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番外編
明けちゃった2(2)
「でも、困るわね。シャンが結婚して彼女が漆黒を辞めるとしたら」
「あー、それなら大丈夫ですよ。シャンは漆黒を辞めないと思いますから」
「そう? でも、結婚相手があの男じゃ、辞めさせられるんじゃないの?」
「だけど、黄金の団長ですからね。漆黒の存在意義はわかっているはず。それにシャンの必要性も」
「でも。シャンの潜入捜査は、当分の間は無理よね。代わりの人物、探しておかなきゃ」
「ボクでも良ければ、ボクがやりますし……。って、男が潜入してもいいような場所ですよ」
とローガンが口にすれば、アニトラがじぃっとローガンを見つめてくる。
「よくよく見たら。って、よく見なくても。ローガンも可愛い顔、してるわね。イケるかも」
「イケるって何がですか?」
「またまたぁ。わかってるくせに。期待してるくせに」
ローガンが期待しているのは、恐らくアニトラが口にしていることとは別の件だ。
「ローガン。あなた、女でも男でもどっちでもイケるわ」
やっぱりか、とローガンはがっくりと肩を落とす。
「だって。あの団長だって女装するのよ? 見たことある?」
「残念ながらボク、それを見たことないんですよね。シャンはあるみたいなんですけど。そう言えば、シャンも団長の女装姿を見て、物凄く興奮してたな」
ローガンが少し目を細めるのは、少し昔のことを思い出しているから。あれは、シャンテルが夜鳴亭に潜入調査していた時の話だ。かれこれ半年以上も前の話。
「っていうか。団長が女装できるなら、団長でよくないですか?」
「何言ってるの? 団長は仮にも団長よ。いざっていうときに、取りまとめる人物が必要でしょ?」
「そこは、副団長が代理で……」
うーん、とアニトラは唸る。団長代理、というポジションが魅力的なのだろうか。
「あー、やっぱダメダメ。私、あいつ苦手なのよ、あいつ。あいつが私の言うことを聞くわけないでしょ。何かしら頼むと、文句しか言ってこないんだから」
残念ながらローガンには、アニトラが苦手とする『あいつ』に心当たりは無い。このアニトラにも苦手な人間がいることにいささか驚きつつも、もしかしたら『あいつ』はアニトラのことを気にしているのではないか、とさえ思う。
「ということで、ローガン。次の潜入調査はあなたよ。行ってもらいたいところ、実はあるんだよね」
うふふ、と笑いながら紅茶を飲む。そして、ローガンの持ってきたお菓子を一つ頬張れば。
「あら、これ本当に美味しいわね」
そんな幸せそうなアニトラの顔を見つつも、ローガンは複雑な気持ち。
女装、潜入のために女装。潜入調査が必要であることはわかっているが、女装。
女装は嫌だ。あのガレットと一緒にしないで欲しい。
唇を尖らせながら、紅茶のカップに口をつける。そんな不機嫌な彼にアニトラも気付いたのだろう。
「わかった。潜入調査が成功した暁には、このアニトラ様がデートしてあげるから。ね」
可愛らしく「ね」と、言われたら、ローガンはそれを横目で見る。直視はできない。
「考えておきます。が、シャンがいるなら、シャンに頼んでくださいよ」
「嫌よ。シャンの婚約者。盛ってんでしょ? 絶対、面倒くさくなることが目に見えてるもの」
恐らく、シャンテルが再び潜入調査などに行き、グレイクと会えないような日が続いたら、機嫌が悪くなるのは彼の方だろうな、とローガンは思う。そうなれば、本当に面倒くさいことが目に見えている。
「仕方ない。副団長とのデートをかけて、ボクが一肌脱ぎますかね」
「あら、やる気になった?」
「新年ですからね。少しくらいは、気持ちを引き締めても罰はあたりませんよね」
それを聞いたアニトラは声をあげて楽しそうに笑う。ローガンも釣られて、微笑すれば。
「あー。客が来たかも」
というアニトラの一言で、この幸せな時間は終了だ。
どうやら新年早々、困りごとを抱えている人間がいるらしい。
カランと、ベルが鳴って扉が開く。
「いらっしゃいませ。今日はどのようなご用件でしょうか?」
