梅雨の様なこんな雨の日に

はなおくら

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 そしていよいよ町に出る日が来た。

 この日はツーリーも一緒にとなっていたが、陛下に呼び出された為私と護衛2人とお手伝いをしてくれる人が行く事になった。

 “気をつけて、何かあればすぐに帰ってきて”

 最後の最後まで心配してくれるツーリーが可愛く思えてわたしは微笑んだ。

「心配しないで、少しみたら帰るから。」

 私は出かけるツーリーを見送って町へと辿り着いた。

 町までは馬車で行くので問題はなかった。

 町では人の気配はするが何も音がない。

 それがとても怖く感じてしまうが、しばらくすると慣れてきた。

 手のひらに字を書いてもらいながら町の様子を教えてもらう。

 その時、私の方にぶつかる感覚がした。

 気配もしていたが、その人物からお酒の匂いがしている。

 酔っ払って寄れたのだろうと察した。

 それと同時に護衛が剣を抜こうとする気配を感じた為慌てて止めた。

「やめなさい!何もない人に危害を加えてはダメ!」

 気配から私の言葉に従ってくれた様だった。

「ごめんなさい、大丈夫ですか?」

 その声をかけると、相手は何か言っている様子だった。

「わたしは耳も目も聞こえないのです。」

 そう伝えた時だった。

 お相手の人が突然わたしの頭に手を置いた。

 その瞬間、声が聞こえてきた。

 “お嬢さん、大変な病にかかった様だね。”

 初めて聞く声だが、聞こえた事に驚いて固まってしまった。

「どういう事…?」

 わたしは周りの声に耳を傾けたが何も聞こえない。

 “驚かせてしまったね、私の手から振動を通して話しかけているんだ。”

「あなたはぶつかった方ですか?」

 “そうだ。お嬢さんはお連れの護衛から助けてくれたね。感謝してるよ。”

 相手の問いかけに驚いた。

 声からするに男性なのだと察する事ができた。

「すごい、もう声も聞こえないと思っていたのに…。どうしたらこうして使えるのですか?」

 “自分の呼吸と気を使えばできる様になるんだ。”

 少し理解し難い事ではあったがわたしは目を見開いた。

「これで私を治すことはできませんか?」

 “………。”

 相手は何も言わなくなった。

 それでもわたしは必死に頼み込んだ。

「お願いします。聞きたい声があるんです!」

 わたしは何も答えない相手に何度も何度もお願いした。

 結局、相手が折れてくれる形となった。

 “仕方ない…その代わり条件がある。”

「条件ですか?」

 “完治するまでわたしの家で引きこもって意識を集中する必要がある。”

「そんな…。」

 突然の事で戸惑って返事ができずにいたが、それでも頼みの綱にとわたしは承諾した。
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