愛した人は悪い人

はなおくら

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「レイモンドには妹がいたんだ。ジーヌ、君より少し上のね…。」

 ジーヌは驚いた。そしてある予測が確信に変わろうとしていた。

「彼女の名前は、カルア…。シューザから聞いたよ。レイモンドが君につけた名前だ。」

 あぁ…彼はやはり私の事を妹の代用品として見ていた。

 ジーヌは乾いた笑いが出てきた。愛されていなかった。目頭が熱くなる。しかしヴィンの前で涙を見せれないとぐっと堪えた。

 痛ましそうにジーヌを見るヴィンは、話を続けた。

「レイモンドは妹をとても可愛がっていた。もちろん私も同じだ。そしてレイモンドの父が病で早くに亡くなりレイモンドが領主についたんだ。最初は彼自身必死だった。そんなレイモンドを支えようとカルアも単独で町や村に出ては炊き出しをしたりと、何かの支援をしていた。」

 父親が亡くなり必死で兄妹で支え合ってきたのだと、ジーヌは思った。

「僕もできることは協力してきた。そんなある日、カルアが亡くなったと知らせが届いた。」

 ヴィンは目を伏せて両手を強く握りしめて痛みに耐える表情をしていた。

「レイモンドのやり方に不満を抱いていた人々がカルアを誘拐して…そして…っ…‼︎」

 その後の事は、ヴィンが言わなくても想像できた。

「それからレイモンドは変わった…。少しでも反感の芽があると知れば徹底的に制裁を加えた。僕がそれを止めても、止めようとも気にかけようともしなかった。」

 ヴィンの苦しそうな表情にジーヌも胸が痛くなった。

「これ以上苦しむ罪のない人々を見ていられず、苦渋の末…彼を暗殺する事を考えた…。」

 ヴィンは、どれほどこの決断が苦しいものなのかその顔を見ればすぐにわかる。

 ジーヌは、納得がいった。なぜ両親が貧しかったのかそう考えると彼を許せない気持ちに駆られてしまったが、一つ深呼吸をして冷静に考えることにした。

 確かに罪のない両親は亡くなってしまった。しかしこの惨劇を繰り返している元凶は、恨みと言ったものからの始まりだ。

 それに、レイモンドは心の底から家族として愛してくれていた。自分にはわかる。

「はぁ…ヴィン様、辛いお話を聞かせてくださりありがとうございます。」

「………。」

 レイモンドは黙ったままこちらを見ていた。

「私はやはりレイモンド兄様に立派な領主になって頂きたい。たとえそばに入れなくても…。」

 ジーヌは自分に何ができるかわからないが、何かを変えたいそう思った。

「君は強い子だね。だからこそレイモンドが惹かれたのかもしれないね。」
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