【R18】魔導書だと思って古文書を解読したら、えっちな小説でした。

澤谷弥(さわたに わたる)

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プロローグ

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「女性の身体は神秘的すぎて、よくわからない……」

 夜も更けた室内は、最小限の明かりだけが照らされ、ほの暗い雰囲気に包まれている。ベッドの上を覆うかのように広げてある資料は、室内に独特の緊迫感を与えていた。

 先ほどから「わからない」と頭を抱えているのは、ギルマン魔法文化財研究所の所長、テオドールだ。

 アヤル遺跡で発掘された古文書の解読を行っており、一度、国に報告書を提出したものの、内容がわかりにくいという理由で再提出を求められた。

 その提出日は三日後、だから深夜になっても解読に励んでいるのだ。

「何がわからないんですか?」

 隣の小さな机で同じように作業をしていたディアナが顔を上げた。彼女の部屋は隣にあるが、とにかく納期に追われているため、二人で作業したほうが効率的だという事情により、テオドールの部屋で古文書の写しと向かい合っていた。

「所長。先ほどから何に悩んでいるんですか? わたしのほうで調べましょうか?」

 古文書は、昔の言葉――古語で書かれているため、現代語に訳すところから始まる。しかし直訳しただけでは意味不明な内容になってしまうため、それをわかりやすく正確な文章にするまでを解読と呼んでいた。

「……いや。古文書に書かれている内容を現代語に訳するところまではできたのだが……その内容が、まったく理解できない」

 テオドールほどの人物が「わからない」という内容とは、いったいどのようなものか。彼は古文書解読においては、研究所内では群を抜いているし、ディアナも尊敬する研究者の一人だ。

 その彼が苦戦しているとなれば、ディアナも不安になり眉をひそめたくなる。

 複雑な古文書なのだろうか。いや、アヤル遺跡で発見されたのだから、魔導書である可能性が高い。となれば、やはりテオドールの専門分野だ。
 古くて希少性のある魔導書だからこそ、国からの圧力を受けながら内容を読み解こうとしているくらいなのだ。

「恐らくこの古文書は、人体について書かれていると思うのだが……」

 先ほど彼が、「女性の身体が神秘的」とぼやいたのもそのためだろう。それにテオドールが手掛けている魔導書は、人造人間などをはじめ、禁断の術式が書かれている極めて特殊なものではないかと言われている。

 高鳴る鼓動を落ち着かせ、ディアナは声をかけた。

「どんな内容ですか?」

 魔導書に女性に関する記述があるならば、同じ女性として興味が湧いてくる。
 女性型の人造人間の内容でなくても、もしかして女性に特化した内容、例えば女性しか使えない魔法とか、女性にだけかけられる呪いとか、そういった特別なものが書かれているのかもしれない。

「どうやら、女性の身体には果実があるらしい」

 テオドールの言葉に、ディアナはこめかみをピクリと動かす。

「それに、女性の身体には花びらまであると書いてある。それではまるで、女性が植物のようではないか」

 ディアナの眉間のしわがさらに深まった。
 彼の言う、女性の身体にある果実や花びらには心当たりがある。

「さらに、刺激を与えれば蜜まで滴るとある。やはり、女性の身体は花なのか?」

 あまりにも真面目に口にするテオドールに対し、ディアナはコホンと空咳をして気を引き締めた。

「所長、恐らくですが……」

 ふっと息を吸ったのは、心を無にするためだ。これから口にする言葉に感情を乗せてはならないと、そう自分に言い聞かせ、表情が緩まないように顔を引き締める。

「女性の身体の果実は、乳首、もしくは陰核を表現しているものかと思います」
「乳首……陰核……」

 ディアナが言った言葉を復唱しないでもらいたい。

「では、花びらは何を示す?」

 目を輝かせるテオドールは、まるで新たな発見に興奮する子どものようだ。いやこの話題は、子どもにはふさわしくないだろう。

 もう一度ディアナは心を落ち着ける。

「花びらは陰唇。滴る蜜は、膣からの分泌物を示すものだと思います」
「なるほど……」

 真面目な表情で頷いたテオドールは、忘れぬうちにとディアナの言葉をしっかり書き留める。それでもすぐにまた「わからない」と口にする。

「なぜ、それらをわざわざ花びらや果実などと表現するのか」 
「直接的に表現されるよりは、興奮しませんか?」

 ディアナも負けじと真剣な眼差しを返せば、二人の視線が交錯する。
 テオドールは視線を逸らさず首を横に振った。

「わからないな」

 そう呟きつつも、言葉を続ける。

「そもそも、本当に花びらや果実なのかもわからない」

 ディアナはふっと息を吐き、思わず口元に小さく笑みを浮かべた。

「でしたら……確認してみますか?」

 ディアナは、自身のブラウスの釦にそっと手をかけた。
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