実は正体を隠していました。

はなおくら

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「そうか…事情はわかった。」

 アロン様は一向にわたしと目を合わすことがない。

 もしもと思っていたが、そのもしもが現実になってしまうと流石に堪える自分がいる。

「長年信頼くださっていたのに…申し訳ありません…。」

 頭を上げることができない。

「イゼア…もう気にしないでくれ。お前がどうすることもできなかったんだから…。」

 優しい言葉をかけてくれるアロン様には感謝しかなかった。

「女性であった事はわかった。これからも同じ様にここで過ごすだろう?」

 目が合わないがそう問いかけられて、わたしは首を振った。

「いえ…まだ決まっていませんが、どこか新しい土地を探してそこに引っ越すつもりです。」

「…え?」

 アロン様と今日初めて目があった。

「……長年支えて来た主君に嘘までついて来ました…。それにこれからは父やロアがいます。なので何も問題ないかと…。」

 今まで過ごしていた場所から離れるのが寂しくないわけではない。

 しかしもう前に進まなければならない。

「そんな…お前にはたくさん助けられて来た。それにわたしに嘘をついたことを気にしているならそんなこと気にしなくていい…。」

 優しい言葉を投げかけてくれるたびに涙が流れた。

 私はここを離れる前にやはり自分の正体は告げるべきだと思った。


 わたしは立ち上がりアロン様を見つめた。

「アロン様っ…!申し訳ありませんでした…やはりわたしはここに残るべきではありません…。」

 わたしは自ら自分のかつらを取った。

 その瞬間、アロン様は目を見開いた。

「イゼアが…リーフ嬢…?」

「何とお詫びしたらいいのか…っ…!」

 罪悪感に耐えきれず涙が流れて来た。

 アロン様から何も返事がない、沈黙に耐えられなくなりわたしは頭を下げて部屋を出ようとした。

 出ていかなければ…。

 無気力にそう思ったとき、突然手を掴まれて強引に振り向かされた。

 体がくるっと回って、目の前にアロン様の顔があった。

 彼もここまで接近するつもりはなかったのだろう。

 気づけば、鼻と鼻が触れ合う距離に見つめ合う形で向き合っていた。

 胸がどくどくと鳴り、落ち着かない気持ちになった。

 離れなければならないのに、なぜかこのままでいたい気持ちになった。

 わたしはアロン様の胸を押した。

「…すぐに、ここを出ます。」

「……。」

 アロン様は何も言わずにわたしの手を握ったまま動かなかった。

 それが余計に落ち着かないなと感じた時、上から声が降ってくる。

「ここで僕に仕えろ。」

「えっ…?」

 アロン様の顔を見上げると、真っ直ぐとわたしを見つめていた。
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