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第七章(8)
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フィアナがわざとらしく顔を伏せると、シリウル公爵は「方法はないのか?」と問うかのように、その場にいる人たちの顔を見回した。
ふと、イアンが口を開く。
「大聖堂では、聖女様の遺髪を保管しておりますので、そちらから検査は可能かと思います」
その言葉にシリウル公爵は満足そうに頷く。つまり、すぐに確認しろという意味だろう。
「裁判官。私のほうからアルテール殿下に質問があるのですが、よろしいでしょうか?」
証拠も出ていないのに何を言うのだと、シリウル公爵の顔は訴えていた。だが、彼はすぐに平静を装う。
「この短剣が王家のものである以上、質問は妥当であると判断します。アルテール殿下、こちらへ」
アルテールから、先ほどまでの堂々たる振る舞いは薄れつつある。さすがに短剣は言い逃れができないとでも思っているのだろう。
だが、こうやって傍聴席からこちら側へ歩いている間に、あれこれと思案しているようにも見えた。
フィアナは証言台から下がり、その場をアルテールに譲った。
「それで、私に質問とはなんでしょう?」
アルテールが顔を横に向け、刺すような視線で睨みつける。
「お時間をいただきありがとうございます。一つだけ確認したいことがありました。アルテール殿下は、どうして聖女様がお亡くなりになられた場所をご存知だったのでしょう?」
また室内は騒がしくなる。
この質問の意図には、すぐに騎士団の面々も気がついたようだ。殺害現場が公表されていないのは彼らだって知っている。
だが王家の犬の王国騎士団だ。もしかしたらアルテールの味方をするかもしれない。そうなれば、すべてが水の泡となってしまうのだが。
これはフィアナにとっての一か八かの賭けでもあった。
「……それは、冒頭に裁判官がそう言いましたから」
アルテールの言葉に顔色を変えていくのは、騎士団の彼らだ。
「さようですか。裁判官、もう一度、冒頭の言葉をちょうだいしてもよろしいでしょうか」
シリウル公爵は頷き、手元の資料を見ながら言葉を発する。
「ファデル大聖堂の巫女カリノ。あなたは聖女ラクリーアを殺害しその死体を損壊した。その理由であなたはここにいます」
「アルテール殿下。お聞きになりましたか? 裁判官は、冒頭で聖女様が殺害された場所を口にしておりません」
「そんな……いや、冒頭では事件のあらましを説明するのが常じゃないか」
「はい。ですが、今回の事件は特殊であることから、聖女様の殺害現場を公表しておりません。それは、そちらの騎士団の方々に確認してもらってもよろしいかと?」
フィアナの言葉で、アルテールは騎士団の総帥を睨みつける。
だがそのような睨みで怯むような総帥でもない。威風堂々としており、ゆっくりと口を動かす。
「そのとおりですね。今回の事件は、被害者が聖女様。そして、殺害された場所が、大聖堂近くのアロス川。この川はファーデン国の水源でもありますからね。そのような場所で事件が起こったとなれば、国民が混乱するでしょう。ですから我々は、現場については口頭での情報共有のみで、いっさい文字では残しておりません」
「アルテール殿下は、どうして聖女様が殺された場所を川だと特定されたのですか?」
総帥の言葉にたたみかけるようにして、フィアナが問う。その答えを、シリウル公爵が待っているように見えた。
「……くそっ」
アルテールが悔しそうに歯を噛みしめているものの、必死に言い訳でも考えているにちがいない。
「アルテール殿下、お答えいただけますか?」
シリウル公爵にまで促され、渋々とアルテールが口を開いた。
「……呼び出されたんだ。ラクリーアに……」
「呼び出された?」
そうだ、とアルテールは大きく頷いた。
「もう、ここまできたら誤魔化したってしかたないだろう。だったら本当のことを言って、私が犯人ではないと決めてもらったほうがいい」
ふと、イアンが口を開く。
「大聖堂では、聖女様の遺髪を保管しておりますので、そちらから検査は可能かと思います」
その言葉にシリウル公爵は満足そうに頷く。つまり、すぐに確認しろという意味だろう。
「裁判官。私のほうからアルテール殿下に質問があるのですが、よろしいでしょうか?」
証拠も出ていないのに何を言うのだと、シリウル公爵の顔は訴えていた。だが、彼はすぐに平静を装う。
「この短剣が王家のものである以上、質問は妥当であると判断します。アルテール殿下、こちらへ」
アルテールから、先ほどまでの堂々たる振る舞いは薄れつつある。さすがに短剣は言い逃れができないとでも思っているのだろう。
だが、こうやって傍聴席からこちら側へ歩いている間に、あれこれと思案しているようにも見えた。
フィアナは証言台から下がり、その場をアルテールに譲った。
「それで、私に質問とはなんでしょう?」
アルテールが顔を横に向け、刺すような視線で睨みつける。
「お時間をいただきありがとうございます。一つだけ確認したいことがありました。アルテール殿下は、どうして聖女様がお亡くなりになられた場所をご存知だったのでしょう?」
また室内は騒がしくなる。
この質問の意図には、すぐに騎士団の面々も気がついたようだ。殺害現場が公表されていないのは彼らだって知っている。
だが王家の犬の王国騎士団だ。もしかしたらアルテールの味方をするかもしれない。そうなれば、すべてが水の泡となってしまうのだが。
これはフィアナにとっての一か八かの賭けでもあった。
「……それは、冒頭に裁判官がそう言いましたから」
アルテールの言葉に顔色を変えていくのは、騎士団の彼らだ。
「さようですか。裁判官、もう一度、冒頭の言葉をちょうだいしてもよろしいでしょうか」
シリウル公爵は頷き、手元の資料を見ながら言葉を発する。
「ファデル大聖堂の巫女カリノ。あなたは聖女ラクリーアを殺害しその死体を損壊した。その理由であなたはここにいます」
「アルテール殿下。お聞きになりましたか? 裁判官は、冒頭で聖女様が殺害された場所を口にしておりません」
「そんな……いや、冒頭では事件のあらましを説明するのが常じゃないか」
「はい。ですが、今回の事件は特殊であることから、聖女様の殺害現場を公表しておりません。それは、そちらの騎士団の方々に確認してもらってもよろしいかと?」
フィアナの言葉で、アルテールは騎士団の総帥を睨みつける。
だがそのような睨みで怯むような総帥でもない。威風堂々としており、ゆっくりと口を動かす。
「そのとおりですね。今回の事件は、被害者が聖女様。そして、殺害された場所が、大聖堂近くのアロス川。この川はファーデン国の水源でもありますからね。そのような場所で事件が起こったとなれば、国民が混乱するでしょう。ですから我々は、現場については口頭での情報共有のみで、いっさい文字では残しておりません」
「アルテール殿下は、どうして聖女様が殺された場所を川だと特定されたのですか?」
総帥の言葉にたたみかけるようにして、フィアナが問う。その答えを、シリウル公爵が待っているように見えた。
「……くそっ」
アルテールが悔しそうに歯を噛みしめているものの、必死に言い訳でも考えているにちがいない。
「アルテール殿下、お答えいただけますか?」
シリウル公爵にまで促され、渋々とアルテールが口を開いた。
「……呼び出されたんだ。ラクリーアに……」
「呼び出された?」
そうだ、とアルテールは大きく頷いた。
「もう、ここまできたら誤魔化したってしかたないだろう。だったら本当のことを言って、私が犯人ではないと決めてもらったほうがいい」
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