実は正体を隠していました。

はなおくら

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 その少年は、執事として伯爵に仕えていた。

 やがて青年になり結婚して子供を儲けた。

 しかしこの青年には困った癖があった。

 無類の女好きで、妻子をそっちのけにして遊び歩いていた。

 これには伯爵も頭を悩ませていたが、最悪の事態が起きたのだ。

 伯爵の娘に手を出した青年は、あろうことがその娘と一緒に駆け落ちしてしまった。

 怒り狂った伯爵は青年と娘を何年も探した。

 そうして見つけた時には、精神を病んだ娘が街中を徘徊していた。

 伯爵は娘を連れ帰り、他のものに調べさせた。

 あの青年は娘と逃げ、やはり他に女を作っていたのだ。

 そして天罰のように女と遊んで酔っ払っている時、足を踏み外して崖に落ちていったのだと言う。

 伯爵は怒りを露わにして自分を責めていた。

 あの日、自分が助けなければと…。

 その伯爵の前に、青年が置いていった一人息子が現れた。

 青年の息子は、伯爵の前に跪き誓いを立てた。

「父のした事は許されることではありません。これから僕の一族は伯爵家に仕えさせて下さい。そしてもし我が一族に間違った道を歩む者がいれば、一族を始末してください。」

 少年は、曇りのない瞳でそう告げたのだった。

 伯爵もそれに感銘を受け、この関係をよしとしたのだった。

 それから500年の歳月が流れ、未だにその約束は守られている。

「……こう言うことがあったのよ…。」

 奥様は私にそう告げた。

 私は奥様の顔も見れず俯いくしかなかった。

 まさか自分の先祖がそんな場違いなことをしていたなんて…。

 だから父は頑なに反対していたのだ。

「でもね、イゼア…。私はもうその呪縛から解放されてもいいと思っているの…。」

 目の前で奥様は悲しげこちらを見ていった。

「私もね…旦那様にそれを聞いて辛かったわ…。でも伯爵家を裏切ったのは最初の青年だけで、その下の者たち充分仕えてくれた。だからそろそろ変わってもいいと思うのよ…。」

 奥様はそう言ってくださるが、私にはとてもできなかった。

 そして、何も知らずにアロン様の優しさに甘えている自分が恥ずかしくなっていた。

 何も答えることができず、その後どうして部屋を出たのか、わからなかった。

 気がつけば自分の部屋でボーっとしていた。

 外も日が陰る頃、一緒に働く使用人に呼ばれた。

「アロン坊ちゃまがお呼びよ!」

 そう言って部屋を出ていった。

主人に呼び出されたのだから、無視するわけにもいかずに、陰る気持ちを抑えてアロン様の部屋に向かった。

「イゼア!待っていたよ。今日はどうしたんだ?僕の部屋に来ないから心配したよ。」

「…申し訳ありません。」
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