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第六章(6)
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「はい。騎士様ならそれを見つけてくださるだろうと思いましたし、それを隠すこともせずに、わたしが望むようにしてくれるのではないかと、そんな期待を込めました」
「もし、私がアレをもみ消したら、どうされるおつもりですか?」
「そのときは、ラクリーア様のお側にいくだけです」
カリノが満足そうに微笑んだ。もう、後悔はない。やり残したことはない。
まるで、そう言うかのように。
「カリノさん。再度の確認ですが、聖女様の身体をめちゃくちゃにしたのは、あの方の指示で間違いないのですね?」
その言葉に、彼女はゆっくりと首を縦に振る。
「……はい。ラクリーア様の身体に、アルテール王太子殿下の痕跡が残るようなことはあってはならないと……」
「すべて、あの方の指示なのですね? 首を切断したのも?」
「そのほうが、みな、驚くだろうって。衝撃を与えるだろうって」
東分所で対応した騎士らにとっては衝撃だったろう。今でも若手の騎士のアロンは、部屋に閉じこもっていると聞いている。
「だから、大聖堂に戻って、いつも薪割りに使っている斧を持ってきました。首を切断したのはアルテール殿下です」
「それから、あのお方は……」
「逃げていきました」
これで話はつながった。
だが、この内容を明らかにするのは今ではない。
ここで騎士団に報告したとしても、すべてはもみ消されてしまう。なによりも王太子アルテールがかかわっているからだ。
「カリノさん。言いにくいことなのに、教えてくださってありがとうございます」
「今日は、あの人がいなかったから……」
あの人。ナシオンのことにちがいない。
「わたし、あまり男の人が得意ではありません。ごめんなさい」
それは、大聖堂で会った他の巫女らも同様だった。
「こちらこそ配慮不足で申し訳ありませんでした。あの人は、私の相棒なので」
「相棒? それは騎士様と恋人同士ってことですか?」
「それとはまた違いますね。仕事をするうえでの仲間です。私たちは、単独行動が禁じられています。そして女性騎士は少ないため、どうしても男性と組む必要が出てきてしまうのです」
カリノが小さく顎を引いたのを見て、なんとか納得してくれたようだと胸をなでおろす。
「ですが、今日のこのことについては、彼にも協力を頼む必要があります。それは、よろしいですか?」
「はい。騎士様が信頼されている方であれば」
「ありがとうございます。私は、真実を明らかにしたいと思っています」
「その結果、王族を敵にまわすことになってもですか? わたしは怖くて、アルテール殿下の言葉に従っています。誰かに助けを求めたとしても、同じ巫女では力にならないですし、聖騎士様に伝えても、相手が王国騎士団では勝ち目がありません。枢機卿や教皇様には、私からは伝える手段がありません。雲の上のような方たちですから」
今の話によって、一般的な巫女と、枢機卿や教皇との関係性が見えた。
「ところで、キアロさんはどちらにいらっしゃるのですか?」
キアロについては先ほど、曖昧に終わってしまった。ここまで話を聞いたのだから、キアロについてもはっきりとさせておきたかった。
「あの方に人質にとられているとか、そういったことはありませんか?」
ふるふると、カリノは勢いよく首を横に振った。
「それは、ありません。ですが、わたしもお兄ちゃんがどこにいるかはわかりません。ドランの聖堂に派遣される話は聞いていました。ですが、ドランにいないとなれば、わかりません」
それはカリノの心からの言葉なのだろう。
そのあと、彼女の心を落ち着けるかのように他愛のない話をしてから、フィアナは取り調べ室を出た。入り口に立っていた女性騎士に目配せをする。それはもちろん「終わった」という合図だ。
フィアナがカリノにしてやれることは、今はもう、何もない。
いや、移送された先の王城の地下牢での待遇を改善してもらうように、お願いすることだけはできるかもしれない。
「もし、私がアレをもみ消したら、どうされるおつもりですか?」
「そのときは、ラクリーア様のお側にいくだけです」
カリノが満足そうに微笑んだ。もう、後悔はない。やり残したことはない。
まるで、そう言うかのように。
「カリノさん。再度の確認ですが、聖女様の身体をめちゃくちゃにしたのは、あの方の指示で間違いないのですね?」
その言葉に、彼女はゆっくりと首を縦に振る。
「……はい。ラクリーア様の身体に、アルテール王太子殿下の痕跡が残るようなことはあってはならないと……」
「すべて、あの方の指示なのですね? 首を切断したのも?」
「そのほうが、みな、驚くだろうって。衝撃を与えるだろうって」
東分所で対応した騎士らにとっては衝撃だったろう。今でも若手の騎士のアロンは、部屋に閉じこもっていると聞いている。
「だから、大聖堂に戻って、いつも薪割りに使っている斧を持ってきました。首を切断したのはアルテール殿下です」
「それから、あのお方は……」
「逃げていきました」
これで話はつながった。
だが、この内容を明らかにするのは今ではない。
ここで騎士団に報告したとしても、すべてはもみ消されてしまう。なによりも王太子アルテールがかかわっているからだ。
「カリノさん。言いにくいことなのに、教えてくださってありがとうございます」
「今日は、あの人がいなかったから……」
あの人。ナシオンのことにちがいない。
「わたし、あまり男の人が得意ではありません。ごめんなさい」
それは、大聖堂で会った他の巫女らも同様だった。
「こちらこそ配慮不足で申し訳ありませんでした。あの人は、私の相棒なので」
「相棒? それは騎士様と恋人同士ってことですか?」
「それとはまた違いますね。仕事をするうえでの仲間です。私たちは、単独行動が禁じられています。そして女性騎士は少ないため、どうしても男性と組む必要が出てきてしまうのです」
カリノが小さく顎を引いたのを見て、なんとか納得してくれたようだと胸をなでおろす。
「ですが、今日のこのことについては、彼にも協力を頼む必要があります。それは、よろしいですか?」
「はい。騎士様が信頼されている方であれば」
「ありがとうございます。私は、真実を明らかにしたいと思っています」
「その結果、王族を敵にまわすことになってもですか? わたしは怖くて、アルテール殿下の言葉に従っています。誰かに助けを求めたとしても、同じ巫女では力にならないですし、聖騎士様に伝えても、相手が王国騎士団では勝ち目がありません。枢機卿や教皇様には、私からは伝える手段がありません。雲の上のような方たちですから」
今の話によって、一般的な巫女と、枢機卿や教皇との関係性が見えた。
「ところで、キアロさんはどちらにいらっしゃるのですか?」
キアロについては先ほど、曖昧に終わってしまった。ここまで話を聞いたのだから、キアロについてもはっきりとさせておきたかった。
「あの方に人質にとられているとか、そういったことはありませんか?」
ふるふると、カリノは勢いよく首を横に振った。
「それは、ありません。ですが、わたしもお兄ちゃんがどこにいるかはわかりません。ドランの聖堂に派遣される話は聞いていました。ですが、ドランにいないとなれば、わかりません」
それはカリノの心からの言葉なのだろう。
そのあと、彼女の心を落ち着けるかのように他愛のない話をしてから、フィアナは取り調べ室を出た。入り口に立っていた女性騎士に目配せをする。それはもちろん「終わった」という合図だ。
フィアナがカリノにしてやれることは、今はもう、何もない。
いや、移送された先の王城の地下牢での待遇を改善してもらうように、お願いすることだけはできるかもしれない。
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