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彼との契約で私が娼館に迎えに行き、屋敷に居ついてもらうことになった。
彼の名前はアルといった。
初日、昼前に娼館に行き隠れる様に自室で彼と過ごした。
アルも心得た様に私の隣で本を読んでいる。
誰か入ってきた時には私にぴたりとくっついて役を演じてくれている。
「夫人、何故こんなことを?しかも家の中に入れてまで…。」
アルの問いかけにわたしは遠くを見つめる。
「……そうですね…。間違えてしまったから…。」
そう呟くとアルは何も言わずに本を読み出した。
その時扉の外で怒声が聞こえた。
アルはわたしにピッタリとくっついたかと思うとわたしを膝の上に乗せた。
「背中に手を回して下さい。」
「…えぇ…。」
遠慮気味に手を回すと腰をぐいっと引かれてなお密着する。
「これで僕の役目は終わりそうですね…。」
「え…?」
ボソリと呟くアルに聞き返そうとした瞬間扉が勢いよく開いた。
背中に越しでただならぬ雰囲気を感じる。
「…離れろっ‼︎」
入ってきたのはヴォルス様だった。
ヴォルス様はアルの手を振り払うとわたしの身体を抱える様に引き剥がした。
「何をするんですかっ!」
あっけに取られたものの慌てて取り繕って逢瀬を邪魔された怒りを彼にぶつけた。
アルの元に戻ろうとしたが、強い力で押さえつけられる。
「お前はもう用無しだ…外で金を用意してるから受け取ったら二度とナタリアに関わるなっ!」
そういうとアルはふっと笑って何も言わずに頷いた。
わたしは訳が分からずアルを引き止めた。
「アルっ!」
ヴォルス様は気に入らなそうに彼から遠ざけようとしたが、私は依頼したものとして放っては置けず抵抗した。
そんなやりとりを見ていた彼は全てをわかっているかの様に頭を下げた。
「楽しいひとときに感謝しています。ではこれにて…。」
そう教えられたのか深々と礼をするとその場から立ち去ってしまう。
帰って彼に悪いことをしてしまった罪悪感が残ってしまう。
すでにいなくなった彼の方を見つめていると顔を強引に後ろに振り向かされた。
「…どういうつもりだ…男を家に入れて…肌まで触れさせて…。」
怒りのこもった瞳で私を見つめるや否や、強引に唇がぶつかる。
「なにっ…をっ…!」
のけぞろうとしたが頭を押さえつけられてしまう。
抵抗したいのに嬉しい気持ちもあってもどかしい。
彼とキスをするのも久しぶりな為余計にだ。
私はいつの間にか身体の力が抜けて、彼の首に手を回していた。
その瞬間荒々しかったキスも優しくゆっくりとなり、気持ちよさに頭が麻痺を起こしていた。
彼の名前はアルといった。
初日、昼前に娼館に行き隠れる様に自室で彼と過ごした。
アルも心得た様に私の隣で本を読んでいる。
誰か入ってきた時には私にぴたりとくっついて役を演じてくれている。
「夫人、何故こんなことを?しかも家の中に入れてまで…。」
アルの問いかけにわたしは遠くを見つめる。
「……そうですね…。間違えてしまったから…。」
そう呟くとアルは何も言わずに本を読み出した。
その時扉の外で怒声が聞こえた。
アルはわたしにピッタリとくっついたかと思うとわたしを膝の上に乗せた。
「背中に手を回して下さい。」
「…えぇ…。」
遠慮気味に手を回すと腰をぐいっと引かれてなお密着する。
「これで僕の役目は終わりそうですね…。」
「え…?」
ボソリと呟くアルに聞き返そうとした瞬間扉が勢いよく開いた。
背中に越しでただならぬ雰囲気を感じる。
「…離れろっ‼︎」
入ってきたのはヴォルス様だった。
ヴォルス様はアルの手を振り払うとわたしの身体を抱える様に引き剥がした。
「何をするんですかっ!」
あっけに取られたものの慌てて取り繕って逢瀬を邪魔された怒りを彼にぶつけた。
アルの元に戻ろうとしたが、強い力で押さえつけられる。
「お前はもう用無しだ…外で金を用意してるから受け取ったら二度とナタリアに関わるなっ!」
そういうとアルはふっと笑って何も言わずに頷いた。
わたしは訳が分からずアルを引き止めた。
「アルっ!」
ヴォルス様は気に入らなそうに彼から遠ざけようとしたが、私は依頼したものとして放っては置けず抵抗した。
そんなやりとりを見ていた彼は全てをわかっているかの様に頭を下げた。
「楽しいひとときに感謝しています。ではこれにて…。」
そう教えられたのか深々と礼をするとその場から立ち去ってしまう。
帰って彼に悪いことをしてしまった罪悪感が残ってしまう。
すでにいなくなった彼の方を見つめていると顔を強引に後ろに振り向かされた。
「…どういうつもりだ…男を家に入れて…肌まで触れさせて…。」
怒りのこもった瞳で私を見つめるや否や、強引に唇がぶつかる。
「なにっ…をっ…!」
のけぞろうとしたが頭を押さえつけられてしまう。
抵抗したいのに嬉しい気持ちもあってもどかしい。
彼とキスをするのも久しぶりな為余計にだ。
私はいつの間にか身体の力が抜けて、彼の首に手を回していた。
その瞬間荒々しかったキスも優しくゆっくりとなり、気持ちよさに頭が麻痺を起こしていた。
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