花嫁の勘案

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　つい数日前、長年の婚約関係を結んできたシュリット子爵家のヴォルス様の元に嫁いできた。

　ヴォルス様は、黒髪黒眼でごく普通の子爵家の令息だ。

　人のことを言っているが、わたし自身母に似た金髪金眼だけれど周りに騒がれるほどではない普通の子爵令嬢。

　わたしとヴォルス様の間柄は、お互い物静かで婚約している時からあっても何も話さない関係だった。

　わたし自身も婚約者だからと言って騒ぐ事もなく、何か芽生えるという物でもなかった。

　無関心だったけれど貴族としての役割は自覚している。

　ふさわしい間柄の人と一生を添い遂げていく。

　いやでも良くもない。

　わたしの周りでは、たくさんの婚約破棄、浮気といった問題に直面している人はたくさんいる。

　簡単に関係を終わらせてしまうのに情を移す事に違和感しか無かった。

　でも結婚となれば話しは別。

　確かに貴族としての立場もわかるが、わたし自身いつも読んでいる小説のように愛を育みたい。

　禁断の関係ではなく、純粋に自分の夫と愛を育てたい。

　残念ながら、ヴォルス様はわたしに無関心だった。

　ヴォルス様はありがたい事に、お金、女、ギャンブルと問題を起こしたことは無い。

　何も無いことがありがたいことではあるが、それも今日まで！

　これからは、夫婦ながら恋愛を楽しみたい！

　それがわたしの願いであり、憧れていた事だった。

　まず愛を育てるにはこれまでのように無関心ではいけない。

　まずは、相手のことをよく知ることが大切！

　私はヴォルス様を呼び出して2人きりのお茶会を始める事にした。

　お茶とお菓子の用意を済ませて、ヴォルス様がきてくれるのを待っている。

　しばらくしてこちらに歩いてくるヴォルス様を見つけた。

　わたしは立ち上がってヴォルス様に手を振った。

「ヴォルス様！」

　手を振るわたしにヴォルス様は、少し怪訝な表情を浮かべているが、わたしは気にせず声をかけた。

「きてくださってありがとうございます！こちらへ。」

　ヴォルス様に座ってもらうよう促し自分も席についた。

　今まで何も話す事も無かった為、何を話していいのかわからなかった。

　考えだして思いついたのは相手に質問してみる事にした。

「ヴォルス様は、今日は何をされていたんですか？」

「仕事。」

　表情を変えずに答えられる。

　これでは話しを広げるのに、困った。

「ヴォルス様のお好きな食べ物はありますか？」

「なんでも。」

「…そうですか。」

　話ができず、気づけばヴォルス様は目の前からいなくなっていた。

　やっぱり突然話しをするのは、無理があったのかと思った。