アニトラの明るい声が、室内に響いた。
「あー、それなら大丈夫ですよ。シャンは漆黒を辞めないと思いますから」
「そう? でも、結婚相手があの男じゃ、辞めさせられるんじゃないの?」
「だけど、黄金の団長ですからね。漆黒の存在意義はわかっているはず。それにシャンの必要性も」
「でも。シャンの潜入捜査は、当分の間は無理よね。代わりの人物、探しておかなきゃ」
「ボクでも良ければ、ボクがやりますし……。って、男が潜入してもいいような場所ですよ」
とローガンが口にすれば、アニトラがじぃっとローガンを見つめてくる。
「よくよく見たら。って、よく見なくても。ローガンも可愛い顔、してるわね。イケるかも」
「イケるって何がですか?」
「またまたぁ。わかってるくせに。期待してるくせに」
ローガンが期待しているのは、恐らくアニトラが口にしていることとは別の件だ。
「ローガン。あなた、女でも男でもどっちでもイケるわ」
やっぱりか、とローガンはがっくりと肩を落とす。
「だって。あの団長だって女装するのよ? 見たことある?」
「残念ながらボク、それを見たことないんですよね。シャンはあるみたいなんですけど。そう言えば、シャンも団長の女装姿を見て、物凄く興奮してたな」
ローガンが少し目を細めるのは、少し昔のことを思い出しているから。あれは、シャンテルが夜鳴亭に潜入調査していた時の話だ。かれこれ半年以上も前の話。
「っていうか。団長が女装できるなら、団長でよくないですか?」
「何言ってるの? 団長は仮にも団長よ。いざっていうときに、取りまとめる人物が必要でしょ?」
「そこは、副団長が代理で……」
うーん、とアニトラは唸る。団長代理、というポジションが魅力的なのだろうか。
「あー、やっぱダメダメ。私、あいつ苦手なのよ、あいつ。あいつが私の言うことを聞くわけないでしょ。何かしら頼むと、文句しか言ってこないんだから」
残念ながらローガンには、アニトラが苦手とする『あいつ』に心当たりは無い。このアニトラにも苦手な人間がいることにいささか驚きつつも、もしかしたら『あいつ』はアニトラのことを気にしているのではないか、とさえ思う。
「ということで、ローガン。次の潜入調査はあなたよ。行ってもらいたいところ、実はあるんだよね」
うふふ、と笑いながら紅茶を飲む。そして、ローガンの持ってきたお菓子を一つ頬張れば。
「あら、これ本当に美味しいわね」
そんな幸せそうなアニトラの顔を見つつも、ローガンは複雑な気持ち。
女装、潜入のために女装。潜入調査が必要であることはわかっているが、女装。
女装は嫌だ。あのガレットと一緒にしないで欲しい。
唇を尖らせながら、紅茶のカップに口をつける。そんな不機嫌な彼にアニトラも気付いたのだろう。
「わかった。潜入調査が成功した暁には、このアニトラ様がデートしてあげるから。ね」
可愛らしく「ね」と、言われたら、ローガンはそれを横目で見る。直視はできない。
「考えておきます。が、シャンがいるなら、シャンに頼んでくださいよ」
「嫌よ。シャンの婚約者。盛ってんでしょ? 絶対、面倒くさくなることが目に見えてるもの」
恐らく、シャンテルが再び潜入調査などに行き、グレイクと会えないような日が続いたら、機嫌が悪くなるのは彼の方だろうな、とローガンは思う。そうなれば、本当に面倒くさいことが目に見えている。
「仕方ない。副団長とのデートをかけて、ボクが一肌脱ぎますかね」
「あら、やる気になった?」
「新年ですからね。少しくらいは、気持ちを引き締めても罰はあたりませんよね」
それを聞いたアニトラは声をあげて楽しそうに笑う。ローガンも釣られて、微笑すれば。
「あー。客が来たかも」
というアニトラの一言で、この幸せな時間は終了だ。
どうやら新年早々、困りごとを抱えている人間がいるらしい。
カランと、ベルが鳴って扉が開く。
「いらっしゃいませ。今日はどのようなご用件でしょうか?」
アニトラの明るい声が、室内に響いた。
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