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エピローグ
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「エメレンス。君の方が王太子に相応しかったのではないか?」
この場にはいるのは兄と弟の二人きり。リューディアは今、王妃と共にお茶会を楽しんでいるところ。
「いえ、ボクは王太子、ましてこの国の国王には相応しくありませんよ」
二人はテーブルを挟んで向かい合って座っていた。血を分けた兄弟。同じような顔立ち。
「私は、あの女に騙されるような愚かな男だ」
「ええ。兄上は愚かで純粋な男です。ですが、ボクより狡くて容赦のない男だ」
そこでエメレンスが笑えば、モーゼフも冷たく笑う。
「気付いていたのか?」
「ええ。愚かな振りをしながら、人をどう操るかを考えている。ですが、あのフリートという女性を利用しようとして利用されてしまうのは、いかがなものでしょう」
そこでエメレンスは口角をあげた。
「ああ、それは私自身の力量の見込み違いだった。まさか、彼女の魔力があれほどのものとはな。あれは魔法公爵家をしのぐような代物だった……」
あのメイソン侯爵家の娘があれだけの魔力を秘めていたというのが、モーゼフにとっての大きな誤算だった。だからこそ、彼は自嘲気味に笑う。己の失態を恥じるしかない。
「それに。兄上が利用しようとしていた相手は、リューディアだって例外ではなかったはずだ」
そう、モーゼフは婚約者であるリューディアを利用しようとしていた。以前から黒い噂が絶えなかったメイソン侯爵家をあぶり出す為に。そのための婚約解消といっても過言ではなかった。だが、すでにフリートの魔の手が忍び寄っていたのだ。あのような形で婚約解消をしてしまったことだけが、モーゼフにとっては悔やまれる。だが、自分が完全に悪役になれたことだけは良かったのかもしれない。
「それでも、私が彼女を好んでいたのは紛れも無い事実だ。だからこそ、巻き込みたくなかった。それに、彼女が側にいる限り、私はこの国を守り切ることはできないだろうと、そう、思っていたからね」
初めて出会った時から彼女に惹かれた。彼女の気を引きたくて、彼女を傷つけるような言葉を口にしていた。だが、いつからかそれは、彼女から離れるための手段の一つとなる。
「つまり、兄上は愛する女性よりこの国をとった。そういうことになるわけですよね」
あの兄がリューディアと婚約解消をするはずがないと思っていたエメレンス。今回はフリートのせいでもあったし、それが無くても、モーゼフは自らを悪役に仕立てることで、早かれ遅かれそうするつもりでいたのだ。それは、彼女を愛するが故。
「そうだ。それがこの国を統治する者として必要な判断だったと思っている。それに、君が彼女に想いを寄せていたことも知っていたからね」
腕を組んだモーゼフは深く頷いた。その判断を間違ったとは思っていない。愛する人を守るため、この国を守るため、想いを寄せた女性に別れを告げた。フリートに操られてしまっていた部分はあるが。そうでなくても、この結末に変わりはなかった。
「だからこそ、ボクはこの国の国王には相応しくない。ボクはこの国がどうなろうと、何よりもリューディアを優先させる。この国が滅びようが、民たちが亡くなろうが、どうでもいい。リューディアが幸せであれば、周りがどうなろうと僕には関係が無い」
エメレンスは、表情を変える様子もなく、淡々としている。
「そう言った意味では、君が一番狡い男だ。あのように、彼女に眼鏡をかけさせて、人の目に触れないようにして。さらに、彼女から『自信』というものを失わせた。どうせ君のことだ。彼女に向かって『ブスだから自分以外の男の前では眼鏡を外すな』とか言ったのではないか?」
「ボクがディアに向かって、ブスと言うわけはないでしょう? 兄上でもあるまいし」
それを聞いたモーゼフは顔を歪ませるしかない。恐らく、ブスとは言わないまでも、それと似たような言葉で、彼女が顔を隠すように仕向けたに違いない。だからこの弟は狡いのだ。
