40 / 64
40
しおりを挟む
セレナは胸が震えていた。彼の冷えた瞳に恐怖もあったが、奥底では自分を離さないでいてくれる思いに縋りつきたいほど歓喜していた。
我ながら自分自身どこか可笑しいのではと内心苦笑してしまう。
拒みながらも彼のキスを受け入れてしまう。
抑えれば抑えるほど求めてしまう。ロットはそんなセレナの感情を見抜いていた。
それからはロットは積極的だった。朝、早く起きると誰よりも一番にセレナの部屋へと入り、熱い熱いキスを落とした。
胸を手で押しても強い力で抱擁する。しかしセレナは喜んでしまっている。
そしてまたある朝、セレナはどこか彼を待ってしまっていた。しかし時間が過ぎても彼は訪れない。
どうしたのかと入ってきたアンジュに聞いた。
「アンジュ…今日は何かあったの?」
「いえ…セレナ様こそ何かありましたか?」
本当に何もないようで、逆に言葉を返されてしまう。
ロットを待っていたなんて口が裂けても言えなかった。そしてセレナは、ここしばらく部屋から一度も出ていない事に気がつき言った。
「アンジュ…気晴らしに外に出たいの…。支度をお願いしてもいいかしら?」
アンジュは快く頷き、身支度を整えた。
「じゃあ少し庭を歩いてくるわね。少し出るだけだから1人にして…。」
そう言い残すとセレナは庭園に向かった。
庭は見渡す限り薔薇の花が咲いていた。ロットがセレナの為に植えたものだった。
しかしいつもは薔薇を見れば潤っていた心が、今日は気が向かない。
しばらくとぼとぼ歩いていると、遠くの奥にセレナよりも高い植木の壁が見えた。
気になり近づいてみる。何か囲っているのかと思い、植木の壁の周りを歩いた。
すると、入り口らしきものが見えており、その中へと入っていった。
セレナが中を除くと、目を見張るほどの黄色の絨毯のような花々が咲いていた。ここだけ異世界の様な気にさせるほど、日差しが差し込み輝いていた。
「…なんて素敵なの…。」
感激したセレナは、ゆっくりと歩を進めていく。
すると端の方に、かぼちゃの馬車で作られた休憩所を見つけた。
セレナは思い出していた。
「ここは…。」
前にロットが言っていた結婚の約束をした場所がここだと。
懐かしい気持ちで中に入った。どうやら綺麗に手入れをされている様で埃一つも見つからなかった。
セレナはしばらく座って1人考えることにした。
(彼は私を裏切っていない。むしろ1人にならない為に力になり、後ろ盾になってくれていた。…彼に悪い事をしたわ…。)
セレナは下を向いて反省した。ずっとそうしていては気分が下がると思い、馬車の休憩所を降りて、黄色い花の絨毯に横になった。
花の香りが眠気を誘う。寝ない様に頑張るが、誘惑に負けていつのまにか夢の世界へと入っていた。
我ながら自分自身どこか可笑しいのではと内心苦笑してしまう。
拒みながらも彼のキスを受け入れてしまう。
抑えれば抑えるほど求めてしまう。ロットはそんなセレナの感情を見抜いていた。
それからはロットは積極的だった。朝、早く起きると誰よりも一番にセレナの部屋へと入り、熱い熱いキスを落とした。
胸を手で押しても強い力で抱擁する。しかしセレナは喜んでしまっている。
そしてまたある朝、セレナはどこか彼を待ってしまっていた。しかし時間が過ぎても彼は訪れない。
どうしたのかと入ってきたアンジュに聞いた。
「アンジュ…今日は何かあったの?」
「いえ…セレナ様こそ何かありましたか?」
本当に何もないようで、逆に言葉を返されてしまう。
ロットを待っていたなんて口が裂けても言えなかった。そしてセレナは、ここしばらく部屋から一度も出ていない事に気がつき言った。
「アンジュ…気晴らしに外に出たいの…。支度をお願いしてもいいかしら?」
アンジュは快く頷き、身支度を整えた。
「じゃあ少し庭を歩いてくるわね。少し出るだけだから1人にして…。」
そう言い残すとセレナは庭園に向かった。
庭は見渡す限り薔薇の花が咲いていた。ロットがセレナの為に植えたものだった。
しかしいつもは薔薇を見れば潤っていた心が、今日は気が向かない。
しばらくとぼとぼ歩いていると、遠くの奥にセレナよりも高い植木の壁が見えた。
気になり近づいてみる。何か囲っているのかと思い、植木の壁の周りを歩いた。
すると、入り口らしきものが見えており、その中へと入っていった。
