4 / 5
魔法適性なし!
しおりを挟む
「ただいま戻りましたー!」
王城の一角にある客間に入る。部屋にはユキトとドレス姿の女性が1人座っていた。
「やぁジン君。急に呼び出して悪かったね」
「はい、それでどうしたんですか?」
「それについては私が」
ユキトの横に座っていた女性が口を開いた。
オリビア・グレース・ルミリア。彼女はルミリア王国第一王女だ。肩口まで伸びた金髪は艶があり軽くウェーブしている。おっとりとした雰囲気で話し始める姿は優雅さを感じさせる。
「実はジン様の魔法適性を調べさせて頂きたいのです。魔法があれば様々な事に応用が効きます。明日からの旅でも役に立つでしょう」
「魔法……。僕にも使えるんですか?」
「はい、適性さえあれば。適性を確認のできる神官を呼びましたので」
オリビアが右手をすっと挙げると部屋の扉が開き、いかにもといった白い神官服を着た老人が現れた。
「それじゃお願いします!」
神官の老人に言われるままにジンは椅子に座ったまま目を閉じ深呼吸をした。
神官は左手に持った本を開きジンの頭上に手をかざす。詠唱が始まるとジンの周りを淡い燐光が満たす。
どうやら適性検査は終わったようで、ジンは目を開けた。目の前ではユキト、オリビア、神官の三人がジンの適正結果が投影された本のページを覗いていた。皆一様に目を丸くしていた。
「えーっと……皆さん?」
三人の様子を見てジンは思った。そういえば、異世界ものの物語はチート能力を持った主人公たちが活躍するなぁと。じゃあもしかして自分もそうかもしれないなぁと。淡い期待を抱きながら結果を聞き出す。
「どうでしたか?僕の適性」
なぜかユキトは顔をそらした。オリビアと神官も困った様子だった。幾ばくかの沈黙を保って、しかしこれを破るようにユキトは口を開いた。
「その……ジン君。どうやら君には、魔法の適性がないらしい。しかも『魔法無効化』なんて呪い付きだ」
「そ、そうですかぁ!適性なしですかぁ。それは仕方ないですね。ーーん?最後なんて?」
「だからね。君には呪いがかけられてるだ。相当強力なね」
「呪いーーーーー!?どうしてまた!?」
それについては気の毒そうな顔をしたオリビアが答えてくれた。
「この世界には神という存在があるのです。その中には人を恨んだ女神がいまして。時折、新たに生まれてきた命に呪いをかけるのです」
「なんですとーーーーーー!!え、でも僕は転移した訳で新しくは生まれてないですよ!?」
「それは……この世界に新しく生まれた命と判断されて、運悪く呪いをかけられたということでしょう」
「そ、そんなぁー……」
がくりと肩を落とした。せっかくの魔法が存在する異世界旅行だというのに、魔法適性なし、さらに呪い付きという楽しみ半減な事実が発覚した。これは落ち込む。
「それで『魔法無効化』というのはどんな呪いなんですか?」
くよくよしても仕方がないので呪いについて理解を深める事にした。これについては僕がということでユキトが説明してくれた。
「言葉通りだね。あらゆる魔法を無効化する。実は実戦ではすごい役に立つんだよ!敵の魔法も消せちゃうし。あ、でも治癒魔法も消しちゃうから怪我したら終わりなんだけど。それでねーー」
「ユキト様……」
オリビアが話がそれ出した所でひとつ咳払いをした。
「ああごめん。今は戦闘の話じゃなかったね。ジン君。その呪いは良いこともあるんだ。例えば状態異常の魔法は効かないし、結界だってすり抜けられる。だから君はどこにでも行けるってことなんだよ」
「どこにでも?……なるほど……」
普段であれば飛び上がるほど嬉しい事だ。しかし今は未知の土地より魔法に興味がある。だから手放しでは喜べなかった。
王城の一角にある客間に入る。部屋にはユキトとドレス姿の女性が1人座っていた。
「やぁジン君。急に呼び出して悪かったね」
「はい、それでどうしたんですか?」
「それについては私が」
ユキトの横に座っていた女性が口を開いた。
オリビア・グレース・ルミリア。彼女はルミリア王国第一王女だ。肩口まで伸びた金髪は艶があり軽くウェーブしている。おっとりとした雰囲気で話し始める姿は優雅さを感じさせる。
「実はジン様の魔法適性を調べさせて頂きたいのです。魔法があれば様々な事に応用が効きます。明日からの旅でも役に立つでしょう」
「魔法……。僕にも使えるんですか?」
「はい、適性さえあれば。適性を確認のできる神官を呼びましたので」
オリビアが右手をすっと挙げると部屋の扉が開き、いかにもといった白い神官服を着た老人が現れた。
「それじゃお願いします!」
神官の老人に言われるままにジンは椅子に座ったまま目を閉じ深呼吸をした。
神官は左手に持った本を開きジンの頭上に手をかざす。詠唱が始まるとジンの周りを淡い燐光が満たす。
どうやら適性検査は終わったようで、ジンは目を開けた。目の前ではユキト、オリビア、神官の三人がジンの適正結果が投影された本のページを覗いていた。皆一様に目を丸くしていた。
「えーっと……皆さん?」
三人の様子を見てジンは思った。そういえば、異世界ものの物語はチート能力を持った主人公たちが活躍するなぁと。じゃあもしかして自分もそうかもしれないなぁと。淡い期待を抱きながら結果を聞き出す。
「どうでしたか?僕の適性」
なぜかユキトは顔をそらした。オリビアと神官も困った様子だった。幾ばくかの沈黙を保って、しかしこれを破るようにユキトは口を開いた。
