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第三章:夫 x 夫 x 夫(3)
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「はぁあああ?」
ネイサンの素っ頓狂な声が、エントランス内に響く。
しかしユージーンは気にもとめない。とにかく、毒蛇を二匹も素手で持っていた彼女の姿が、頭から離れない。
「ネイサン。俺は先に湯浴みをする。遠征から戻ってきたばかりだからな。少々、埃っぽい」
「承知しました」
今になって、家族をおいて魔獣討伐に赴く団員たちの気持ちがわかったかもしれない。戻ってきたときには、このような気持ちになるのだ。
彼らも今頃は、家族と再会して、喜びに満ちあふれているのだろうか。
自然と顔が綻んだ。
そんなユージーンの姿を、ネイサンが細くした目で見つめてきた。
ゆぐに湯浴みを行ったユージーンは、普段よりも念入りに、魔獣の臭いを落とすかのように身体を洗った。魔獣討伐を続けていると、その臭いに慣れてしまう。体液から変な臭いを放つ魔獣もいて、それを初めて浴びたときは最悪な気分になったものだ。もしかしたら、今も魔獣の変な臭いが身体に染みついているかもしれない。
とにかく、クラリスの前に立つのに、自分をよく見せたいという気持ちが働いた。
しかし、湯に入ったところでユージーンは後悔に襲われる。
なぜあのとき、期間限定の結婚、離婚前提の結婚、離婚約を提案をしてしまったのか。
(あのときの俺に言いたい。馬鹿な提案をするな――)
クラリスを手放したいとは思えない。一生、妻として側にいてほしい。そういった欲望が、ひょっこりと顔を出し始めている。
一目惚れとは、このようなことを言うのだろう。一目見ただけで、ユージーンのすべてが彼女に奪われた。
今でも心臓はドキドキと痛いくらいに動いている。
それを落ち着けるかのように、湯を両手ですくい、顔にびしゃっと勢いよくかけた。
彼女のことを思うだけで胸が苦しく、下腹部が熱い。たぎるような血液が、全身を駆け巡る。
(だが、彼女は今、俺の妻だ。結婚のときの約束を破ることになるかもしれないが、今の気持ちを正直に伝えれば……)
どうやって彼女の心をつなぎ止めるべきか、それをユージーンは必死に考えていた。
湯浴みを終えたユージーンは、晩餐の場にふさわしいタキシードを選んだ。軍人でもある彼は、軍服も正装として認められている。それでも今は、こちらのほうがクラリスと共に過ごす時間に調和していると思ったのだ。
先に席についたユージーンは、クラリスがやってくるのを今か今かと待っていた。これほどまで待ち遠しいと思ったのは、幼少期に両親からの誕生日プレゼントを楽しみにしたいたとき以来だろう。
食堂に現れたクラリスは、先ほどの簡素なエプロンドレス姿とは異なり、鈍色のイブニングドレスを身にまとっていた。装飾も少なく、地味な色ではあるが、シャンデリアの光が当たれば、きらきらと銀色に輝く。胸元を飾る控えめな花の刺繍は、虹色に光る。
「あ、あの……変でしょうか? こちらに来てからというもの、こういったドレスを着る機会が減りまして……久しぶりに着てみたのですが……」
恥じらいながらも言い訳するような彼女の姿に、ユージーンは見惚れていた。
女性は化けるとは聞いていたが、毒蛇を二匹持っていた彼女と、目の前の彼女が同一人物である事実に驚きを隠せない。そのギャップに、心が射貫かれる。また、クラリスの魅力を一つ知ってしまった。
「……いや。よく似合っている」
ネイサンがユージーンに耳打ちする。
「ユージーン様の名前で贈ったドレスです」
そうだったかもしれない。
どのような女性がやってくるかまったくわからなかったから、ネイサンに「適当に」と頼んだのだ。ましてあのときは、毒女と呼ばれている女性かもしれない、という考えが頭の隅にはあった。
しかし、そんなことすらどうでもよくなるくらい、目の前のクラリスは美しい。そして、ユージーンに激しく襲いかかってきたのは後悔だ。
もっと彼女に似合うドレスを贈ればよかった――
