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第一章(3)
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「やや、賑やかだね」
「噂をすれば、なんとやら」
サラの言葉からもわかるように、部屋の扉の前に立っていたのはスコットであった。軽やかに笑みを浮かべ肩をすくめる彼の姿は、まるでこの研究所の人間のように慣れている。
「噂? もしかしてオレの? 君たちのような美人さんたちに噂してもらえて、光栄だね」
口調が軽いのが玉に瑕。
「スコットさん。こちらに来る前に、下の施設内部通話装置を押してくださいってお願いしてますよね? むしろ、どうやってここまで入ってきたんですか?」
仕事モードに切り替わったディアナが、冷たく指摘する。
「ごめんごめん。実はこれ、テオからもらってね」
「あ~」
スコットがディアナに見せつけたのは、研究所の入場許可証だ。
ギルマン魔法文化財研究所は、扱う遺物の性質上、厳重に管理されている。施設に入るには、各自が持つ入場証を入り口の魔導具に読み取らせる必要があった。研究員は身分証明書を兼ねる入場証を携帯しているが、外部の人間はもちろん持っていない。
だから来訪者があれば、入り口の施設内部通話装置で所員に連絡をする必要があるのだ。しかしいつの間にかスコットはそういった煩わしさから解放される、入場許可証を手にしていた。
「だってさ、ほら。オレは国の人間といっても、この研究所と国を繋ぐ役割の人間だろう? てことは、ある意味、両方に所属すると言ったほうが正しいと思うんだよね」
絶妙なタイミングで片目をつむるスコットに、ディアナはぷいっと顔を背けた。
「相変わらずディアナちゃんはつれないねぇ? でもそういう態度を取られたほうが、オレとしてはがぜん燃えるというわけだ。どう? いっそのことテオドールからオレに乗り換えない?」
「どうしてそんな話になるんですか!」
「だって、テオ。ディアナちゃんの気持ちにこれっぽっちも気がついていないでしょ? あんな男と一緒になっても、『仕事と私、どっちが大事なの?』って聞く羽目になるよ?」
ニタニタと笑うスコットは楽しそうだ。
「あぁ。それは問題ありません。もちろん仕事が大事ですから。そんな仕事の合間の癒やしが……って、何を言わせるんですか!」
がみがみとディアナが食ってかかったところで、地下書庫から男三人が戻ってきた。
「あ~疲れた~」
どさっと大きなソファに倒れ込んだのはルーカスだ。対照的にアルノーは、一人がけ用ソファに姿勢よく座る。
「では休憩にしましょう。今、お茶を淹れます」
ディアナが慌ててスコットから逃げるように給湯室へ向かい、ティーポットとカップを手にして戻ってきた。
「じゃ、お菓子を準備するね」
サラもさっとテーブルを拭いて、お菓子を並べ始めた。
「スコットもどうぞ」
テーブルの周りには、二人がけのソファが二つ、一人がけのソファが三つ。
サラはスコットに一人がけのソファを勧め、さりげなく場を仕切る。
「お待たせしました」
ディアナが人数分の紅茶を準備して、それぞれの前に置こうとしたとき、サラと目が合った。どこに座るべきかと二人で顔を見合わせる。
空いているのがルーカスの隣か、テオドールの隣。そして一人用のソファ。すかさずサラが空いている一人用ソファに座った。
サラの視線が訴えている。さらにパクパクと声にならない言葉で訴える。
――テオドールの隣に座りなさい!
「噂をすれば、なんとやら」
サラの言葉からもわかるように、部屋の扉の前に立っていたのはスコットであった。軽やかに笑みを浮かべ肩をすくめる彼の姿は、まるでこの研究所の人間のように慣れている。
「噂? もしかしてオレの? 君たちのような美人さんたちに噂してもらえて、光栄だね」
口調が軽いのが玉に瑕。
「スコットさん。こちらに来る前に、下の施設内部通話装置を押してくださいってお願いしてますよね? むしろ、どうやってここまで入ってきたんですか?」
仕事モードに切り替わったディアナが、冷たく指摘する。
「ごめんごめん。実はこれ、テオからもらってね」
「あ~」
スコットがディアナに見せつけたのは、研究所の入場許可証だ。
ギルマン魔法文化財研究所は、扱う遺物の性質上、厳重に管理されている。施設に入るには、各自が持つ入場証を入り口の魔導具に読み取らせる必要があった。研究員は身分証明書を兼ねる入場証を携帯しているが、外部の人間はもちろん持っていない。
だから来訪者があれば、入り口の施設内部通話装置で所員に連絡をする必要があるのだ。しかしいつの間にかスコットはそういった煩わしさから解放される、入場許可証を手にしていた。
「だってさ、ほら。オレは国の人間といっても、この研究所と国を繋ぐ役割の人間だろう? てことは、ある意味、両方に所属すると言ったほうが正しいと思うんだよね」
絶妙なタイミングで片目をつむるスコットに、ディアナはぷいっと顔を背けた。
「相変わらずディアナちゃんはつれないねぇ? でもそういう態度を取られたほうが、オレとしてはがぜん燃えるというわけだ。どう? いっそのことテオドールからオレに乗り換えない?」
「どうしてそんな話になるんですか!」
「だって、テオ。ディアナちゃんの気持ちにこれっぽっちも気がついていないでしょ? あんな男と一緒になっても、『仕事と私、どっちが大事なの?』って聞く羽目になるよ?」
ニタニタと笑うスコットは楽しそうだ。
「あぁ。それは問題ありません。もちろん仕事が大事ですから。そんな仕事の合間の癒やしが……って、何を言わせるんですか!」
がみがみとディアナが食ってかかったところで、地下書庫から男三人が戻ってきた。
「あ~疲れた~」
どさっと大きなソファに倒れ込んだのはルーカスだ。対照的にアルノーは、一人がけ用ソファに姿勢よく座る。
「では休憩にしましょう。今、お茶を淹れます」
ディアナが慌ててスコットから逃げるように給湯室へ向かい、ティーポットとカップを手にして戻ってきた。
「じゃ、お菓子を準備するね」
サラもさっとテーブルを拭いて、お菓子を並べ始めた。
「スコットもどうぞ」
テーブルの周りには、二人がけのソファが二つ、一人がけのソファが三つ。
サラはスコットに一人がけのソファを勧め、さりげなく場を仕切る。
「お待たせしました」
ディアナが人数分の紅茶を準備して、それぞれの前に置こうとしたとき、サラと目が合った。どこに座るべきかと二人で顔を見合わせる。
空いているのがルーカスの隣か、テオドールの隣。そして一人用のソファ。すかさずサラが空いている一人用ソファに座った。
サラの視線が訴えている。さらにパクパクと声にならない言葉で訴える。
――テオドールの隣に座りなさい!
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