月夜の恋

家族

　ケロウが辺りを見回すと、カントリーハウスのような木でできた家で落ち着く雰囲気が漂っていた。

　アビーの家族は気さくで誰一人ケロウを疑う者はいなかった。

　家族全員で会話に花咲かせて笑い合いすごしていたが、ケロウは真剣な面持ちで父アロと母ドリーそして兄のカルンに向き直った。

「父上殿、母上殿、そして兄上殿…話はアビーから聞いてると思うが私からお話しさせていただきたく参りました。」

　ひとつ深呼吸をして、口を開いた。

「アビーさんと一緒になりたいと思っています。どうか彼女を私に頂きたい‼︎」

　ケロウは頭を下げた。その姿にアビーは、見惚れていた。自分のためにここまでしてくれる彼に敬意を感じていた。

　すると朗らかに笑っていた。父アロは動揺することもなく、口を開いた。

「ケロウ様、ありがとう…あなたの真剣さはその瞳を見てわかりました。だがひとつきになる事があります。私の娘アビーは、平民の出です。あなたの足を引っ張ることもあるでしょう。それでもよろしいのですか?」

「彼女がいてくれる事で、救われる事はあれど足を引っ張るなんて考えた事もありません。彼女は私の心の幸いです。」

　父アロとケロウはしばらく見つめ合うと、父アロがアビーを見た。

「アビー…いい人を見つけたな…お前が嫁ぐところは普通の所ではないんだよ。だからこそケロウ様と一緒になるなら、何事にも努力をしなさい。そしてもう一つ…。」

　父アロのことばに、アビー真剣に耳を傾けていた。

「これから夫婦になる相手にだけ頭を下げさせては行けないよ。他の事はわからないが、この時はお前も一緒に彼に寄り添いなさい。」

　そう言われたアビーは慌てて口を開いた。

「ケロウ様ごめんなさい。お父さんお母さん…私この人と生きていきたい。どうか…お願いします。」

　アビーは頭を下げた。するとケロウも一緒に頭下げる。

　すると父アロと母ドリーも共に、

「娘を幸せにしてやってください。よろしくお願いします。」

　そう言って頭を下げた。どれくらいそうしていたか…しばらくすると家族みんなでこの沈黙に大笑いをして挨拶に、事なきを得た。

　その夜、アビーとケロウは実家に泊まる事になった。

　ベッドでアビーがぐっすり眠っているのを横目にケロウは、目を覚まし気晴らしにと、家の前の椅子に腰をかけた。

　満天の夜空を眺めていると、兄のカルンが、顔を出していた。

「こんばんはケロウ様。どうされました？」

「いや…目が覚めたので、気晴らしにと…。」

　ケロウが返すと、カルンが隣の椅子に腰掛けた。

「ケロウ様…アビーをもらってくださりありがとうございます。幼い頃からの妹を見てきたからか今日の事がとても嬉しいのです。」

　ケロウはカルンの話に耳を傾けた。

「あの子が幼い頃、初めてあなたを見た顔はまるで、宝物を見つけたかのように目がキラキラしていました。妹をどうぞよろしくお願いします。」

　そういうと、ケロウに頭を下げて部屋へと帰っていった。

　しばらくしてからケロウも部屋へ戻るとアビーが起きていた。

「ケロウ様…兄が何か言いましたか?」

　アビーは、ケロウが兄と話をしていたのが内容まではわからなかったが聞こえていた。

「いや…いい兄だった。君は幸せ者だ。そして君に愛された私も幸せ者だと実感した所だよ。」

　そう言ってアビーの布団に潜り込みともに眠った。