婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。

澤谷弥(さわたに わたる)

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第五章

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「ディアが、この採掘部隊で仕事をしていると聞いて。驚いたよ」

「ええ、わたくしも驚いております。このような立派な仕事、わたくしに務まるかと思っておりましたが、他の魔導士や採掘師たちに支えられ、なんとかこなせています」

「王都にいたときよりも、顔色もよさそうだし。それに少し、健康的になったような気がする」
 しばらく会わないうちにリューディアも身体付きもふっくらとして丸みを帯びてきたように感じた。

「そうですか?」

「うん。何よりも、こうやってボクとの会話を楽しんでいるディアがいる。あちらにいたときは、いつも俯いていたよね。こんな風にボクの顔を見てくれなかった」

「そう、でしたか?」

「うん。だけど、今のディアの方が、以前よりも何十倍も魅力的だ。君はそうやって笑っていた方がいいよ」

 魅力的。エメレンスにそう言われてしまっては、恥ずかしくてリューディアはただ頬を染めるだけ。
 会話も途切れ、気まずい空気と時間が流れる。

「あ、えと。ディア。その、仕事について教えてくれないか?」
 この居たたまれない空気から逃げ出すかのように、エメレンスが尋ねた。

「あ、はい。そうですね。では、今日の仕事の内容について説明します。あ、それよりも先に。その、採掘部隊の主な仕事というのは、お兄さまからお聞きになりましたか? その、仕事も大きく三つに分かれているということを」

「うん。聞いた。探鉱、採鉱、選鉱の三つでしょ。そしてボクたちは採鉱の担当だ」

「はい。そうです。採掘のための安全管理やスケジュール調整を担当します。今日はこちらの坑道、これから採掘師たちに採掘してもらうために、先に安全確認を行うところです。採掘現場は、ここを進んだ奥の右側になります。まずはそこまで行ってみますね」

 先ほど崩してしまった道を避けて、先に進む。

「ここはまだ、手つかずの採掘現場です。これから、採掘してもらう場所になります」
 この先は行き止まり。というのもこの先を掘ってもらう必要があるから。
「わたくしたちの仕事は、安全の維持のために魔法を使うこともありますが、どちらかというと地学、統計学といったものを使う方が多いかもしれませんね」

「うん、そうだね。ここは少し脆そうだ」

「お気づきになられましたか? このような場所を把握して、事前に対策をするのがわたくしたちの仕事なのです」

「ディア。なんか、楽しそうだ」

「はい。楽しいです。その、ここには、わたくしの美醜について口にされる方もいらっしゃらなくて。みな、自分たちのことで手いっぱいのようです。それに、このフードとレンさまが贈ってくださった眼鏡もありますから」
 そこでリューディアははにかめば、エメレンスの心臓もドクンと大きく跳ねる。レンズの大きい眼鏡をかけていたとしてもリューディアの魅力を隠しきれるものでもない。それでも、自分のことに精一杯な人たちばかりであれば、リューディアに構っている暇など無いのだろう。それだけでも、ほっと胸をおろすことのできる案件だ。
 それから二人でその現場の状況を確認し、資料へと落とし込んでいった。
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