「その……ジン君。どうやら君には、魔法の適性がないらしい。しかも『魔法無効化』なんて呪い付きだ」
「そ、そうですかぁ!適性なしですかぁ。それは仕方ないですね。ーーん?最後なんて?」
「だからね。君には呪いがかけられてるだ。相当強力なね」
「呪いーーーーー!?どうしてまた!?」
それについては気の毒そうな顔をしたオリビアが答えてくれた。
「この世界には神という存在があるのです。その中には人を恨んだ女神がいまして。時折、新たに生まれてきた命に呪いをかけるのです」
「なんですとーーーーーー!!え、でも僕は転移した訳で新しくは生まれてないですよ!?」
「それは……この世界に新しく生まれた命と判断されて、運悪く呪いをかけられたということでしょう」
「そ、そんなぁー……」
がくりと肩を落とした。せっかくの魔法が存在する異世界旅行だというのに、魔法適性なし、さらに呪い付きという楽しみ半減な事実が発覚した。これは落ち込む。
「それで『魔法無効化』というのはどんな呪いなんですか?」
くよくよしても仕方がないので呪いについて理解を深める事にした。これについては僕がということでユキトが説明してくれた。
「言葉通りだね。あらゆる魔法を無効化する。実は実戦ではすごい役に立つんだよ!敵の魔法も消せちゃうし。あ、でも治癒魔法も消しちゃうから怪我したら終わりなんだけど。それでねーー」
「ユキト様……」
オリビアが話がそれ出した所でひとつ咳払いをした。
「ああごめん。今は戦闘の話じゃなかったね。ジン君。その呪いは良いこともあるんだ。例えば状態異常の魔法は効かないし、結界だってすり抜けられる。だから君はどこにでも行けるってことなんだよ」
「どこにでも?……なるほど……」
普段であれば飛び上がるほど嬉しい事だ。しかし今は未知の土地より魔法に興味がある。だから手放しでは喜べなかった。
0
あなたにおすすめの小説
主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから
渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。
朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。
「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」
「いや、理不尽!」
初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。
「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」
※※※
専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり)
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
二度目の勇者は救わない
銀猫
ファンタジー
異世界に呼び出された勇者星谷瞬は死闘の果てに世界を救い、召喚した王国に裏切られ殺された。
しかし、殺されたはずの殺されたはずの星谷瞬は、何故か元の世界の自室で目が覚める。
それから一年。人を信じられなくなり、クラスから浮いていた瞬はクラスメイトごと異世界に飛ばされる。飛ばされた先は、かつて瞬が救った200年後の世界だった。
復讐相手もいない世界で思わぬ二度目を得た瞬は、この世界で何を見て何を成すのか?
昔なろうで投稿していたものになります。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
義弟の婚約者が私の婚約者の番でした
五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」
金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。
自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。
視界の先には
私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
そんなに義妹が大事なら、番は解消してあげます。さようなら。
雪葉
恋愛
貧しい子爵家の娘であるセルマは、ある日突然王国の使者から「あなたは我が国の竜人の番だ」と宣言され、竜人族の住まう国、ズーグへと連れて行かれることになる。しかし、連れて行かれた先でのセルマの扱いは散々なものだった。番であるはずのウィルフレッドには既に好きな相手がおり、終始冷たい態度を取られるのだ。セルマはそれでも頑張って彼と仲良くなろうとしたが、何もかもを否定されて終わってしまった。
その内、セルマはウィルフレッドとの番解消を考えるようになる。しかし、「竜人族からしか番関係は解消できない」と言われ、また絶望の中に叩き落とされそうになったその時──、セルマの前に、一人の手が差し伸べられるのであった。
*相手を大事にしなければ、そりゃあ見捨てられてもしょうがないよね。っていう当然の話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる