月夜の恋

はなおくら

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闘魂

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 手紙の内容はこうだ。

“一週間後、王都に来られたし。決闘を申し込む。私に勝てればアビー嬢を返す。”

 ケロウはこれはチャンスだと思った。剣の腕には自信があったが、相手は王太子だ。

 それから執務の合間に剣の練習を始めた。

 そんな中、風の噂でアビーが倒れベッドから起き上がれずにいる事を聞いた。

 ケロウは焦ったが、今は王子に勝つことだけを考えた。

 アビーはいまだ体調が戻らない。そうして一週間が経ち、今ケロウとハリソンは向かい合っていた。

 両者とも、声をかける隙も無いほどピリピリしている。

そこへケロウが口を開いた。

「王子…アビーは大丈夫なのですか?」

「……あぁ…具合は悪いが悪化してはいない…。」

 ケロウは心配でたまらなかった。今すぐにでも彼女を腕の中に収めたいと、気持ちが急いしまう。

 ハリソンもまたアビーの事を譲るつもりはなかった。

 そして…決闘がはじまった。カキンと剣の打ち合う音が聞こえる。

 両者互角かと思った矢先、ケロウの隙をハリソンはついた。


「ぐっ…。」

 気がつくと、王子の剣がハリソンの掌に貫通していた。

「もう諦めろ…。」

 決着が決まったと背を向けた時。

「…まだです…。」

 ハリソンが振り向くと、ケロウが剣を握り構えていた。

 互い見つめ合い…また打ち合いがはじまった。

 そして今度はケロウが、ハリソンの首元に剣の先を突き出している。

 この時ハリソンは自分の敗北を悟った。そしてふっと笑い言った。

「ケロウ伯爵見事だ。約束通りアビー嬢をお返ししよう。」

「…ありがとうございます。」

 そう言って手を差し出した。それにハリソンは不思議に思い聞いた。

「何故?」

「……やり方は違えども、あなたはアビーを大切にしてくださっていた。その眼を見ればわかります。そしてこの決闘も、彼女の為でしょう…。」

 ハリソンはケロウに全てを見透かされていたのかと思った。

 ハリソンは兵士を呼び、アビーの元へと案内させた。

 そして侍女を呼び急ぎアビーの荷物をまとめるように指示した。準備ができ次第送り届けるようにと。

 ハリソンはふと空を見上げていった。

「まだ思い出にするには、難しいが君の幸せを祈ってるよ…。」

 彼はボソッと呟き瞳を閉じた。

 ケロウは早く彼女に会いたいと気持ちを抑えられずにいた。

 兵士も気持ちを汲んでおり、走って案内した。そして部屋の前に到着すると頭を下げて、去っていった。

 ケロウはゆっくりと部屋に入った。目の前にはアビーが苦しそうに横になって眠っていた。

「アビー…くっ…。」

 ケロウは安堵の涙を流した。そして彼女の頬に触れ、本物であるかを確かめたすると、

「……っ…ケロウ様っ…。」

 苦しそうにしながらも夢の中で自分の名前を呼んでくれるアビーに愛おしさを感じていた。
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