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第九章
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「まあ、囮になるかどうかはわからんし。向こうがそれに乘ってくれるかどうかもわからんが。周囲に刺激を与えるには充分な話題だな。それに、できれば婚約発表の前に、二人でモーゼフ殿下に会って欲しい。そして、二人でモーゼフ殿下に報告するんだ。そういう関係になった、ということを。そうなればすぐさまフリートという女性にも話は伝わるだろう。彼らを焦らせるためには、充分な代物だ」
リューディアは兄の言っている言葉の意味がよくわからず、エメレンスの方に顔を向けた。彼は何やら難しい表情で考え込んでいる様子。そんなエメレンスを見ながらヘイデンは言葉を続ける。
「モーゼフ殿下の立太子の儀が行われるときには、この国中が祭騒ぎになる。もちろん、このシャルコも例外じゃない。鉱山の仕事も一時的に閉められる。恐らく、十日程度だろう。立太子の儀の前後五日程だ。その隙に罠を張ろうと思っている」
「罠?」
思わずエメレンスは聞き返した。
「ああ。例のクズ石の件だ。大した罠じゃない。引っかかってくれたら儲けもんというそういうレベルのものだ。シオドリックからはメイソン侯爵を泳がせていると報告があった。だから、ブルースからメイソン侯爵に、クズ石の管理が厳しくなって入手ができなくなったという手紙を送らせる。となれば、彼らが狙うのは、クズ石ではなく魔宝石そのものになるだろう。モーゼフ殿下の立太子に合わせて、国中が浮かれまくっている。シャルコの採掘現場も長い間休み。誰もいない、となれば、まさしく盗り放題ってわけだな」
「そんなにうまくいきますかね?」
「さあな。だが、メイソン侯爵が携わっている魔導具の商会だが、物凄い勢いで受注を受けているらしい。どうやら、他の商会よりも安い、というのが売りになっているようだ」
「安い理由って……」
「そういうことだ。ここのクズ石を使っている、もしくは盗んだ魔宝石を使っている。原価が安い分だけ、安くできる」
「つまり。爆発した魔導具の製造元は」
「ああ、もちろんメイソン侯爵と繋がっている。だが、今、メイソン侯爵をとっ捕まえるには証拠が足りない。よくて、その手前の商会まで、だそうだ」
なるほど、とエメレンスは頷いた。彼らのことだから、前衛を隠れ蓑にしているのだろう。リューディアを囮に使うことが、エメレンスの心の中では引っかかっていた。あまり彼女を表舞台にあげたくない。それでも、この自分が側にいれば守り切ることができるだろうか。腕を組んで、エメレンスはじっと考え込む。
そんなエメレンスの姿を見て、ヘイデンは口元を緩めた。それから、妹に向かって優しく声をかける。
「ディア。お前はこれから、この国の腐りきった部分を目にするかもしれない。だけど、それに落ち込まず、この国を変えていくような、そんな気持ちを持ち続けて欲しい」
今のリューディアにはこのヘイデンの言葉の意味が理解できなかったが、兄が兄なりにリューディアを励まそうとしているという気持ちだけは伝わってきた。
「昔から、三大魔法公爵家とメイソン侯爵家には、因縁めいたものがあるんだよな……」
ヘイデンの呟きは、誰の耳にも届かなかった。
そこへ、子供たちの元気な声が響いてきたので、この話し合いは終了となった。
リューディアは兄の言っている言葉の意味がよくわからず、エメレンスの方に顔を向けた。彼は何やら難しい表情で考え込んでいる様子。そんなエメレンスを見ながらヘイデンは言葉を続ける。
「モーゼフ殿下の立太子の儀が行われるときには、この国中が祭騒ぎになる。もちろん、このシャルコも例外じゃない。鉱山の仕事も一時的に閉められる。恐らく、十日程度だろう。立太子の儀の前後五日程だ。その隙に罠を張ろうと思っている」
「罠?」
思わずエメレンスは聞き返した。
「ああ。例のクズ石の件だ。大した罠じゃない。引っかかってくれたら儲けもんというそういうレベルのものだ。シオドリックからはメイソン侯爵を泳がせていると報告があった。だから、ブルースからメイソン侯爵に、クズ石の管理が厳しくなって入手ができなくなったという手紙を送らせる。となれば、彼らが狙うのは、クズ石ではなく魔宝石そのものになるだろう。モーゼフ殿下の立太子に合わせて、国中が浮かれまくっている。シャルコの採掘現場も長い間休み。誰もいない、となれば、まさしく盗り放題ってわけだな」
「そんなにうまくいきますかね?」
「さあな。だが、メイソン侯爵が携わっている魔導具の商会だが、物凄い勢いで受注を受けているらしい。どうやら、他の商会よりも安い、というのが売りになっているようだ」
「安い理由って……」
「そういうことだ。ここのクズ石を使っている、もしくは盗んだ魔宝石を使っている。原価が安い分だけ、安くできる」
「つまり。爆発した魔導具の製造元は」
「ああ、もちろんメイソン侯爵と繋がっている。だが、今、メイソン侯爵をとっ捕まえるには証拠が足りない。よくて、その手前の商会まで、だそうだ」
なるほど、とエメレンスは頷いた。彼らのことだから、前衛を隠れ蓑にしているのだろう。リューディアを囮に使うことが、エメレンスの心の中では引っかかっていた。あまり彼女を表舞台にあげたくない。それでも、この自分が側にいれば守り切ることができるだろうか。腕を組んで、エメレンスはじっと考え込む。
そんなエメレンスの姿を見て、ヘイデンは口元を緩めた。それから、妹に向かって優しく声をかける。
「ディア。お前はこれから、この国の腐りきった部分を目にするかもしれない。だけど、それに落ち込まず、この国を変えていくような、そんな気持ちを持ち続けて欲しい」
今のリューディアにはこのヘイデンの言葉の意味が理解できなかったが、兄が兄なりにリューディアを励まそうとしているという気持ちだけは伝わってきた。
「昔から、三大魔法公爵家とメイソン侯爵家には、因縁めいたものがあるんだよな……」
ヘイデンの呟きは、誰の耳にも届かなかった。
そこへ、子供たちの元気な声が響いてきたので、この話し合いは終了となった。
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