セレナが中を除くと、目を見張るほどの黄色の絨毯のような花々が咲いていた。ここだけ異世界の様な気にさせるほど、日差しが差し込み輝いていた。
「…なんて素敵なの…。」
感激したセレナは、ゆっくりと歩を進めていく。
すると端の方に、かぼちゃの馬車で作られた休憩所を見つけた。
セレナは思い出していた。
「ここは…。」
前にロットが言っていた結婚の約束をした場所がここだと。
懐かしい気持ちで中に入った。どうやら綺麗に手入れをされている様で埃一つも見つからなかった。
セレナはしばらく座って1人考えることにした。
(彼は私を裏切っていない。むしろ1人にならない為に力になり、後ろ盾になってくれていた。…彼に悪い事をしたわ…。)
セレナは下を向いて反省した。ずっとそうしていては気分が下がると思い、馬車の休憩所を降りて、黄色い花の絨毯に横になった。
花の香りが眠気を誘う。寝ない様に頑張るが、誘惑に負けていつのまにか夢の世界へと入っていた。
0
あなたにおすすめの小説
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~
深冬 芽以
恋愛
交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。
2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。
愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。
「その時計、気に入ってるのね」
「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」
『お揃いで』ね?
夫は知らない。
私が知っていることを。
結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?
私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?
今も私を好きですか?
後悔していませんか?
私は今もあなたが好きです。
だから、ずっと、後悔しているの……。
妻になり、強くなった。
母になり、逞しくなった。
だけど、傷つかないわけじゃない。
混血の私が純血主義の竜人王子の番なわけない
三国つかさ
恋愛
竜人たちが通う学園で、竜人の王子であるレクスをひと目見た瞬間から恋に落ちてしまった混血の少女エステル。好き過ぎて狂ってしまいそうだけど、分不相応なので必死に隠すことにした。一方のレクスは涼しい顔をしているが、純血なので実は番に対する感情は混血のエステルより何倍も深いのだった。
溺愛彼氏は消防士!?
すずなり。
恋愛
彼氏から突然言われた言葉。
「別れよう。」
その言葉はちゃんと受け取ったけど、飲み込むことができない私は友達を呼び出してやけ酒を飲んだ。
飲み過ぎた帰り、イケメン消防士さんに助けられて・・・新しい恋が始まっていく。
「男ならキスの先をは期待させないとな。」
「俺とこの先・・・してみない?」
「もっと・・・甘い声を聞かせて・・?」
私の身は持つの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界と何ら関係はありません。
※コメントや乾燥を受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
数合わせから始まる俺様の独占欲
日矩 凛太郎
恋愛
アラサーで仕事一筋、恋愛経験ほぼゼロの浅見結(あさみゆい)。
見た目は地味で控えめ、社内では「婚期遅れのお局」と陰口を叩かれながらも、仕事だけは誰にも負けないと自負していた。
そんな彼女が、ある日突然「合コンに来てよ!」と同僚の女性たちに誘われる。
正直乗り気ではなかったが、数合わせのためと割り切って参加することに。
しかし、その場で出会ったのは、俺様気質で圧倒的な存在感を放つイケメン男性。
彼は浅見をただの数合わせとしてではなく、特別な存在として猛烈にアプローチしてくる。
仕事と恋愛、どちらも慣れていない彼女が、戸惑いながらも少しずつ心を開いていく様子を描いた、アラサー女子のリアルな恋愛模様と成長の物語。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる