【完結】【R18】魔導書だと思って古文書を解読したら、えっちな小説でした。

澤谷弥(さわたに わたる)

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第四章(4)

「では、もう少し触れさせてもらう。声が出るなら、遠慮なく出してくれ」
「は、はい……」

 恥ずかしがっている場合ではない。これはテオドールが言うように検証なのだから。古文書に書かれた事例が正しいかどうかを確認している。

 そう頭ではわかっているのに、焦って恥ずかしがっている自分が心の中にいるのだ。

(そうだ! 目を瞑ればいいのよ……。こうやって間近にテオさんの顔があるから意識しちゃう……)
「あの……緊張するので、目を瞑ります」
「わかった」

 だが、目を閉じたのは失敗だったとすぐに後悔した。

「あっ……ん、んっ……」

 乳房を揉まれ、乳首を弄られているだけなのに、お腹にぐずぐずと熱がたまってくる。しかも目を閉じているせいか、感覚がより研ぎ澄まされたような気がした。

(わたし……感じてる……?)

 やはりここで思い出されるのはサラから借りて読んだ恋愛小説。ちょっとした暇つぶしに読んでいた程度だったが、今になってはサラに感謝したいくらいだ。

(胸だけでも感じるって……本当なんだ……)
「ひゃっ……」

 胸にテオドールの息がかかる。どれだけ顔が近づいているのか、目を開けて確認する勇気はない。

「すごいな。本当に硬くなってきた……。ピンと勃っている……」

 いつもと変わらぬ淡々とした口調で紡がれる彼の言葉に、背筋がざわりとした。

「古文書には舐めるとも書いてあったのだが……舐めてもいいだろうか?」
「え? あっ、えぇ?」

 突拍子のないことを言い出したテオドールに驚き、ディアナは目を開けてしまった。

「あっ……」

 予想に反して、目の前にあったテオドールの顔。いつもと同じ誠実な表情を浮かべていただけに、ディアナの心臓は大きく飛び跳ねた。

「な、な……舐める……んですか?」
「あぁ……舐めてみたい。どんな味がするのか」

 へらへらしていたら、その頬を引っぱたくこともできただろう。しかし、テオドールは冗談ではなく本気である。

「味、ですか……」
「そうだ。確認したい。いいだろうか?」

 吸い込まれそうなほど深い緑色の目が、食い入るようにディアナを見つめてくる。そんな眼差しを向けられたら「駄目です」なんて言えない。

「どうぞ」
「では、ベッドに横になってほしい。このままでは、少し……」

 ディアナの脳内にはサラの恋愛小説のワンシーンが再生された。
 まさしく今と同じような状況である。ヒーローがヒロインの胸を舐めるシーン。そのときヒロインはベッドの上に押し倒されていたはずだ。となれば、これからテオドールに押し倒されるのだろうか。

「あの、所長」
「なんだ?」
「一つ確認があるのですが……古文書のほうには、男性が女性を押し倒すような文章はありませんでした?」

 眉間にしわを寄せたテオドールは、手を伸ばして古文書の写しを取り、そこに素早く視線を走らせる。

「あぁ……もしかして、ここか? 女性が倒れたと思っていたのだが……男性側が押し倒したと訳せば……」

 ぶつぶつと呟くテオドールの姿には、ランプの光によって不規則な陰影が落とされる。

「ディアナくんが言うとおりだ。これによれば、男性が女性を押し倒していた」

 彼の表情が晴れたのは、ディアナから見てもはっきりわかった。

「では、私もディアナくんを押し倒し、同じように乳首をしゃぶってみたい。いいだろうか?」

 卑猥な言葉であるはずなのに、相手がテオドールだからか、厭らしさが微塵も感じられなかった。いや、彼の口から「乳首をしゃぶる」と出たことが驚きと、どこかかわいらしいとすら思ってしまった。

「はい……」

 ディアナが返事をすると、テオドールは両手を肩に添えてきた。そのままベッドに押し倒された。
 視界がぐるりと変わって、天井が見える。視線を逸らせば、すぐ前にテオドールの顔があり、また目が合った。

「では、失礼する……」

 ざらりとした舌の感触が乳嘴に触れ、じくじくと下腹部が熱くなる。

「んっ……」

 最初は先端を舐めていたテオドールだが、そのうち唇で食みながら舐ってくる。

「はっ……あぁ……」

 手で触れられるよりも、粘膜による接触は刺激が強い。

「ん、んっ……」

 攻めてくる快感を逃すように、ディアナはシーツをぎゅっと握りしめた。血液が沸騰しそうなくらい身体が熱くなり、速くなる心臓の動きも制御できない。

「あっ……テオさん……」

 快楽に抗えず、つい彼の名を口にしてしまった。すると、テオドールの動きがぴたりと止まり、胸元から顔を離した。

 濡れた乳首が外気に触れ、それすら新たな刺激になる。

「すまない、ディアナくん。つい、夢中になってしまった」

 申し訳なさそうに顔をゆがませたテオドールは、ディアナを見下ろしながら謝罪の言葉を口にした。

「今日の検証はここまでにしよう。ディアナくんのおかげで、解読が進みそうだ。忘れないうちに、解読作業の続きをしたい。だからディアナくんは、先に休みなさい」
「いえ、わたしも手伝います」
「いや……残りは私だけで対応できる。早く服を着たほうがいい。風邪をひいてしまう」

 風邪をひくほど、室内は寒いとは感じなかった。むしろ、彼と触れ合って熱いくらいだ。

 しかしテオドールは、どこか恥じらうようにディアナから視線を逸らした。
 それはきっと、服を着ろ、の合図にちがいない。

 身体を起こしたディアナは、ベッドの上にあった胸当てをつけ、お腹の上でとどまっていた下着をすっと引き上げて肩紐を腕に通した。

「所長……シャツを取っていただいても?」
「あ、あぁ……これだな?」

 テオドールがベッドの足元のほうにあったシャツを手渡してくれた。

「今日は遅くまで協力してくれてありがとう。感謝する」
「い、いえ……」

 恥ずかしくて、つい下を向いてしまう。

「早く部屋に戻って休みなさい。明日も仕事だ」
「はい、わかりました。また明日、作業の続きを手伝いますね」

 ディアナがそう言えば、テオドールは微かに笑った。

「助かる」
「では、おやすみなさい」
「おやすみ」

 隣の部屋だというのに、テオドールはディアナが自室に入るまで見送った。
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