実は正体を隠していました。

はなおくら

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 ある日、私は旦那様に呼び出された。

 アロン様のお父様だ。

「待っていたよ、イゼア。」

 にこやかにわたしを見る旦那様は、笑ってはいるが少し怖気付いてしまう。

 旦那様は立ち上がると、窓の外を見つめながら口を開いた。

「イゼア、君とアロンの事は聞いているよ。」

「…っ……‼︎」

 目の前で指摘されてしまうと、自分でも戸惑ってしまう。

「小さい頃から一緒で、アロンもずっと君を気に入っていたのはわかっていた。……しかしながら私の立場上君とアロンを一緒にさせる事はできないんだ…。」

「だんな…様…それは…。」

 自分でも何を聞きたいのかわからない上、言葉が出てこなかった。

「イゼア、すまないが君のお父さんとも話し合って決めたんだが領地の管理を任されてくれないか?」

「えっ…。」

 旦那様の言いたい事はわかる。

 私がいれば、アロン様の未来を潰しかねないと言う事なのだろう。

 返事ができずに黙っていると、突然奥様が部屋に入って来た。

「…奥様…。」

 私達の会話を聞いていたのだろう、奥様はニコニコと旦那様に言った。

「決めるはもう少し後にしたらどうかしら?」

 奥様の言葉に旦那様は戸惑いを見せていた。

「何を言ってるっ…!」

 旦那様が口を開こうとしたその時、奥様は毅然と言い放った。

「後で話しましょう。いまイゼアに話したいことがあるのです。お連れしていいですか?」

 そう言った奥様を旦那様は頭が上がらないのか、渋々頷いた。

 奥様に施されるまま、私は奥様の後ろについて退室した。

「ごめんなさいね…イゼア。あなたも辛いでしょう?」

「そんなっ…私は…申し訳ありません…。」

 奥様に慰められるような人間ではない。

 優しくされればされるほど、罪悪感は募っていく。

 そんな私の様子を奥様は見つめる。

「貴方に話したいことがあるの。」

 奥様の部屋に招かれて私は座るように言われた。

「奥様っ…!私は使用人です。座るわけにはっ…!」

 私がそういうと奥様は首を振り座るよう言った。

 主人に手間をかけさせてはいけないと、私は座ることにした。

 私が座ると、奥様付きの侍女がタイミングよくお茶を出してくれる。

 奥様はお茶を一口飲むと口を開いた。

「主人がね…貴方達を反対するのには訳があるのよ…。」

 そう言って奥様は悲しい瞳を含ませながら物語を話すように口を開いた。

 昔からこの家の初代伯爵は、戦争に行った時一人の少年を助けた。

 伯爵は少年を連れ帰り読み書きや衣食住を与えた。

 少年はそれに恩を感じて伯爵に仕えることとなったのだった。
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