わたしが聖女様を殺しました

澤谷弥(さわたに わたる)

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第一章(1)

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 大陸の西側にあるファーデン王国が、太陽神ファデルからとった名前がつけられているのは、太陽神ファデルがファーデン王国の建国に尽力したとも伝えられているからだ。
 そのため国を統治する王と、太陽神ファデルを信仰する聖職者たちの関係は、密なるものでもあった。

 しかし時代の流れとともに、その二つの間には少しずつ距離が生まれ、今では王族を支持する者は王城に、聖職者を支持する者は大聖堂に集まるようになっていた。

 それでも結婚は神の前で愛を誓うのだから、やはりファーデン国民の心には太陽神ファデルに対する信仰心が根付いているのだろう。ただ、信仰心と政治は別ものだと、そう考えているのかもしれない。

 ――ファーデン王国騎士団本部。

 王城と同じ敷地内にありながらも、王城とは独立した建物。ここは本部と呼ばれている。
 そこの会議室に騎士たちがずらりと並んでいるが、そこにいる騎士たちも騎士服を身にまとっている者だけではない。シャツにジャケットという、見た目だけでは騎士団所属と思えないような姿の者もいる。

「では、現時点において判明している内容について、説明する」

 これだけの人が集められたのは、今朝方、大聖堂の巫女が「聖女を殺した」と騎士団東分所に出頭してきたためだ。

 子どもの戯れ言かと思われるような話だが、それが事実だと認めざるを得ないのは、巫女自ら、聖女の頭部を手にしていたからだろう。

 巫女とは大聖堂で神に仕える女性の総称で、その年齢は生まれたばかりの赤ん坊から寿命を全うしそうな老女までと、幅がある。

 今回、出頭してきた巫女は、十三歳のカリノという名の少女。
 そして両手で抱えていた頭部。作り物とかまがい物とかではなく、本物の聖女の頭部だった。残りの胴体については、少女が証言した場所から出てきた、とのこと。

「死亡した被害者は、ラクリーア、十九歳、女性――」

 事件の内容を説明する騎士団総帥の淡々とした声が、室内に響く。想像しただけでも胸くそ悪くなるような事件だ。
 いきなり聖女の頭部を見せられた東分所のアロンという騎士は、早朝から叫んだ挙げ句、その場で嘔吐した。もう一人のデニスという騎士がすぐさま騎士団本部へ連絡をいれ、応援を呼ぶ。

 応援が駆けつけるまで、デニスはカリノにやさしく声をかけ、少女も落ち着いた様子で受け答えをしたようだ。そのとき、聖女をどこで殺したか、残りの身体はどこにあるのかを聞き出したようで、事件として被害者も犯人もはっきりとしており、謎に包まれている部分はない。

 いや、残されている疑問点としたら動機くらいだろう。

「――以上、解散」

 その言葉と共に、室内からは騎士たちがわらわらと出ていく。集められた騎士らは総勢三十名程度。
 被害者が聖女であるため、大聖堂の聖騎士たちとも連携する必要がある。しかし、殺された人間が聖職者や大聖堂の関係者であった場合、直接の捜査の指揮や容疑者への尋問は、王国騎士団が行うが、今まで、そういった事例はなかった。

 逆に、王族・貴族が被害者であった場合は、聖騎士が主導をとって捜査をする。しかしそういった事件は何か目に見えない力が働き、なかったものとされる。だから、聖騎士が捜査本部を立ち上げたという話は、ここ十数年、聞いていない。

 ちなみに、それ以外の一般的な民が関わっている場合、主導をとるのは王国騎士団となり、むしろこういった事件が多い。

 今回は、被害者が聖女という前代未聞の事件なのだ。まして、その容疑者が十三歳の少女で巫女ときた。
 聖女とは、聖職者の中でも神の力を与えられた女性とされている。その力を神聖力ともいうのだが、例えるなら聖女自身が魔石のような存在だろう。
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