愛した人は悪い人

はなおくら

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 朗らかな雰囲気の中、沢山のマダムと楽しい会話をしつつもジーヌは少し疲れが見えていた。

 少し風にあたろうと、1人バルコニーを出た。外の風が肌にあたり心地よく撫でてくれる。

 こんなに沢山の人に囲まれたのはいつぶりだろうか?

 レイモンドの家では、お客様をこんなに沢山招く事はなかった。

 あったとしても、数人の立食パーティーのみだ。

 会いたい…。

 ジーヌは恋しい思いがしていた。彼の笑顔、胸の温もり、忘れたくても忘れられない。

 自分の体を両手で抱きしめて寂しい気持ちを紛らわす。

「楽しめているかな?」

 気がつくと、ヴィンが窓から顔を出していた。

「ヴィン様…。お陰様で楽しく過ごしております。」

 ジーヌが笑って見せると、ヴィンも心の読めない笑みを浮かべている。

「レイモンドの事が気になるんだね。」

 お見通しだった。

「はい…。」

「明日、私の書斎にくるといい。その時話そう。」

 そういうとヴィンはジーヌの返事も待たずに会場の中に入っていった。

 ジーヌは、なんとも言えない複雑な思いを胸に会場に戻った。

 こうしてパーティーも幕を閉じた。

 翌日、ジーヌは目が覚めると早々にヴィンの書斎へと急いだ。

 中に通されると、ジーヌの気持ちを見越していたかのようにヴィンが迎え入れてくれた。

「昨日はパーティーを開いてくださりありがとうございました。」

 ジーヌは恭しく礼をした。その時、脳裏にレイモンドからレディの礼を教わった事が浮かんできた。

 幼かったジーヌが最初はなれず転んでしまってうまく出来なかったが、徐々に上達して、レイモンドが帰って来たその時、袖を摘んで心からの礼を体で表現した。

 レイモンドは嬉しそうに、手を叩いて褒めてくれた。

 その彼の姿に頬を赤くして照れていた。

「君が喜んでくれたならよかった。さぁ席についてくれ。」

 頭上からの声で現在に戻ってきた。

「はい、レイモンド兄様に何があったのか、私はその事が知りたくてシューザについてきました。」

 ジーヌの言葉にヴィンは頷くと口を開いた。

「どこから話せばいいのか……。……レイモンドが領主になる前私と出会った時から話そう。」

 ジーヌはヴィンの目を離さず耳を傾けた。

「レイモンドは聡明で落ち着いた男の子だったよ。私と彼の親はたびたび共同で仕事をしていてね。」

 ヴィンは懐かしそうな顔をした。

「彼とは気が合っていた。何も話さなくても心地よく、2人で拾い庭を走り回ってはよく笑い合った。」

 ジーヌは納得した。ヴィンがレイモンドと親しげなのはこの頃からなのだと。
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