わがままな娘

はなおくら

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 こんな生活にも慣れが来てしまうと怖いもので、いつのまにか順応していっている自分に動揺する。

 だがセレナは残された抵抗の気持ちは持ち続けていた。

 そんなある日、ロットが休みの日なのか部屋で、セレナの髪をくるくると遊んだり抱き抱えて頭や頬にキスを落としていた。

 セレナは、ふと口を開いた。

「…ロット…貴方、人から裏切られた事はある?」

「急にどうしたの?」

 セレナは首を傾げるロットの横で話し出す。

「貴方が私を引き取ってくれる前、婚約者が妹と恋仲だと裁判で知ったの…悲しかったわ…。」

「……僕以外の男の話をするの?」

 怒るロットに被せるように言う。

「違うの!聞いて!」

 セレナの懇願の瞳にロットは渋々黙った。

「あの頃のわたしは、意地悪でわがままでどうしようもなかったわ…。だから彼に嫌われてしまったのだけど…。でも貴方は違うわ…あんなかわいい婚約者がいる。」

「だから何回も言ってるだろ?彼女とは婚約破棄をしたんだ。」

 そう言うロットを見たセレナは静かに首を振った。

「分かってるわ…。でも彼女一人で私のところまで来たのよ?それだけ貴方を思っているのよ…。私は信じて疑わなかった者から裏切られる辛さがわかるの…。」

 そう言ってセレナはその時の事を思い出し胸を抑えた。

 すると、ロットは冷静になって言った。

「君の気持ちは、僕もよくわかるよ?…だがまず君はそう捉えたかもしれないが、彼女は好きな人がいたんだよ。」

「えっ?」

 セレナは驚きのあまりロットの顔を見た。

「当人達はは自覚なかったかもしれないがリリスとシャンノンは思い合っていたんだ。だけど相手の気持ちを知らないあまり自分が身を引こうとしていたんだよ。」

「そ…うなの?」

 さらに驚くセレナの手をロットは優しく包んだ。

「そうだよ。その前から僕は乗り気じゃなかったしね。彼女とは終わったんだ。」

 セレナはようやく納得いった。でもまだ気になる事が残っていた。

「それはわかったわ…でも貴方このまま私がここにいたら、家を追い出された破門娘を置いてる代わり者になってしまうわ。」

「…そんな事僕は気にしないよ!」

「でもっ‼︎」

 そう言うセレナの唇をそっと塞ぐ。

 セレナも久々の感触に心地よさを感じて不思議と受け入れていた。

 唇を離すとロットは耳元で言った。

「なら君がこれからどう変わるか選択すればいい…。それなら誰にも文句は言えないよ。」

 ロットの前向きな言葉にセレナは救われた気がした。

 そうだ。自分が変わればいいんだ。
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