愛した人は悪い人

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「ソーレ嬢、君には長年婚約者であったよしみで、死刑にならぬ様考えよう…。しかしこれからは自分が苦しめた者達のことを偲び生きていくんだ。」

　レイモンドの言葉にソーレは、固まっていたが、開き直る様に鼻で笑った。

「あなたは変わりましたね…。わたしはそんなあなたが嫌いです。昔は人が苦しむ事こそ何も思わない強い人でした。でも今は、そんな女に騙されておられる…はっ…。」

　そういうとソーレは大笑いを浮かべた。

「私達は貴族なのですよ？そこらへんにいる平民は何の価値もない…どう使おうがわたしの勝手よ!」

　大笑いを浮かべるソーレに、ジーヌは近づき、平手打ちを喰らわせた。

「………あなたにも…誰にも人の幸せを邪魔する権利なんてないっ!……連れていってください。」

「何を言ってるのか分からないわ!あなたみたいな女…!離して!」

　暴れるソーレにレイモンドは、立ちはだかった。

「お前には本当に軽蔑するよ…。連れて行け!」

「レイモンド様…!あなたは騙されています!レイモンド様ー!」

　狂った顔をした女は警備隊に引き立てられる様に連れて行かれた。

　あまりの怒りに涙を流して、歯を食いしばるジーヌをレイモンドは抱きしめ、ジーヌも抑えられない自分の感情を止める様に、レイモンド体に縋り付いた。

　この後、参加していた貴族はそれ相応の処罰をされ、競りに出され奴隷とされていた者達もレイモンドの支援にてもろもろと元の場所に戻っていった。

　帰る場所のない者はレイモンドの屋敷に雇い使用人として働いている。

　ソーレは、全くの反省がなく、レイモンドの弁護も虚しく死刑となった。

　誰にも見られずひっそりと彼女の処刑が始まり、彼女は息途絶えたという。

　最後の瞬間、彼女が何を思ったかは誰にも知る由がなかった。

　ヴィンとシューザは、この件が解決すると早々に領地に戻っていった。

　帰る間際、式の話をされたが恥ずかしくなり誤魔化した。

　それからしばらくはジーヌも気を落としていたが、時間が経つに連れて元気を取り戻していた。

「ジーヌ…。」

「レイ…。」

　レイモンドの手が伸ばされて、ジーヌは駆け寄り胸の中に飛び込んだ。

　レイモンドの匂いに抱かれて過ごすこの瞬間が幸せでたまらない。

「いつまでもあなたと一緒にいたい。」

「もちろん、わたしもだ。」

　今はレイモンドとジーヌは、思い出の薔薇の庭園で永遠の愛を誓いあった。

　そして誰よりも領地の人々に慕われる素晴らしい領主になり、ジーヌはそれを支えて誰もが羨むものになったのだった。