【完結】【R18】魔導書だと思って古文書を解読したら、えっちな小説でした。

澤谷弥(さわたに わたる)

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第四章(6)

 事務棟での作業といっても、他の解読はほぼ終わっており、それを報告書としてまとめるくらいである。この仕事が終わる頃には、あの魔導書の解読も終わっているだろう。となれば、国研での仕事は終了となり、ギルマン研究所に帰ることができる。

 やっと帰れるという思いと、テオドールと過ごす時間が終わってしまう寂しさと、複雑な気持ちだった。

 とにかく事務棟では、国研の研究員もいることから気が抜けない。彼らは相変わらず民間研究所所属でかつ女性のディアナを下に見ている。隙あらば「これだから民間は」とか「これだから女は」とか、そう言いたい人間なのだ。

 そんな彼らを見返すためにも、今、解読に難航している古文書を何がなんでも完璧な形で終わらせたい。

(でも、あれって、人造人間について書かれているとは思えない……)

 初代アヤル王が百八人の子を持ったのも、人造人間の技術が確立したからではという説もあり、そして今回、後宮と思われる場所で見つかった古文書。

 誰もが期待を寄せる。そういった思い込みが、正しい解読の妨げになっているのではないだろうか。

 そうやって事務棟での仕事をやり過ごし、定刻になればテオドールと一緒に支部棟へと戻る。夕食も彼と一緒にとり、一息ついてから、例の魔導書と思われる古文書の再解読に取りかかる。
 今夜もテオドールの部屋へと、ディアナは足を向けた。

「あの、所長……昨日、読んでいたところは、うまく解読できたのでしょうか?」
「ああ。ディアナくんのおかげだ」

 その表情は晴れやかだ。

「その内容をわたしが聞いても?」
「……そうだな。ここまで協力してもらっているのだから、ディアナくんも内容を知っておいたほうがいいだろう。だが、他の人に聞かれたら、自分は関わっていないと、何も知らないと、そういう態度を取れるだろうか?」

 テオドールの眼差しはどこか怖いと感じた。

「え……っと……」
「すまない。手柄を独り占めしたいとか、そういうわけではない。どちらにしろ、これは研究所の名前で発表するから、個人の名が表に出ることはない。ただ内容が内容なだけに、その知識を奪おうとする者がいるかもしれない。それを懸念している」

 彼は昨日も同じことを言っていた。ディアナはテオドールの名で発表してかまわないと言ったのに、それをギルマン研究所という大括りで発表するというのだ。そうなれば、テオドールの成果にはならない。所長として、実績を積みたいところだろうに。

「いいんですか? 所長の名前で発表しなくて……」
「かまわない。私にとって報告書は副産物の一つだと思っている。それよりも、これを解読して得た知識のほうが大事だ。それに研究所の名前で発表されるのだから、研究所の実績になる」

 テオドールが、ギルマン研究所を大事にしているのが、なんとなく伝わってきた。それは、彼が他のメンバーと接するときにも感じるものだ。

「では、早速、昨日の続きに入ろう」

 ベッドの上には古文書の写しや、それを解読した内容を書いた紙などが並べられていく。 

「昨日はここまで解読ができた。これの前にディアナくんが見直してくれた、この文章が入る」

 テオドールが説明しつつ、紙の順番を入れ替えるのを見て、現状を把握する。

「今日は、ここからの解読ですね?」

 ディアナが一枚の写しを指差した。

「そうだ。これが昨日までの分だな」

 ランプの淡い光に照らされる文字を、ディアナは素早く追う。

(わたしが解読したところ……デートしている男女と仮定して……その後、テオさんの資料の内容にうつると……)

 これと同じような内容は、サラから借りた恋愛小説で読んだ。となれば、やはりこれは人造人間の製造方法ではないような気がする。

(問題は、これをどうやってテオさんに伝えるか……)

 ちらちらとテオドールを盗み見るが、彼の真剣なまなざしは古文書の写しに注がれたまま。
 彼は、古文書が魔導書であり、人造人間について書かれたものだと主張しているが、九割九分は違うとディアナは思っている。

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