クラリスは食事の所作も申し分ない。さすがあのアルバートの腰巾着であり、ベネノ侯爵家の令嬢である。
ネイサンの素っ頓狂な声が、エントランス内に響く。
しかしユージーンは気にもとめない。とにかく、毒蛇を二匹も素手で持っていた彼女の姿が、頭から離れない。
「ネイサン。俺は先に湯浴みをする。遠征から戻ってきたばかりだからな。少々、埃っぽい」
「承知しました」
今になって、家族をおいて魔獣討伐に赴く団員たちの気持ちがわかったかもしれない。戻ってきたときには、このような気持ちになるのだ。
彼らも今頃は、家族と再会して、喜びに満ちあふれているのだろうか。
自然と顔が綻んだ。
そんなユージーンの姿を、ネイサンが細くした目で見つめてきた。
ゆぐに湯浴みを行ったユージーンは、普段よりも念入りに、魔獣の臭いを落とすかのように身体を洗った。魔獣討伐を続けていると、その臭いに慣れてしまう。体液から変な臭いを放つ魔獣もいて、それを初めて浴びたときは最悪な気分になったものだ。もしかしたら、今も魔獣の変な臭いが身体に染みついているかもしれない。
とにかく、クラリスの前に立つのに、自分をよく見せたいという気持ちが働いた。
しかし、湯に入ったところでユージーンは後悔に襲われる。
なぜあのとき、期間限定の結婚、離婚前提の結婚、離婚約を提案をしてしまったのか。
(あのときの俺に言いたい。馬鹿な提案をするな――)
クラリスを手放したいとは思えない。一生、妻として側にいてほしい。そういった欲望が、ひょっこりと顔を出し始めている。
一目惚れとは、このようなことを言うのだろう。一目見ただけで、ユージーンのすべてが彼女に奪われた。
今でも心臓はドキドキと痛いくらいに動いている。
それを落ち着けるかのように、湯を両手ですくい、顔にびしゃっと勢いよくかけた。
彼女のことを思うだけで胸が苦しく、下腹部が熱い。たぎるような血液が、全身を駆け巡る。
(だが、彼女は今、俺の妻だ。結婚のときの約束を破ることになるかもしれないが、今の気持ちを正直に伝えれば……)
どうやって彼女の心をつなぎ止めるべきか、それをユージーンは必死に考えていた。
湯浴みを終えたユージーンは、晩餐の場にふさわしいタキシードを選んだ。軍人でもある彼は、軍服も正装として認められている。それでも今は、こちらのほうがクラリスと共に過ごす時間に調和していると思ったのだ。
先に席についたユージーンは、クラリスがやってくるのを今か今かと待っていた。これほどまで待ち遠しいと思ったのは、幼少期に両親からの誕生日プレゼントを楽しみにしたいたとき以来だろう。
食堂に現れたクラリスは、先ほどの簡素なエプロンドレス姿とは異なり、鈍色のイブニングドレスを身にまとっていた。装飾も少なく、地味な色ではあるが、シャンデリアの光が当たれば、きらきらと銀色に輝く。胸元を飾る控えめな花の刺繍は、虹色に光る。
「あ、あの……変でしょうか? こちらに来てからというもの、こういったドレスを着る機会が減りまして……久しぶりに着てみたのですが……」
恥じらいながらも言い訳するような彼女の姿に、ユージーンは見惚れていた。
女性は化けるとは聞いていたが、毒蛇を二匹持っていた彼女と、目の前の彼女が同一人物である事実に驚きを隠せない。そのギャップに、心が射貫かれる。また、クラリスの魅力を一つ知ってしまった。
「……いや。よく似合っている」
ネイサンがユージーンに耳打ちする。
「ユージーン様の名前で贈ったドレスです」
そうだったかもしれない。
どのような女性がやってくるかまったくわからなかったから、ネイサンに「適当に」と頼んだのだ。ましてあのときは、毒女と呼ばれている女性かもしれない、という考えが頭の隅にはあった。
しかし、そんなことすらどうでもよくなるくらい、目の前のクラリスは美しい。そして、ユージーンに激しく襲いかかってきたのは後悔だ。
もっと彼女に似合うドレスを贈ればよかった――
クラリスは食事の所作も申し分ない。さすがあのアルバートの腰巾着であり、ベネノ侯爵家の令嬢である。
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