あなたが初めて

はなおくら

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「美味しい?」

「はい!夢中になります!」

「よかった、君が幸せそうな顔を見れて僕も幸せだ…。」

 優しく微笑んでくる彼を見ると、彼も同じ気持ちではないかと期待してしまう。

 今は同じ子爵家だと彼は言ってくれたけれど、使用人として一線を超えないようにしている自分の理性が切れてしまいそうで、抑えるのに必死にしがみついている。

「ありがとう…ございます。」

 目を逸らして食事に集中した。

「マリー…僕たちは同じ位の貴族だよ?今は敬語なんて使わないで接してほしい。」

 フォークを落としそうになる。

 必死に一線を超えないようにしがみついているのにこの人はどうしてこんな揺らがせてくるんだろう。

「…使用人に戻ったときに規則が乱れてしまいますから…。」

「マリー…。」

 わたしの名前を呼ぶと残念そうに彼も食事を始めた。

 そこからは静かな時間が流れていった。

 食事を終えて各自の部屋に入り寝支度を整えていると、ドアの鳴る音が聞こえた。

「マリー…?突然すまない、開けてくれないか?」

 ユノ様の声が聞こえて来た。

 さっきの気まずい空気もあったけれど、そのままにするわけにも行かずわたしは何も言わずにドアを開けて彼を部屋に招き入れた。

「…どうぞ…。」

「ありがとう…。」

 ユノ様に椅子に座ってもらいお茶を差し出した。

 それからお互い何から切り出せばいいのか分からず静かに過ごしていると、ユノ様は自分の幼少期の話を始めた。

「僕には、困った男の幼馴染がいてね。そいつは落ち着きのないやつでいつも驚かされたよ。屋敷の者が誰もいないのをいいことに泥沼の中に何度落とされたことか…。」

 話の途中まで聞いて想像してみると声を出してしまうほど笑ってしまった。

 幼いユノ様が泥の中に入ってしまっても可愛いだろうなと思えた。

「ふふふ…!すみません、なんだか想像したら面白くて…。」

 声を出して笑うわたしを見て安心したのかユノ様はほっとした顔をしている。

 気まずい雰囲気もいつの間にかあっという間に優しい空気感へと変わっていった。

 ユノ様はご自分の話をしてくれたのだからと、わたしは自分の子供の話をした。

「わたしは釣りが子供の頃大好きでよく川に釣りに行ってたんですよ?今はもうやり方なんて忘れてしまったけれど。楽しかったな…。」

「ならまたここに来て一緒にやろう。」

 優しく見つめる彼にそう言われて次があるのかと思うと嬉しくなった。

 にこりと頷くと、ユノ様とたくさんの思い出話を語り合った。

 あまりにも楽しくて気がつけば夜明けまで語り合っていた。

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