【R18】毎日「おはようのキス」をしないと発情する呪いにかけられた騎士団長を助けたい私

澤谷弥(さわたに わたる)

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第四章(3)

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 散歩から戻れば、今日も朝からぐったりソファに倒れ込む。リネットの様子を微笑ましく見ているラウルは、食堂に朝食を取りに行ったようだ。

 リネットはふかふかのクッションを抱きしめ、ラウルが来るのを待っていた。

(……やっぱり昨日は、ここで寝たはずなのに)

 それなのにラウルと一緒にベッドで眠っていた事実が解せない。

(それに、わりと紳士的な人……よね?)

 アルヴィスと比べても、ラウルのほうがぐっと魅力的だ。それは容姿がというよりは、性格や物腰なども含めて。
 ただ、あのおせっかいさえなければ、周囲に女性が絶えなかっただろう。おせっかいによるウザさは彼の魅力を半減どころか、八割減くらいさせている。 

 リネットはクッションを抱きしめごろごろしているはずなのに、眠気はいっこうに襲ってこなかった。昨日は散歩から帰ってきたあとは動きたくなくて半分意識を失っており、さらに知らぬ間に朝食をとった挙げ句、気がついたら部屋にぽつんと一人という状況だった。

 しかし今日は眠くない。身体は疲れているものの、動けないというほどではない。動きたくないだけで。

「リネット。食事をもらってきたぞ」

 バンと勢いよく扉を開けてラウルがやってきた。銀トレイの上には焼きたてのパンやスープが並び、香ばしい匂いが部屋に広がる。

「今日はきちんと起きていたようだな。食欲はあるか?」
「昨日よりは……?」
「そうか。それならよかった」

 嬉しそうに破顔するラウルを見れば、やはり悔しい。恐らく今のリネットは、ラウルの思い通りになっているはずだ。

「どうした? そんな不満そうな顔をして……」

 悔しさが顔に出ていたらしい。

「いいえ? ちょっとだけ団長さんの作戦にまんまと乗せられたといいますか……」
「なるほど? だが、それが健康的な生活に必要なものだ。昨日はぐっすり眠れたようだし、散歩で少し身体を動かしている。あとは、食事も三食きっちり食べただろう?」
「だからです。さようなら、私のずぼら生活……」

 はははは、とラウルは豪快に笑う。

「リネットは面白いな」
「団長さんほどではないと思いますけど? 私のような面倒くさい人間をかまうなんて……」
「前にも言ったように、今の俺は君がいないと生きられないからな」
「だったら! やっぱりあのときエドガー先輩を選んでおけばよかったんですよ。もしくはヒースさんとか」
「男性と女性が幾人かいて、その中から誰か一人をキスの相手に選ばれなければならないと言われた、まずは女性から選ぶ。だが、ヒースとキスをしなければ死ぬと言われたら、仕方なくヒースを選ぶ……」

 やはりリネットが女性だから選ばれたのだ。さらに独身だから、ブリタよりもリネットが選ばれた。

 わかっていたというのに、それを改めて言われてしまえば、なぜかがっかりしている自分がいる。
 その感情を悟られないようにと、平静を装ってパンを手に取った。

「今日はパンも食べるんだな」

 本当にラウルはめざとい。リネットの変化を見逃さない。

「そうですね。団長さんがパンも食べろと言いましたから。あとでガミガミ言われるのもうるさいので」
「俺の言うことを、素直に聞いてくれて嬉しいよ」

 ラウルのパンはリネットのものとは違う。具材がたくさん挟み込まれている大きなパンだ。それを一口で半分ほどまで大胆に頬張る。

「見事な食べっぷりですね。胸焼けしそうです」
「言っただろう? 俺たち騎士は身体が資本だからな。特に第七は泥臭い仕事を引き受けているからな。食べられるときに食べて、休めるときに休む」
「へぇ。でしたら私の考えと変わらないじゃないですか。食べたくなったら食べる。眠くなったら寝る」
「それは根本的に違う。俺たちは食べられるときに食べる。君は食べたくなったら食べる。違うじゃないか」

 これといった言葉がわからず、リネットはパンを口の中に入れたまま、じっとラウルを見つめた。

 だが彼はそんな視線をものともせずに、がつがつと食事をすすめている。

 またどこか悔しい気持ちが、リネットの心の中に湧いてきた。だけど反論しても何かと言い返されてしまう。しかもそれが的を射ているから、歯がみしてしまう。

 なんとなく気まずい雰囲気を感じ取ったのか、ラウルが騎士団で飼っている猫の話題を振ってきた。今は五匹いる猫だが、すべてラウルが拾ってきたとか。

 スープをすすりながら、リネットはそんな彼の話に耳を傾けていた。

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