愛した人は悪い人

はなおくら

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 ヴィンの言葉はジーヌにとって予想もしていない事だらけだった。

 レイモンドは自分を一人の女性として愛していない。引き取った可愛い妹の代わりなのだから。

 ヴィンの言葉に素直に頷くことなどできなかった。

「これからどうすればいいでしょうか…。私が直接言ってもレイモンド兄様に伝わるかどうか…。」

「そうだね…。そうだ!もし君の了承がよければ一つの提案がある。」

「なんでしょうか?」

「レイモンドは私が暗殺をかけている事は知っているんだ。そこでだ、私が君と政略という形で婚約をしたいと思うのだがどうだろうか?」

「政略…な婚約ですか?」

 ヴィンの話では、ヴィンとレイモンドのお互いの側近が良好な関係を築くために、ジーヌをお見合いさせてはという話が出ていた。しかし、レイモンドが頑なに怒りを露わにして怒ったためこの話が流れてしまったのだという。

「本当にそんな事でレイモンド兄様が変わるのでしょうか…?」

「私は君がここに来てくれた時から、予感が確信へと変わっている。もちろん君の了承があればの話だが…。」

 ジーヌは不安だったが、それでもやってみようと賭けに出た気持ちで了承して頷いた。

「わかりました。」

「ありがとう…私も友人を救える事に今喜びでいっぱいだ。もちろん君とも婚約者だが、親しい友人と思っているよ。」

 嬉しそうにおどけて話すヴィンにジーヌも一つ頷いた。

 そしてヴィンと一緒にシューザも交えてこれからの事をお茶を呑みながら話した。

 ここからは、ある問題が発生してくる。縁を切ったと言ってもレイモンドはジーヌの保護者である事の書類は出していないので、ジーヌはまだ好きにできない身なのだ。

 そこで、ヴィンがジーヌを預かっており婚約したいとの申し出の手紙をレイモンドに送る事になった。

 3人での相談は終わり、後はレイモンドの返事を待つのみ。

 そうしてヴィンが手紙を送って一週間もしないうちから返事が届いた。

 そこには、ジーヌを返せという内容と婚約は受け入れないというものだった。

 ヴィンから話を聞いたジーヌはすかさず自分からも手紙を送った。

 しかし帰って来いという手紙のみで話が平行線になってしまう。

 どうしたものかと悩んだが、ジーヌはある条件を書いた。

 領土の人間が住みやすい環境を整えてその噂がこのヴィンの領地まで聞こえたなら帰る。

 そう手紙に添えて、送ってから半月後レイモンドから渋々了承を得た。

 ジーヌはヴィンにその事を話した。

「私には、脅迫のような手紙だがやはり君は特別な様だね。すまない、助力に感謝するよ。」

「いえ…ご迷惑をかけてしまってこちらが謝らなければなりません…。」

 そういうとヴィンは首を振り、目の前に一通の手紙を出した。
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