑む木剣令嬢の笑顔は眩しい。


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