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決意
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アビーは、屋敷までの帰り道での足は不思議な程軽かった。
ハリソンと、話したおかげかケロウと向き合おうと思えた。
(今日…屋敷に戻って旦那様とお話をしよう。)
そう決意を固め、屋敷に戻ると玄関口で、ケロウが立っていた。
アビーは驚いてしまったが、使用人の顔をしてお辞儀した。
「ただいま戻りました。旦那様。」
そういうと、ケロウは微笑みながら口を開いた。
「おかえり。アビー…少し話をしないか?」
「はい。」
そう言って、2人で庭園を歩き出した。
「ここに君と来るのも日課になりそうだね。今でも昨日のことの様に思えるよ。
」
ケロウは、アビーが付き人として、着いたばかりのことを言っていた。アビーは顔を真っ赤にしてケロウに言った。
「旦那様…お恥ずかしいですからおやめください!」
慌てるアビーの姿に、ケロウは声を出して笑った後、しんみりと話し始めた。
「この庭園はね…カーラと小さい頃からよく遊んでいたんだ。共に大きくなり結婚して幸せだった。彼女が亡くなった時には、もう誰も愛せない…そう思ったよ。」
「そうですか…。」
アビーは笑えなかった。するとケロウが突然振り向いた。
「アビー…君の様子がおかしいのは、あのパーティで何かあったんじゃないか?あの青年が原因なのか?」
眉を寄せるケロウに、アビーは慌てて弁解した。
「旦那様違います。実はリリー様にカーラ様の事を聞きまして…申し訳なく思って席を外したのです。」
「申し訳なくとは?彼女が何か言ったのか?」
「リリーさんがいかに奥様を大切に思っているのかを聞いた時に、私はここにいるのは場違いな気がして…。」
俯くアビーにケロウは言った。
「私が君に頼んだんだ。彼女の言葉は気にしなくていい。嫌な想いをさせて申し訳ない。」
ケロウは頭を下げた。
「頭をお上げください。旦那様が使用人に頭を下げるなど…。」
「いや…彼女が少々思い込みが激しいことはわかっていたんだが…ここまでとは…。」
「いえ…誰しも大好きな人を大切に思うのは当たり前です。気にしないでください。」
「アビー…ありがとう…。」
ケロウは、もう一度頭を下げ、アビーに微笑んだ。そしてもう一つ気になっていた事をアビーに告げた。
「アビー…気になる事がもう一つあるんだが、パーティの時に一緒にいた青年とは…どういう関係なんだ?」
ケロウは、意を決して聞いた。
アビーもケロウには誤解されたくないと口を開いた。
「あの方は、落ち込んでいる私に声を掛けてくださったのです。そして友人になって下さいました。」
アビーは友人ができたと嬉しくてかおが緩んでいたが、ケロウの心の中は、面白く無かった。だがやっと自分の気持ちに気がついた。
(私は彼女を愛しているんだ。)
ケロウは神妙にアビーに聞いた。
「君には、好きな人がいるのか?」
アビーはそう聞かれて躊躇した。自分の想いを主人である旦那様に聞かせていいものか。
そう思い考えた末、アビーは、遠回しに告げた。
「はい…私にはずっとお慕いしている人がいます。」
ハリソンと、話したおかげかケロウと向き合おうと思えた。
(今日…屋敷に戻って旦那様とお話をしよう。)
そう決意を固め、屋敷に戻ると玄関口で、ケロウが立っていた。
アビーは驚いてしまったが、使用人の顔をしてお辞儀した。
「ただいま戻りました。旦那様。」
そういうと、ケロウは微笑みながら口を開いた。
「おかえり。アビー…少し話をしないか?」
「はい。」
そう言って、2人で庭園を歩き出した。
「ここに君と来るのも日課になりそうだね。今でも昨日のことの様に思えるよ。
」
ケロウは、アビーが付き人として、着いたばかりのことを言っていた。アビーは顔を真っ赤にしてケロウに言った。
「旦那様…お恥ずかしいですからおやめください!」
慌てるアビーの姿に、ケロウは声を出して笑った後、しんみりと話し始めた。
「この庭園はね…カーラと小さい頃からよく遊んでいたんだ。共に大きくなり結婚して幸せだった。彼女が亡くなった時には、もう誰も愛せない…そう思ったよ。」
「そうですか…。」
アビーは笑えなかった。するとケロウが突然振り向いた。
「アビー…君の様子がおかしいのは、あのパーティで何かあったんじゃないか?あの青年が原因なのか?」
眉を寄せるケロウに、アビーは慌てて弁解した。
「旦那様違います。実はリリー様にカーラ様の事を聞きまして…申し訳なく思って席を外したのです。」
「申し訳なくとは?彼女が何か言ったのか?」
「リリーさんがいかに奥様を大切に思っているのかを聞いた時に、私はここにいるのは場違いな気がして…。」
俯くアビーにケロウは言った。
「私が君に頼んだんだ。彼女の言葉は気にしなくていい。嫌な想いをさせて申し訳ない。」
ケロウは頭を下げた。
「頭をお上げください。旦那様が使用人に頭を下げるなど…。」
「いや…彼女が少々思い込みが激しいことはわかっていたんだが…ここまでとは…。」
「いえ…誰しも大好きな人を大切に思うのは当たり前です。気にしないでください。」
「アビー…ありがとう…。」
ケロウは、もう一度頭を下げ、アビーに微笑んだ。そしてもう一つ気になっていた事をアビーに告げた。
「アビー…気になる事がもう一つあるんだが、パーティの時に一緒にいた青年とは…どういう関係なんだ?」
ケロウは、意を決して聞いた。
アビーもケロウには誤解されたくないと口を開いた。
「あの方は、落ち込んでいる私に声を掛けてくださったのです。そして友人になって下さいました。」
アビーは友人ができたと嬉しくてかおが緩んでいたが、ケロウの心の中は、面白く無かった。だがやっと自分の気持ちに気がついた。
(私は彼女を愛しているんだ。)
ケロウは神妙にアビーに聞いた。
「君には、好きな人がいるのか?」
アビーはそう聞かれて躊躇した。自分の想いを主人である旦那様に聞かせていいものか。
そう思い考えた末、アビーは、遠回しに告げた。
「はい…私にはずっとお慕いしている人がいます。」
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