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第四章:辺境伯 x 毒女(4)
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そう言った彼は、蛇のようにペロリと舌を出して唇を舐めた。たったそれだけなのに、彼には妙な色香が漂い、胸の奥がぐずりと音を立てた。それはアルバートには感じたことのない変な気持ちである。
「……わかった、今日は我慢しよう」
ユージーンは目尻をやわらかく下げた。先ほどまでとは違うその仕草に、またとぎまぎしてしまう。
「我慢って、何をですか?」
少しだけうるさい心臓を押さえ込み、クラリスはゆっくりと尋ねた。
「これから君を抱こうと思ったのだが……」
クラリスはぐわっと顔中が熱くなった。
「な、な、な、な、なにをおっしゃっていらっしゃるのでしょう」
あまりにも動揺して、自分でも何を言っているのかがわからない。
ユージーンは喉の奥で「くくっ」と笑っている。
「ああ、すまない。あまりにも君が初心な反応を見せてくれて、嬉しくなった。やっぱり、抱いてもいいか?」
「だ、だ、だ、ダメです。我慢するとおっしゃったばかりではありませんか!」
「そうだな。今日は我慢する。明日はどうなるかわからないが」
「明日……」
「なんだ? 君は俺の妻だろう? 俺もやっとここに戻ってこられて、愛おしい妻の側にいられるのだから。少しくらい、かまってくれたっていいのではないか?」
そう言ったユージーンは、いきなりクラリスの肩をつかんで抱き寄せ、口づけた。
あまりにもの行動のはやさに、気がついたら目の前に彼の顔があった。クラリスからしてみれば、そんな感じである。
それも唇と唇を合わせるだけの軽いものではない。彼はしつこく重ね合わせたあげく、唇を食んできた。
「んっ……ふっ……ン」
息苦しくなって呼吸を求めようとすれば、鼻から抜けるような甘い声が漏れた。次第に身体からも力が抜け、ずるずるとソファに沈みかける。
いや、押し倒されている。
今日は抱かないと口にしたユージーンが、熱い口づけをしながら、どさくさにまぎれてソファの上に押し倒してきたのだ。
「やぁ……んっ……」
これ以上、許してはならない。彼がもたらす甘い口づけによって身体がとろけ始めたころ、クラリスは自由になる両手で、彼の胸をドンドンと叩いた。
それで我に返ったのか、ユージーンがすっと身体を引き、やっと唇が解放された。
「だ、だ、旦那様。そうやって隙あらば押し倒そうとするのは、やめてください。我慢してくださるはずですよね?」
「ああ、すまない。あまりにも君との口づけが心地よすぎて」
真下から彼の顔を見上げると、その鉄紺の瞳には、情欲が見え隠れする。
「今日はここまでにしよう。明日以降、いろいろと相談したいことがある。時間をとってもらえるか?」
「あ、はい。もちろんです」
ユージーンがクラリスの身体を抱き起こす。
「だがな。君は俺の妻だ。それを忘れないでほしい」
「は、はい。期間限定の妻、ですよね? この結婚は離婚約ですよね?」
「なるほど……」
まるで口づけの名残を味わうかのように、彼はペロリと唇を舐めた。
その仕草を目にして、ざわっとクラリスの肌は粟立った。
「一生俺の妻でいてもらえるよう、俺も努力しよう。では、おやすみ」
チュっとクラリスの額に唇を落としたユージーンは、内扉を開けて自身の部屋へと戻っていく。
高まった身体の熱をやり過ごしながら、クラリスは寝台へと潜り込んだ。
次の日、目覚めてメイを呼ぶ。昨夜となんらかわりないクラリスの様子をみて、メイは少しだけ顔をしかめたものの、何事もなかったかのように朝の支度を整える。
クラリスは、朝食の前に温室にまで足を向けるのを日課としている。それもあって、普段は紺色のエプロンワンピースを身につけていた。調薬やら毒草の摘み取り、はたまた生き物の毒抜きをするときの作業のときにも着ている。
私室を出てエントランスへと向かうと、そこの長椅子にはユージーンが座って、新聞を読んでいた。昨日の晩餐のときと姿もかわって、白いシャツに黒のスラックスというくだけた服装である。
「おはようございます」
クラリスが声をかけると、ユージーンも新聞から顔をあげて「おはよう」と返す。
「これから温室へ行くのか?」
「はい」
「俺が同行しよう」
立ち上がったユージーンは新聞をたたんで、長椅子の上にパサリと置いた。さらに、メイに向けて目配せをする。
するとメイは一礼して去った。
「では、行こうか」
そう言ったユージーンは、ソファの肘掛けにかけてあった上着を羽織る。
