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第九章
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そして、もう一匹の鼠と呼ばれたメイソン侯爵が捕まったと言う情報が入ったのはそれから二時間後のこと。
シャルコの採掘現場から魔宝石を盗むことを指示したとして。つまり、魔宝石の窃盗。
その日、ヘイデンが口にしていたように現場は休みだった。もちろん、モーゼフの立太子の儀に備えてのめでたいお休みで、シャルコも街中が浮かれていた。
「めでたい日だ。みんなで酒でも飲もう」
採掘師長のガイルが部下たちを誘う。そこまではよかった。だが、それでも彼らは採掘師たちだ。なんと、彼らは採掘現場で酒盛りを始めたのだ。採掘師らしいと言えばらしいのだが。
そこへ、現場が長期休暇中で誰もいないと思って侵入してきた輩がいる。もちろん、その輩の狙いは魔宝石。酒盛りしている採掘師たちとばったり出会い、屈強な彼らにあっさりと取り押さえられてしまう。すぐさま、採掘部隊の魔導士たちが呼ばれ、尋問。そこからメイソン侯爵家へと繋がり、メイソン侯爵家の屋敷に魔導士と騎士たちが乗り込んだ。さらに娘であるフリートも掴まってしまったことを耳にしたメイソン侯爵は、逃げられないと思ったのか、罪を認めた。
これが、モーゼフの立太子の儀を五日後に控えたときの出来事。
その日。そのドタバタ劇が落ち着いたころ、リューディア、エメレンス、そしてモーゼフの三人が応接室でゆったりとお茶を嗜んでいた。
「そうか。エメレンスはリューディアと結婚することを決めたのか」
「はい。まだ婚約ですが。婚約してから一年以上経たないと、ボクたちは結婚できないでしょう」
「そうだな」
それは彼らの結婚相手が、それにふさわしい人物であるかどうかを見定める期間。
「リューディア。おめでとう。君にはエメレンスのような男が相応しいよ」
と、形式上の言葉を口にするモーゼフだが、本心は別なところにある。もちろん、リューディアもエメレンスもそれに気付くはずもなく。
「ありがとうございます」
リューディアも素直にその言葉が口からついてくるのが不思議だった。モーゼフにはもっと複雑な感情が生まれると思っていたから。
「どうやら、私の婚約発表をするために物事が進んでいたようだが、残念ながら私にはそのような相手がいない。だからエメレンス。その日は君たちの婚約発表の場にしようと思っているのだが、どうかな?」
エメレンスは驚いてモーゼフを見た。彼の顔は喜悦に満ちている。
「それから、リューディア。私は君に謝らなくてはいけないことがたくさんある」
モーゼフの言葉に、リューディアは黙って頷く。
「まずは、今回のこのメイソン侯爵家の悪事を暴くために君を巻き込んでしまった。君を危険な目に合わせてしまって申し訳ない」
モーゼフは深く頭を下げる。リューディアは「はい」と小さく頷いた。
「それから、ずっと。君のことを『ブス』と言い続けたこと。心にも無いことをずっと言い続け、君を傷つけてきた」
リューディアの瞳が儚く揺れる。
「私は君を好いていた。君がとても愛らしくて、君が近くにいるだけで胸が苦しくなった。君をブスと思い込み、君を嫌って君から嫌われれば、そのような気持ちから解放されるのではないかと思った」
「はい……」
「でも無理だった。君に会えば会うほど、胸が痛んで苦しくなる。だから、私は君から解放され、君を解放することを望んだ」
それが婚約解消の事実。いや、モーゼフの思い。それでもこの婚約解消には彼女には知られたくない別のモーゼフの気持ちと理由がある。
シャルコの採掘現場から魔宝石を盗むことを指示したとして。つまり、魔宝石の窃盗。
その日、ヘイデンが口にしていたように現場は休みだった。もちろん、モーゼフの立太子の儀に備えてのめでたいお休みで、シャルコも街中が浮かれていた。
「めでたい日だ。みんなで酒でも飲もう」
採掘師長のガイルが部下たちを誘う。そこまではよかった。だが、それでも彼らは採掘師たちだ。なんと、彼らは採掘現場で酒盛りを始めたのだ。採掘師らしいと言えばらしいのだが。
そこへ、現場が長期休暇中で誰もいないと思って侵入してきた輩がいる。もちろん、その輩の狙いは魔宝石。酒盛りしている採掘師たちとばったり出会い、屈強な彼らにあっさりと取り押さえられてしまう。すぐさま、採掘部隊の魔導士たちが呼ばれ、尋問。そこからメイソン侯爵家へと繋がり、メイソン侯爵家の屋敷に魔導士と騎士たちが乗り込んだ。さらに娘であるフリートも掴まってしまったことを耳にしたメイソン侯爵は、逃げられないと思ったのか、罪を認めた。
これが、モーゼフの立太子の儀を五日後に控えたときの出来事。
その日。そのドタバタ劇が落ち着いたころ、リューディア、エメレンス、そしてモーゼフの三人が応接室でゆったりとお茶を嗜んでいた。
「そうか。エメレンスはリューディアと結婚することを決めたのか」
「はい。まだ婚約ですが。婚約してから一年以上経たないと、ボクたちは結婚できないでしょう」
「そうだな」
それは彼らの結婚相手が、それにふさわしい人物であるかどうかを見定める期間。
「リューディア。おめでとう。君にはエメレンスのような男が相応しいよ」
と、形式上の言葉を口にするモーゼフだが、本心は別なところにある。もちろん、リューディアもエメレンスもそれに気付くはずもなく。
「ありがとうございます」
リューディアも素直にその言葉が口からついてくるのが不思議だった。モーゼフにはもっと複雑な感情が生まれると思っていたから。
「どうやら、私の婚約発表をするために物事が進んでいたようだが、残念ながら私にはそのような相手がいない。だからエメレンス。その日は君たちの婚約発表の場にしようと思っているのだが、どうかな?」
エメレンスは驚いてモーゼフを見た。彼の顔は喜悦に満ちている。
「それから、リューディア。私は君に謝らなくてはいけないことがたくさんある」
モーゼフの言葉に、リューディアは黙って頷く。
「まずは、今回のこのメイソン侯爵家の悪事を暴くために君を巻き込んでしまった。君を危険な目に合わせてしまって申し訳ない」
モーゼフは深く頭を下げる。リューディアは「はい」と小さく頷いた。
「それから、ずっと。君のことを『ブス』と言い続けたこと。心にも無いことをずっと言い続け、君を傷つけてきた」
リューディアの瞳が儚く揺れる。
「私は君を好いていた。君がとても愛らしくて、君が近くにいるだけで胸が苦しくなった。君をブスと思い込み、君を嫌って君から嫌われれば、そのような気持ちから解放されるのではないかと思った」
「はい……」
「でも無理だった。君に会えば会うほど、胸が痛んで苦しくなる。だから、私は君から解放され、君を解放することを望んだ」
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