婚約破棄されても貴方が好き

はなおくら

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 言葉を紡ぐとなお寂しさが強まる。隣で悲しい目でこちらを見つめてくる張本人はそんな事気づいてもいない。

「そうか…。僕にはまだその感情がなんなのかわからないな…。」

 アレク様の呟きに正直驚いたのと、やはり婚約時、自分のことを見てくれていなかったのだと思う。

「そう…ですか…。」

 そう返すのが精一杯だった。横目で彼を見ていると、彼は口を開いた。

「実は僕にもね…婚約者がいたんだ。もう少しでその人と結婚するところまで言ってたんだけど…。」

 そう言って彼は黙った。振られたくせにその言葉の続きが知りたくて縋り思いで言った。

「それで…その方とはどうなったのです?」

「……。僕が婚約破棄をしたんだ。彼女には申し訳ないと思う。僕たちが生きている世界は、小さいうちから皆相手がいて、結婚適齢期になれば結婚する…。僕のわがままで彼女にその時期を遅らせてしまった…。」

 少しながら彼も気にしてくれていたのだと思うと嬉しくなる反面、腹もたった。

「何故…婚約破棄したのですか?…彼女の気持ちは?」

「………。」

「答えてください‼︎」

 彼から聞けなかった想いを、言葉を聞きたくて気づいたら怒鳴っていた。

「何故君が怒っているんだ?」

「…っ!!」

 そう言われて慌てて口をつぐみ、言い訳がましくこぼした。

「すみません…彼女があまりにも私と似た境遇だった者で…感情移入してしまったようです。」

「いや…こちらこそ無粋な事を言ったね…。」

 それからは二人とも何も言わずに、動物を眺めた。そして短い休暇が終わった。

 今まではこれの元について回ろうと思っていたが、彼から自分の事を聞けて納得した。

 あれだけ気まずい雰囲気を作って置いて二度呼ばれることはないだろう。

「アレク様のありがとうございました。これまででとてもいい思い出となりました。……では…。」

 度から戻り、彼の屋敷の部屋で挨拶を済ませて去ろうとしたその時。

「待ってくれ。…君さえ良ければ…その…私の趣味の使用人の専属にならないか?」

 願ってもない話だった。このチャンスを逃して仕舞えば、後はない。

 やってみよう…。

「私でよろしいのですか?」

「あぁ…君といるとなんだか落ち着くんだ。それに僕にとってはこの度はとても楽しかった。」

 彼は笑って言った。嬉しい…。彼の中に少しでも入れた気がした。

「光栄です。わたしもまた一緒に行きたいと願っていました!ありがとうございます。」

 そう言って微笑むと、彼はニコッと笑ってこちらを見つめていた。
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