愛した人は悪い人

はなおくら

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 そう聞くとシューザは悲しい顔を向けて頷いた。

「そうだ…。これにも色々な事がある、ここにいる間、ヴィン様が話してくれるだろう。あの人は優しい人だからな…。」

 そういうと、シューザにじゃあなと言って部屋を出ていった。

 置いて行かれたジーヌはどうしたらいいのかと困っていると、メイドが入ってきて部屋に案内された。

 そして今、浴室で疲れた体を温めて癒しながら考えていた。

 どういう事なのだろうか…レイモンド兄様に何が起きたのだろうか。

 ジーヌはこれから聞く悲しい過去にまだ知る由もなかった。

 次の日の夜、ジーヌは綺麗な桃色のドレスに身を包みメイドによって綺麗に着飾っていた。

 髪を上げて頸が見えとても清楚な姿になっていた。

 コンコン

 扉のドアがなった。返事をすると、ヴィン様とその後ろにシューザがいた。

「よく似合っている。さぁ、今日は私がエスコートしよう。」

 そう言われて手を差し出すと優しい手つきでヴィンは歩き出した。

「そういえば、お礼を言ってなかったね。シューザを助けてくれてありがとう。」

「いえ…。」

 助けたというよりは、自分から問題に入っていったというだけである。

「いや、本当なら君は彼を見捨ててもおかしくないのに手当したと聞いたよ。本当にありがとう。」

 そう言ってヴィンが頭を下げた。その姿に恐縮してしまうジーヌ。

「頭を下げないでください。私がお願いをして連れてきてもらったのです。」

「そうか…。」

 慌てるジーヌにヴィンも申し訳ない顔をしていたが、ふと真剣な顔になって言った。

「ジーヌ。君は彼の事をを愛しているんだね?」

「えっ…?」

 何故わかったのだろうか、あって一日しか会っていない、それに話もそんなにしてるはずがないのに。

「目を見れば分かるよ。人を深く愛している人の目をしている。」

「そんな…私なんてただの妹…いや…もう今はそんな関係でさえも…なくなりましたから…。」

 自分で言っていて胸の奥がキューと苦しくなった。

 レイモンドは今頃、どうしているのだろうか。ちゃんと領地の人々を大切にしているだろうか。

 そんな事を考えながら歩いていると、会場へ着いた。

 そばで控えてたシューザが、扉を開けるとそこには沢山の人がいた。

 大きなシャンデリアがキラキラと下にいる人たちを照らす。その光に包まれた人々が手を叩いて、ヴィンとジーヌを迎えた。

「私の友人達が、君も楽しんでくるといい。」

 そう言って、ヴィンはその場を離れていった。

 ひとりぼっちになるかと思いきや、周りにいた沢山の人達がジーヌに笑顔で話しかけてくる。
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