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第五章(15)
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リネットが作る魔法具は、生命力を魔力に転換するもの。それにより、魔力を持たないアルヴィスが魔法を使えるように見せかけていた。
その魔法具を使い、属国を恐怖で従えさせてきた。しかしその魔法具の威力が落ちている。このままでは、魔法具が使えなくなるのではという不安も、アルヴィスの心に迫っていた。
世継ぎがいない。魔法具の力も衰えている。
アルヴィスが眠れなく理由には十分なものだ。意外と小心者だったようだと、アルヴィスは自嘲の笑みを浮かべる。
「えぇ。そろそろ陛下もリネット王女を恋しがると思い、スサ小国には連絡しておきました」
「ほほぅ?」
伊達にファミルは、アルヴィスが生まれる前からの付き合いではない。母の胎内にいたときから、見守ってきた男だ。
「ただ……もうリネット王女は娘ではないと。だからどこにいるかわからないと、そのようなことを申しておりました」
「なんだと?」
ドン、とアルヴィスはテーブルを叩く。その衝撃でグラスや茶器が揺れ、ガシャンと激しく音を立てた。
「リネットは、スサに戻ったのではないのか?」
約一年前、ほぼ寝たきりになっていたリネットを、アルヴィスは追い出した。あのときのリネットは、とにかく口うるさかった。身体を壊し、夜伽もできなかった。挙げ句魔法具も作れない。ただ寝ているだけのリネット。それでもか細い声で「むやみに魔法具を使わないでください」と、今にも折れそうな身体で訴えきた。その声が、なぜか今も耳に残る。
だからわずらわしくなって捨てた。
てっきり母国に連絡をし、そこで療養しているものだと思っていたのだが。
「はい。どうやらスサ小国にはおられないようです」
「では、どこに……?」
あの身体で行けるところなどないに等しい。むしろスサ小国から迎えがきて、連れて帰ったのではないのか。スサ小国から彼女を連れてくるとき、あの国王夫妻は泣きながらアルヴィスにすがったというのに。
ファミルはゆるりと首を横に振った。
「私のほうではわかりかねます」
アルヴィスは小さく舌打ちをする。
そこにいないとわかれば余計に会いたいという気持ちが湧き起こってくるから不思議なものだ。
「リネット王女を探すのですか? あの身体では……生きているかどうかもわかりませんよ? いくらでも利用方法あったというのに……」
ファミルのその言い方はアルヴィスを咎めている。
「まあ、いい。リネットは目立つだろう? 生きていれば誰かが目にするはずだ。もし、彼女を見かけたら私に報告するよう、通達を出す」
やっと気持ちが落ち着いたアルヴィスは、ファミルが淹れたお茶をカップに注いだ。すでに冷めており、湯気すら立たない。
「相変わらず、おまえのお茶は不味い」
「良薬は口に苦しですよ。魔法具の力も衰えている今、陛下には子作りに専念してもらったほうがよろしいかと」
ファミルはいつもそれを一番に考えている。
「とにかく、陛下の血さえ引いていればよろしいのです。魔力はその次……」
「では、入れ替えるか……」
今の側妃たちは二年以上も後宮に居座っている。
「次はどこの国から迎えますか? いや、むしろここは帝国内の有力貴族から迎えましょう。そちらのほうが協力的ですから」
ファミルの言うことも一理ある。
「では、妃のことは宰相らに伝えるか……」
アルヴィスは、もう一口不味いお茶を飲み、顔をしかめた。
「それよりも、あれだ……。私が魔法具に頼らなくても魔法を使えるようになれば……」
「陛下、ご安心ください。そちらも抜かりなく」
ファミルが薄く笑う。
その魔法具を使い、属国を恐怖で従えさせてきた。しかしその魔法具の威力が落ちている。このままでは、魔法具が使えなくなるのではという不安も、アルヴィスの心に迫っていた。
世継ぎがいない。魔法具の力も衰えている。
アルヴィスが眠れなく理由には十分なものだ。意外と小心者だったようだと、アルヴィスは自嘲の笑みを浮かべる。
「えぇ。そろそろ陛下もリネット王女を恋しがると思い、スサ小国には連絡しておきました」
「ほほぅ?」
伊達にファミルは、アルヴィスが生まれる前からの付き合いではない。母の胎内にいたときから、見守ってきた男だ。
「ただ……もうリネット王女は娘ではないと。だからどこにいるかわからないと、そのようなことを申しておりました」
「なんだと?」
ドン、とアルヴィスはテーブルを叩く。その衝撃でグラスや茶器が揺れ、ガシャンと激しく音を立てた。
「リネットは、スサに戻ったのではないのか?」
約一年前、ほぼ寝たきりになっていたリネットを、アルヴィスは追い出した。あのときのリネットは、とにかく口うるさかった。身体を壊し、夜伽もできなかった。挙げ句魔法具も作れない。ただ寝ているだけのリネット。それでもか細い声で「むやみに魔法具を使わないでください」と、今にも折れそうな身体で訴えきた。その声が、なぜか今も耳に残る。
だからわずらわしくなって捨てた。
てっきり母国に連絡をし、そこで療養しているものだと思っていたのだが。
「はい。どうやらスサ小国にはおられないようです」
「では、どこに……?」
あの身体で行けるところなどないに等しい。むしろスサ小国から迎えがきて、連れて帰ったのではないのか。スサ小国から彼女を連れてくるとき、あの国王夫妻は泣きながらアルヴィスにすがったというのに。
ファミルはゆるりと首を横に振った。
「私のほうではわかりかねます」
アルヴィスは小さく舌打ちをする。
そこにいないとわかれば余計に会いたいという気持ちが湧き起こってくるから不思議なものだ。
「リネット王女を探すのですか? あの身体では……生きているかどうかもわかりませんよ? いくらでも利用方法あったというのに……」
ファミルのその言い方はアルヴィスを咎めている。
「まあ、いい。リネットは目立つだろう? 生きていれば誰かが目にするはずだ。もし、彼女を見かけたら私に報告するよう、通達を出す」
やっと気持ちが落ち着いたアルヴィスは、ファミルが淹れたお茶をカップに注いだ。すでに冷めており、湯気すら立たない。
「相変わらず、おまえのお茶は不味い」
「良薬は口に苦しですよ。魔法具の力も衰えている今、陛下には子作りに専念してもらったほうがよろしいかと」
ファミルはいつもそれを一番に考えている。
「とにかく、陛下の血さえ引いていればよろしいのです。魔力はその次……」
「では、入れ替えるか……」
今の側妃たちは二年以上も後宮に居座っている。
「次はどこの国から迎えますか? いや、むしろここは帝国内の有力貴族から迎えましょう。そちらのほうが協力的ですから」
ファミルの言うことも一理ある。
「では、妃のことは宰相らに伝えるか……」
アルヴィスは、もう一口不味いお茶を飲み、顔をしかめた。
「それよりも、あれだ……。私が魔法具に頼らなくても魔法を使えるようになれば……」
「陛下、ご安心ください。そちらも抜かりなく」
ファミルが薄く笑う。
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