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そこまで聞いたスサリアはふと部屋の窓に顔を向けた。
顔の先にはタタラがスルトを抱いて草原の地べたに座り、その周りを動物達が囲んでいた。
「あの動物達は王子様やタタラに危害を加えません。あの子達は人間にいじめられて動けなくなり此処へきたのです。」
「…そう…。」
スサリアは胸が痛んだ。そして人間達にいじめられてもなお動物達の瞳には濁った目つきはなかった。
「…あの子達は人間を恨んでないの?」
スサリアの一言にタラミは苦笑いを浮かべながら答えた。
「恨んでいないと言えばどうでしょう…。人間は意味のない加虐精神を持っている者が多い…。あの子達も最初は僕がここへ連れてくる時には世界の絶望を感じていたのでしょう…。警戒を解いてくれる事は難しかった。だがここは彼等に危害を咥えるものはいない。森の妖精や守護精たちも面倒を見てくれます。」
タラミはその時の事を思い出していたのだろう。
苦悶の表情を浮かべた後、顔を上げて口を開いた。
「王妃様、わかりますか?スルト様の近くに飛んでいるピクシーこそ風の妖精です。」
スサリアが目を凝らして見てみると、体は透けているが、そこだけ水面に揺れた水のような動きをしている者を見かけた。
スルトを見つめて何かしているようだった。
「風はスルト様が大好きなのです。」
タラミの言葉にスサリアは喜んだ。
「あの子を愛してくれる者がいる事はとてもありがたい事です…。」
スサリアとタラミは窓から視線を外すと本題に入った。
「王子様やタタラの危機を知らせてくれたのは風です。僕は急いで5体のピクシー達に二人を守るようにお願いしました。ピクシー達はすぐさま王子様を守ろうとしましたが…。」
タラミはそこで俯き拳を握りながら言った。
「……さすが王国に仕えてる方々です…ピクシー達の力も及ばず…。初めに4体のピクシー達だけボロボロの状態で戻ってきました…。僕は急ぎ手当てをしていると、もっとひどい状態の風が帰ってきたのです。風は意識がなく目が覚めたのは数日後の事でした。」
スサリアは痛ましい思いがした。
だがタラミの目を逸らさず話に耳を傾けた。
「風から聞いた話はあまりにも衝撃的な者でした。…二人の死…。」
タラミは堪えきれず立ち上がりタタラのいる窓辺に移動した。
「あの想いは…絶望でしか…なかった…。」
拳を強く握りしめてタラミはそう呟く。
スサリアもその思いが痛いほど分かる。目の前で最愛の者の温もりが消えていく瞬間を目の当たりにしたのだから。
「…王妃様の気持ちがわたしにはわかります。だからこそ今回貴方がここへ来てくださることもわかっていました。そしてこの話には続きがあります。」
顔の先にはタタラがスルトを抱いて草原の地べたに座り、その周りを動物達が囲んでいた。
「あの動物達は王子様やタタラに危害を加えません。あの子達は人間にいじめられて動けなくなり此処へきたのです。」
「…そう…。」
スサリアは胸が痛んだ。そして人間達にいじめられてもなお動物達の瞳には濁った目つきはなかった。
「…あの子達は人間を恨んでないの?」
スサリアの一言にタラミは苦笑いを浮かべながら答えた。
「恨んでいないと言えばどうでしょう…。人間は意味のない加虐精神を持っている者が多い…。あの子達も最初は僕がここへ連れてくる時には世界の絶望を感じていたのでしょう…。警戒を解いてくれる事は難しかった。だがここは彼等に危害を咥えるものはいない。森の妖精や守護精たちも面倒を見てくれます。」
タラミはその時の事を思い出していたのだろう。
苦悶の表情を浮かべた後、顔を上げて口を開いた。
「王妃様、わかりますか?スルト様の近くに飛んでいるピクシーこそ風の妖精です。」
スサリアが目を凝らして見てみると、体は透けているが、そこだけ水面に揺れた水のような動きをしている者を見かけた。
スルトを見つめて何かしているようだった。
「風はスルト様が大好きなのです。」
タラミの言葉にスサリアは喜んだ。
「あの子を愛してくれる者がいる事はとてもありがたい事です…。」
スサリアとタラミは窓から視線を外すと本題に入った。
「王子様やタタラの危機を知らせてくれたのは風です。僕は急いで5体のピクシー達に二人を守るようにお願いしました。ピクシー達はすぐさま王子様を守ろうとしましたが…。」
タラミはそこで俯き拳を握りながら言った。
「……さすが王国に仕えてる方々です…ピクシー達の力も及ばず…。初めに4体のピクシー達だけボロボロの状態で戻ってきました…。僕は急ぎ手当てをしていると、もっとひどい状態の風が帰ってきたのです。風は意識がなく目が覚めたのは数日後の事でした。」
スサリアは痛ましい思いがした。
だがタラミの目を逸らさず話に耳を傾けた。
「風から聞いた話はあまりにも衝撃的な者でした。…二人の死…。」
タラミは堪えきれず立ち上がりタタラのいる窓辺に移動した。
「あの想いは…絶望でしか…なかった…。」
拳を強く握りしめてタラミはそう呟く。
スサリアもその思いが痛いほど分かる。目の前で最愛の者の温もりが消えていく瞬間を目の当たりにしたのだから。
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