手遅れな召喚者はお使いを頼まれる

桜杜あさひ

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魔法適性なし!

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「ただいま戻りましたー!」

王城の一角にある客間に入る。部屋にはユキトとドレス姿の女性が1人座っていた。

「やぁジン君。急に呼び出して悪かったね」
「はい、それでどうしたんですか?」

「それについては私が」
ユキトの横に座っていた女性が口を開いた。
オリビア・グレース・ルミリア。彼女はルミリア王国第一王女だ。肩口まで伸びた金髪は艶があり軽くウェーブしている。おっとりとした雰囲気で話し始める姿は優雅さを感じさせる。

「実はジン様の魔法適性を調べさせて頂きたいのです。魔法があれば様々な事に応用が効きます。明日からの旅でも役に立つでしょう」

「魔法……。僕にも使えるんですか?」

「はい、適性さえあれば。適性を確認のできる神官を呼びましたので」

オリビアが右手をすっと挙げると部屋の扉が開き、いかにもといった白い神官服を着た老人が現れた。

「それじゃお願いします!」

神官の老人に言われるままにジンは椅子に座ったまま目を閉じ深呼吸をした。

神官は左手に持った本を開きジンの頭上に手をかざす。詠唱が始まるとジンの周りを淡い燐光が満たす。

どうやら適性検査は終わったようで、ジンは目を開けた。目の前ではユキト、オリビア、神官の三人がジンの適正結果が投影された本のページを覗いていた。皆一様に目を丸くしていた。

「えーっと……皆さん?」

三人の様子を見てジンは思った。そういえば、異世界ものの物語はチート能力を持った主人公たちが活躍するなぁと。じゃあもしかして自分もそうかもしれないなぁと。淡い期待を抱きながら結果を聞き出す。

「どうでしたか?僕の適性」

なぜかユキトは顔をそらした。オリビアと神官も困った様子だった。幾ばくかの沈黙を保って、しかしこれを破るようにユキトは口を開いた。

「その……ジン君。どうやら君には、魔法の適性がないらしい。しかも『魔法無効化』なんて呪い付きだ」

「そ、そうですかぁ!適性なしですかぁ。それは仕方ないですね。ーーん?最後なんて?」

「だからね。君には呪いがかけられてるだ。相当強力なね」

「呪いーーーーー!?どうしてまた!?」

それについては気の毒そうな顔をしたオリビアが答えてくれた。

「この世界には神という存在があるのです。その中には人を恨んだ女神がいまして。時折、新たに生まれてきた命に呪いをかけるのです」

「なんですとーーーーーー!!え、でも僕は転移した訳で新しくは生まれてないですよ!?」

「それは……この世界に新しく生まれた命と判断されて、運悪く呪いをかけられたということでしょう」

「そ、そんなぁー……」

がくりと肩を落とした。せっかくの魔法が存在する異世界旅行だというのに、魔法適性なし、さらに呪い付きという楽しみ半減な事実が発覚した。これは落ち込む。

「それで『魔法無効化』というのはどんな呪いなんですか?」

くよくよしても仕方がないので呪いについて理解を深める事にした。これについては僕がということでユキトが説明してくれた。

「言葉通りだね。あらゆる魔法を無効化する。実は実戦ではすごい役に立つんだよ!敵の魔法も消せちゃうし。あ、でも治癒魔法も消しちゃうから怪我したら終わりなんだけど。それでねーー」

「ユキト様……」
オリビアが話がそれ出した所でひとつ咳払いをした。

「ああごめん。今は戦闘の話じゃなかったね。ジン君。その呪いは良いこともあるんだ。例えば状態異常の魔法は効かないし、結界だってすり抜けられる。だから君はどこにでも行けるってことなんだよ」

「どこにでも?……なるほど……」

普段であれば飛び上がるほど嬉しい事だ。しかし今は未知の土地より魔法に興味がある。だから手放しでは喜べなかった。




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