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15.初デート(5)

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 オレリアが選んだのは菫青石の指輪である。女性店員が意味ありげにニコリと微笑んだが、アーネストは無表情で答えた。しかし、店員の言いたいことは理解しているし、色恋沙汰に疎いアーネストでさえも、彼女がそれを選んだ意味をなんとなくわかっている。いや、そうであると思いたい。

「その指輪も直してもらうか?」

 アーネストは、オレリアが首からさげている指輪に視線を向けた。

「いえ、これはこのままで……」

 彼女は指輪を握りしめて、アーネストの提案を断った。彼女なりに思う何かがあるのだろう。それ以上、追求するつもりもなかった。
 今日頼んだ指輪は、加工してサイズを合わせるから十日ほどかかるようだ。十日後、また二人でここに来る約束をする。

「そろそろ、お腹が空かないか?」

 店を出たところでアーネストが声をかけると、オレリアも「そうですね」と答える。
 時間はちょうどお昼を過ぎたころ。太陽が真上にあがり、短い影を作っていることからも判断できる。

「あそこの食堂ですか?」
「そうだな。だが今日は、あそこではなく、別の場所で食べないか?」

 ガイロにはいくつか食事をする場所がある。
 誰もが利用でき、一日中開いている大きな食堂は、国も資金を出しているため安く食事をすることができる。

 そのほかにも、特別なときに利用するようなレストランも何店かあった。

「はい」

 ガイロの街の面白いところは、住んでいる区によって、それぞれ何を求めているかがわかるところだろう。二区に雰囲気のよいお店が多いのは、単身で暮らしている者が多いというのも理由だ。そのためここは、夜間になると見回りの兵も多い。

 それに引き換え三区は、子どもが集まるような場所には兵を多く配置するものの、夜遅くに出歩く人も少ないため、夜間の見回りは一区や二区と比較しても手薄になる。

「ここのレストランなら、お前も気に入るだろうと思ってな」

 煉瓦造りの建物は、黒い窓枠がアクセントになっている。窓から見える内装は茶系統で統一され、どことなく落ち着きがある。
 はっきりいって、アーネストはどこのレストランが美味しいとかどこの茶店が有名だとか、そういった情報に疎い。恥を忍んでジョアンに尋ねたところ、彼が「奥様とのデートにぜひ」と喜んで教えてくれたのがこの店なのだ。普段から仕事のお供のおやつをまめに買っているような人物は、やはりこじゃれた店に詳しかった。

「アーネストは、なんでも知っているんですね」

 ジョアンから教えてもらったことは言いたくなかったため、笑ってごまかした。

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