クラリスはうんともすんとも返事をしていない。温室に行くのかを問われ、それに返事をしただけだというのに。
ユージーンが差し出した手に、そっと自身の手を重ねた。
「……わかった、今日は我慢しよう」
ユージーンは目尻をやわらかく下げた。先ほどまでとは違うその仕草に、またとぎまぎしてしまう。
「我慢って、何をですか?」
少しだけうるさい心臓を押さえ込み、クラリスはゆっくりと尋ねた。
「これから君を抱こうと思ったのだが……」
クラリスはぐわっと顔中が熱くなった。
「な、な、な、な、なにをおっしゃっていらっしゃるのでしょう」
あまりにも動揺して、自分でも何を言っているのかがわからない。
ユージーンは喉の奥で「くくっ」と笑っている。
「ああ、すまない。あまりにも君が初心な反応を見せてくれて、嬉しくなった。やっぱり、抱いてもいいか?」
「だ、だ、だ、ダメです。我慢するとおっしゃったばかりではありませんか!」
「そうだな。今日は我慢する。明日はどうなるかわからないが」
「明日……」
「なんだ? 君は俺の妻だろう? 俺もやっとここに戻ってこられて、愛おしい妻の側にいられるのだから。少しくらい、かまってくれたっていいのではないか?」
そう言ったユージーンは、いきなりクラリスの肩をつかんで抱き寄せ、口づけた。
あまりにもの行動のはやさに、気がついたら目の前に彼の顔があった。クラリスからしてみれば、そんな感じである。
それも唇と唇を合わせるだけの軽いものではない。彼はしつこく重ね合わせたあげく、唇を食んできた。
「んっ……ふっ……ン」
息苦しくなって呼吸を求めようとすれば、鼻から抜けるような甘い声が漏れた。次第に身体からも力が抜け、ずるずるとソファに沈みかける。
いや、押し倒されている。
今日は抱かないと口にしたユージーンが、熱い口づけをしながら、どさくさにまぎれてソファの上に押し倒してきたのだ。
「やぁ……んっ……」
これ以上、許してはならない。彼がもたらす甘い口づけによって身体がとろけ始めたころ、クラリスは自由になる両手で、彼の胸をドンドンと叩いた。
それで我に返ったのか、ユージーンがすっと身体を引き、やっと唇が解放された。
「だ、だ、旦那様。そうやって隙あらば押し倒そうとするのは、やめてください。我慢してくださるはずですよね?」
「ああ、すまない。あまりにも君との口づけが心地よすぎて」
真下から彼の顔を見上げると、その鉄紺の瞳には、情欲が見え隠れする。
「今日はここまでにしよう。明日以降、いろいろと相談したいことがある。時間をとってもらえるか?」
「あ、はい。もちろんです」
ユージーンがクラリスの身体を抱き起こす。
「だがな。君は俺の妻だ。それを忘れないでほしい」
「は、はい。期間限定の妻、ですよね? この結婚は離婚約ですよね?」
「なるほど……」
まるで口づけの名残を味わうかのように、彼はペロリと唇を舐めた。
その仕草を目にして、ざわっとクラリスの肌は粟立った。
「一生俺の妻でいてもらえるよう、俺も努力しよう。では、おやすみ」
チュっとクラリスの額に唇を落としたユージーンは、内扉を開けて自身の部屋へと戻っていく。
高まった身体の熱をやり過ごしながら、クラリスは寝台へと潜り込んだ。
次の日、目覚めてメイを呼ぶ。昨夜となんらかわりないクラリスの様子をみて、メイは少しだけ顔をしかめたものの、何事もなかったかのように朝の支度を整える。
クラリスは、朝食の前に温室にまで足を向けるのを日課としている。それもあって、普段は紺色のエプロンワンピースを身につけていた。調薬やら毒草の摘み取り、はたまた生き物の毒抜きをするときの作業のときにも着ている。
私室を出てエントランスへと向かうと、そこの長椅子にはユージーンが座って、新聞を読んでいた。昨日の晩餐のときと姿もかわって、白いシャツに黒のスラックスというくだけた服装である。
「おはようございます」
クラリスが声をかけると、ユージーンも新聞から顔をあげて「おはよう」と返す。
「これから温室へ行くのか?」
「はい」
「俺が同行しよう」
立ち上がったユージーンは新聞をたたんで、長椅子の上にパサリと置いた。さらに、メイに向けて目配せをする。
するとメイは一礼して去った。
「では、行こうか」
そう言ったユージーンは、ソファの肘掛けにかけてあった上着を羽織る。
クラリスはうんともすんとも返事をしていない。温室に行くのかを問われ、それに返事をしただけだというのに。
ユージーンが差し出した手に、そっと自身の手を重ねた。
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