そして、だからこそ彼女は思っているはず。自分がブスだから眼鏡をかけている、と。心許す人物の前でしかそれを外すようなことはしない、と。それがこの男のやり方なのだ。
この場にはいるのは兄と弟の二人きり。リューディアは今、王妃と共にお茶会を楽しんでいるところ。
「いえ、ボクは王太子、ましてこの国の国王には相応しくありませんよ」
二人はテーブルを挟んで向かい合って座っていた。血を分けた兄弟。同じような顔立ち。
「私は、あの女に騙されるような愚かな男だ」
「ええ。兄上は愚かで純粋な男です。ですが、ボクより狡くて容赦のない男だ」
そこでエメレンスが笑えば、モーゼフも冷たく笑う。
「気付いていたのか?」
「ええ。愚かな振りをしながら、人をどう操るかを考えている。ですが、あのフリートという女性を利用しようとして利用されてしまうのは、いかがなものでしょう」
そこでエメレンスは口角をあげた。
「ああ、それは私自身の力量の見込み違いだった。まさか、彼女の魔力があれほどのものとはな。あれは魔法公爵家をしのぐような代物だった……」
あのメイソン侯爵家の娘があれだけの魔力を秘めていたというのが、モーゼフにとっての大きな誤算だった。だからこそ、彼は自嘲気味に笑う。己の失態を恥じるしかない。
「それに。兄上が利用しようとしていた相手は、リューディアだって例外ではなかったはずだ」
そう、モーゼフは婚約者であるリューディアを利用しようとしていた。以前から黒い噂が絶えなかったメイソン侯爵家をあぶり出す為に。そのための婚約解消といっても過言ではなかった。だが、すでにフリートの魔の手が忍び寄っていたのだ。あのような形で婚約解消をしてしまったことだけが、モーゼフにとっては悔やまれる。だが、自分が完全に悪役になれたことだけは良かったのかもしれない。
「それでも、私が彼女を好んでいたのは紛れも無い事実だ。だからこそ、巻き込みたくなかった。それに、彼女が側にいる限り、私はこの国を守り切ることはできないだろうと、そう、思っていたからね」
初めて出会った時から彼女に惹かれた。彼女の気を引きたくて、彼女を傷つけるような言葉を口にしていた。だが、いつからかそれは、彼女から離れるための手段の一つとなる。
「つまり、兄上は愛する女性よりこの国をとった。そういうことになるわけですよね」
あの兄がリューディアと婚約解消をするはずがないと思っていたエメレンス。今回はフリートのせいでもあったし、それが無くても、モーゼフは自らを悪役に仕立てることで、早かれ遅かれそうするつもりでいたのだ。それは、彼女を愛するが故。
「そうだ。それがこの国を統治する者として必要な判断だったと思っている。それに、君が彼女に想いを寄せていたことも知っていたからね」
腕を組んだモーゼフは深く頷いた。その判断を間違ったとは思っていない。愛する人を守るため、この国を守るため、想いを寄せた女性に別れを告げた。フリートに操られてしまっていた部分はあるが。そうでなくても、この結末に変わりはなかった。
「だからこそ、ボクはこの国の国王には相応しくない。ボクはこの国がどうなろうと、何よりもリューディアを優先させる。この国が滅びようが、民たちが亡くなろうが、どうでもいい。リューディアが幸せであれば、周りがどうなろうと僕には関係が無い」
エメレンスは、表情を変える様子もなく、淡々としている。
「そう言った意味では、君が一番狡い男だ。あのように、彼女に眼鏡をかけさせて、人の目に触れないようにして。さらに、彼女から『自信』というものを失わせた。どうせ君のことだ。彼女に向かって『ブスだから自分以外の男の前では眼鏡を外すな』とか言ったのではないか?」
「ボクがディアに向かって、ブスと言うわけはないでしょう? 兄上でもあるまいし」
それを聞いたモーゼフは顔を歪ませるしかない。恐らく、ブスとは言わないまでも、それと似たような言葉で、彼女が顔を隠すように仕向けたに違いない。だからこの弟は狡いのだ。
そして、だからこそ彼女は思っているはず。自分がブスだから眼鏡をかけている、と。心許す人物の前でしかそれを外すようなことはしない、と。それがこの男のやり方なのだ。
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