花嫁の勘案

はなおくら

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 どれくらいそうしていただろうか、唇が腫れ上がるほど、ヴォルス様とのキスに夢中になってしまった。

 ようやく唇が離れたヴォルス様の目を見つめると、彼も落ち着きを取り戻していた。

「ナタリア…2人で話そう。」

 真剣な面持ちの彼に私も小さく頷いた。

 彼の自室で対面に座ろうとしたがヴォルス様がそれを許さなかった。

 彼は私の隣に座ると私の手を優しく握ってきた。

 その行動が何だか胸を暖かい気持ちにしてくれる。

 自然と気持ちも落ち着いてくる。

「ナタリア、君に誤解せずに聞いてもらいたい…ニアの事だ。」

「はい…。」

 ずっと気になっていた…彼女とはどういう関係なのか、今後どうしていきたいのか。

「ニアは、数日後にはここを出ていくんだ。」

「え…?」

 どういう事だろう。

「ニア様は……ヴォルス様と思い合っていると言ってました。もし家通しの事情でそうおっしゃるなら…。」

「…どういう事だ?」

 顔を見ればヴォルス様も困惑してる様だった。

「ニア様とお話しした際そうおっしゃっていたんです。だから私自身この問題を解決しようと…。」

「…さっきの男に頼んだのか?」

「……はい…私が他の人に目を向ければヴォルス様も心置きなく過ごせると思って…。」

 そう呟くとヴォルス様はため息を吐いた。

「気楽に過ごせる訳ないだろう、君が他の男と関係を持っているのではないかといつもヒヤヒヤとしていた…。本当に何でもないのか?」

「ないです。」

「そうか…それから前にいたあの色黒の男とは何があったんだ?あんなに髪や服を乱して…。」

「それは、彼に平民の遊びを教わっていたんです。」

「平民の遊び?」

 彼は豆鉄砲を食らったかの様な顔をした。

「はい…お恥ずかしながらかけっこというものを教わってやっていくうちに楽しくなってしまって…。」

「それであんな姿だったのか…。」

「はい…。」

 ヴォルス様は私の顔をまじまじと見つめると笑い出した。

「君に酷いことをしてしまったな。しかしすまない…君が走る姿を想像すると…くくくっ…。」

 ヴォルス様の笑った顔を見るのは初めてかもしれない。

 しかしはしたない姿を笑われてわたしは顔を赤面させた。

「全部…誤解だと言いました…それにそんなに笑って…。」

「すまない…あの時君の姿が見えなくて不安だったんだ。」

 それを聞いてわたしはムッとした。

「…じゃあどうして…ニア様と一緒に…?それに彼女は何故あなたを愛称で呼ぶのですか?」

 聞きたかったことが次から次へと出てくる。

 そんなわたしを嬉しそうにヴォルス様は見つめてくる。

 そして真面目な表情で話して聞かせてくれた。
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