愛しい貴方へ

はなおくら

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 調査員の話はこうだった。

 ゲシュ伯爵自身には、世間に出されなかった不出来な弟がいた。ある日その弟が1人の女を連れてきた。ケルアの母だ。反対する一族に2人は駆け落ち同然に家を出た。そこまでならよくある話だが、その女が魔法使いだったのだ。

 そして何年か後、ケルアの父と母が亡くなり、ゲシュ伯爵の元へと引き取られたとの事。

 ゲシュ伯爵自身は、亡くなった弟に対する罪悪感からケルアを可愛がった。そしてゲシュ伯爵自身はケルアが魔法を使える事を知らずにいるとの事だ。

 話を言い終わると、調査員は早々に引き下がっていった。

 今王室にはタケトルとスサリアのみしかいない。

「…そういう事だったのか、もしかするとケルアはこの事をゲシュ伯爵に隠していたのだろう…。」

「そういう事ですわね…。」

 それから何か対策をと考えているが相手の動きがわからない為そのままにして護衛の人数を増やした。

 そして、いつものようにスサリアが公務に励んでいると1人の騎士が、オレンジ色の花を花瓶に指したのか、目の前に置いた。

「これは?」

「はい、最近公務に励まれている王妃様に少しでも癒しをと思い…。」

 そう言ってその騎士は笑った。

「ありがとう。そなたの名は?」

 純粋に好意を受け取ると、騎士は名を名乗った。

「ブライアンと申します。」

 名を名乗ると彼は早々に配置についた。スサリアも特に気にした様子もなく公務に集中した。

 それから毎日のようにブライアンから花の贈り物が届く。流石にやりすぎだと断りを入れると悲しそうな顔をして、俯くので今は好きにさせている。

「あの…王妃様?」

「何?」

「最近スルト様をお見かけしませんがどうかなさったのですか?」

 そう聞かれた時、スサリアは何か嫌な予感を感じた。

「我が子は陛下と相談して、ある所に預けているのだからしばらく会えないのよ。」

 なぜスルトの事を気にするのかわからないが、本当の事を言わずに隠して話した。

「そうですか…それはお寂しい事でしょう…。王妃様もどうかお元気を出してください。」

 そう言って頬を赤らめてこちらを見ているが、何か企んでいるような気がした。

「ありがとう、あなたは優しいわね。」

 そう言って笑ってこの話を終わらせた。

 そんなある日、王の部屋でお茶を楽しんでいるとタケトルが嫉妬を隠しもせずに言った。

「…最近若い兵士と仲が良いみたいだな。2人で笑い合っていると噂を耳にしたぞ。」

 その話を聞きスサリアは吹き出して笑った。

 その様子をタケトルは驚いてみている。
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