【R18】毎日「おはようのキス」をしないと発情する呪いにかけられた騎士団長を助けたい私

澤谷弥(さわたに わたる)

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第五章(2)

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「実は、リネットさんに誘われる前に、ラウルさんが来たんです」
「そうなんですか?」
「そうですよ。だって、お付き合い始めてから毎日、二人は一緒に食堂でお昼ご飯を食べていますよね? 最初は珍しがられたけど、今ではすっかり食堂でのおなじみの光景。微笑ましいという話です。つまり、ラウルさんは、リネットさんが私と昼食の約束を本当にしているのかどうか、を確認しに来たんです」

 んぐぅ、とリネットはパンを喉に詰まらせそうになった。

「ですから、ほら。これは何かあるなと思いまして、約束していましたって答えておきました。その後、リネットさんから誘いがあったから、もしかして喧嘩でもしたのかなって」
「喧嘩というよりは気まずいだけです。たっぷりと叱られたので……」

 リネットはバツが悪そうに肩をすくめる。

「リネットさんはラウルさんを楽にさせたかった。だけどラウルさんはリネットさんを大事にしたかった。ただそれだけなのではありませんか?」
「大事にしたい?」
「はい。むしろ今、とても大事にしていると思います。気まずいとは思いますが、きちんと話し合ったほうがいいですよ。そうしないと、兄さんのように……って。あ。とにかく、まだ付き合い始めたばかりですから、二人の関係は土台がしっかりしていません。些細なところから崩れていきます。それに最近、ラウルさんの評判もあがっているようでして……」

 もともと美丈夫な彼だ。ただ世話焼きがいきすぎて、今までは恋人同士の関係に至らなかったらしいが。

「食堂でリネットさんがラウルさんに甘える姿がうらやましいといいますか。尽くす系っていうんですかね? 今までさんざんラウルさんのことをウザいウザいって言っていた人たちが、そんなことを言い始めているようです」

 それを聞いたリネットは、心の中にもやっとした気持ちが湧いた。
 そのウザさが彼のいいところで、最初に受け入れたのはリネットだというのに。

「そんな不安そうな顔をしないでください。ラウルさんはリネットさんに夢中だと思います。そうでなかったら、わざわざ私に昼食の約束を確認しに来ないですよ。リネットさんと約束していたかどうかなんて」

 くすりと笑ったシーナは、オレンジジュースを一口飲む。

 ラウルがリネットを気にするのは、リネットがラウルの運命を握っているからだ。リネットがラウルの前から姿を消せば、彼は苦しんだ末に息絶える。

 だからラウルがリネットの側にいて、大事に扱って、離れないようにしているだけ。
 わかっているはずなのに、考えれば考えるほど、胸の奥がずきずきと痛む。

 ラウルと一緒にいると、リネットはおかしくなる。あれほど切望していたずぼら生活。さっさとラウルと離れて好き勝手に過ごそうと思っているのに、それを想像するとどこか寂しいと感じてしまうのだ。
 ましてラウルが他の女性と一緒に食事をしたり何したりを想像すれば、喉の奥もツンとする。

 少しでも気を抜けば涙がこぼれそうだった。これは身体を痛めつけられての涙ではない。となれば、どんな涙なのか。なんで涙が出てくるのか。
 そんな気持ちを誤魔化すように、リネットはスープを飲んだ。だがそれは、先ほどよりも塩辛い味がした。

 食事を終えた二人は、それぞれ午後の仕事へと戻っていく。

 再び地下書庫へとやってきたリネットだが、なぜか頭が痛かった。
 頭が痛すぎて集中できず、今日は地下書庫での調べ物をあきらめた。
 そのまま研究室に顔を出し、頭痛が酷いから帰るとだけ伝える。

「リネットが頭痛? もしかして知恵熱?」

 いつものようにエドガーが茶化してきたが、それすら受け答えするのが面倒だった。

「治療室によって、薬を飲んでいったら?」

 女性魔法師の言葉に甘え、治療室で痛み止めの薬を飲んでから帰った。

 ラウルの部屋に入るなり、そのまま大きなベッドに倒れ込む。彼の匂いがするベッドだ。彼の身体に包まれているような、そんな気持ちになって、リネットはすとんと眠りに落ちた。
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