悪役令嬢の演技は仮面をつけた側近には通じない

ringo⸜❤︎⸝‍

文字の大きさ
3 / 3

エピソード3 〜イライジャという不思議な男〜

しおりを挟む
シャーロットは昔、母親に読んでもらった絵本を思い出していた。

その絵本は、かわいい魔女が主人公で呪文は毎回「イライジャ」だった(シャーロットの記憶によれば)

呪文は同じでも、かかる魔法は毎回違う。

まだ幼かったシャーロットは、絵本に出てきた可愛い魔女の真似をして「イライジャ」「イライジャ」と繰り返し言っていたていたことを思い出す。


(わたくしってば、おかしなことを)

だが時すでに遅し

男は腹を抱えてゲラゲラと笑っている。

「ははは・・・・呪文って・・ふふ」

「あの」

この場を訂正する言葉が何かないかとシャーロットは必死で脳内を探す。

「君は面白いね、ふはは」

「わたくしは皇帝陛下の」

「はいはい。わかったよ」

先程、男に言い放った言葉をもうち一度言おうとすると、男は子供でも宥めるようにシャーロットの頭をポンポン撫でる。

「イライジャって言うのは俺の名前だよ」

(え、なまえ?)

狐の仮面を被った男ーーイライジャの言葉にシャーロットは顔を真っ赤にする。

その顔はまるで茹でダコのようだ。

(呪文と名前を間違えるなんて)

「いや・・・あの・・・・・人の間違えを、そんな風に笑うのは・・・」

「悪役令嬢」としてのシャーロットの立場を取り繕うと言うよりは、間違ったことを大笑いされたのが恥ずかしく、いたたまれなくなってイライジャに意見する。

だが、イライジャは気にしていないように半ばふざけたセリフを言う。

「ごめんね・・・・怒らないで?」

「それに!その口の聞き方はお辞めなさい!」

シャーロットは男を叱責しようと、大きな声を出す。

すると、またイライジャは腹を抱えて大笑いする。

「お辞めなさいって・・・ふはは。
顔真っ赤にしながら言われてもな~・・はは」

言われてシャーロットは慌てて顔を背ける。

この男は自分のことが怖くないのかとシャーロットは考える。

イザベラの目論み通り、シャーロットは今や皇帝も認める「悪役令嬢」だ。
そんなシャーロットを見ただけで逃げて行く使用人もいるというのに
この男は逃げないどころか、シャーロットを笑い、敬語も使わず話している。

(おかしな方ですわ)

イライジャに戸惑いつつ、どうしたものかと考える。

「わたしくは、お前のようなバカ者と話している暇はない」

この場を離れるのが一番だと、シャーロットは思った。

この部屋を離れればイライジャと話さなくてすむ。

そう考え、シャーロットはこの部屋を後にしようとイライジャの顔を一瞥する。

イライジャと横を通った時

「ねえ、」

と言う甘い声がシャーロットの耳に届く。

その声に心臓が高まるのを感じたシャーロットは足を止めるかどうか迷ったが、止めずに部屋を出ることにした。

(この方と話していると調子が狂ってしまいます)

「また話そうね、シャーロット」

部屋から出ようとするシャーロットの耳に、イライジャの意味ありげな言葉が届く。

しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームは見守るだけで良かったのに

冬野月子
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した私。 ゲームにはほとんど出ないモブ。 でもモブだから、純粋に楽しめる。 リアルに推しを拝める喜びを噛みしめながら、目の前で繰り広げられている悪役令嬢の断罪劇を観客として見守っていたのに。 ———どうして『彼』はこちらへ向かってくるの?! 全三話。 「小説家になろう」にも投稿しています。

女王は若き美貌の夫に離婚を申し出る

小西あまね
恋愛
「喜べ!やっと離婚できそうだぞ!」「……は?」 政略結婚して9年目、32歳の女王陛下は22歳の王配陛下に笑顔で告げた。 9年前の約束を叶えるために……。 豪胆果断だがどこか天然な女王と、彼女を敬愛してやまない美貌の若き王配のすれ違い離婚騒動。 「月と雪と温泉と ~幼馴染みの天然王子と最強魔術師~」の王子の姉の話ですが、独立した話で、作風も違います。 本作は小説家になろうにも投稿しています。

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました

らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。 そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。 しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような… 完結決定済み

公爵家の次女ですが、静かに学園生活を送るつもりでした

佐伯かなた
恋愛
王国でも屈指の名門、公爵アルヴィス家。 その家には、誰もが称賛する完璧な令嬢がいた。 長女ソフィア。 美貌、知性、礼儀、すべてを備えた理想の公爵令嬢。 そして──もう一人。 妹、レーネ・アルヴィス。 社交界ではほとんど名前も出ない、影の薄い次女。 姉ほど目立つわけでもなく、社交の中心にいるわけでもない。 だが彼女は知っている。 貴族社会では、 誰が本当に優れているのかは、静かな場面でこそ分かるということを。 王立学園に入学したレーネは、 礼儀作法、社交、そして人間関係の中で、静かに周囲を観察していく。 やがて── 軽んじていた者たちは気づく。 「公爵家の妹」が、本当はどんな令嬢だったのかを。 これは、 静かな公爵令嬢が学園と貴族社会で評価を覆していく物語。

自己肯定感の低い令嬢が策士な騎士の溺愛に絡め取られるまで

嘉月
恋愛
平凡より少し劣る頭の出来と、ぱっとしない容姿。 誰にも望まれず、夜会ではいつも壁の花になる。 でもそんな事、気にしたこともなかった。だって、人と話すのも目立つのも好きではないのだもの。 このまま実家でのんびりと一生を生きていくのだと信じていた。 そんな拗らせ内気令嬢が策士な騎士の罠に掛かるまでの恋物語 執筆済みで完結確約です。

悪役令嬢が睨んでくるので、理由を聞いてみた

ちくわ食べます
恋愛
転生したのは馴染みのない乙女ゲームの世界だった。  シナリオは分からず、登場人物もうろ覚え、タイトルなんて覚えてすらいない。 そんな世界でモブ男『トリスタン』として暮らす主人公。 恋愛至上主義な学園で大人しく、モブらしく、学園生活を送っていたはずなのに、なぜか悪役令嬢から睨まれていて。 気になったトリスタンは、悪役令嬢のセリスに理由を聞いてみることにした。

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

処理中です...