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第四章:新しいお仕事ですか?(8)
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エーヴァルトのその説明だけで、何が起こったのかが容易に想像できた。妹たちもよくやっていたものだ。おすわりができた赤ん坊を押して後ろに倒す。
「まぁ、よくあることですから。そうやって加減を覚えていくのですよ。何をどうしたら痛みを感じるのか、怪我をするのかって」
アルベルトはトリシャからこっぴどく叱られているようだ。マリアンヌの泣き声は落ち着いてきたのに、アルベルトが嗚咽を漏らし始める。
「トリシャ様、マリアンヌは大きな怪我もありませんし」
「まりぃ、ごめんなさい」
次からやらなければそれでいいのだ。
「マリーも驚いただけですよ。ですが、やはりぶつかると痛いですから。気をつけてくださいね」
「まりぃ、いたいのいたいの、ごめんなさい」
アルベルトが手を伸ばして、マリアンヌの頭をなでた。
落ち着きを取り戻したマリアンヌは、うつらうつらとし始める。
「アルベルト様、マリーはそろそろお昼寝の時間のようです」
イリヤの腕の中で、マリアンヌは鼻水を垂らしながら眠っていた。
そうなるとアルベルトも眠そうに目をこすり始める。トリシャがメイドを呼んで、アルベルトを預けた。
「マリアンヌ様もお預かりしましょうか?」
メイドはそう声をかけてくれたが、イリヤはそれを断った。多分、今はイリヤの腕の中のほうが眠ってくれると思ったからだ。寝台におろした途端、起きそうな気がした。
そのままマリアンヌを抱いたまま、四人は他愛のない話をした。
だが、トリシャはエーヴァルトに政務をきちんとこなして、クライブに迷惑をかけないようにとビシッと言ってくれたのは大きいだろう。
クライブが顔をほくほくと輝かせていた。これでトリシャとクライブの仲が少しだけ改善されるとよいのだが。
イリヤもなんとかクライブとの生活に慣れた。いや、裸の彼と共寝することだけは慣れない。慣れたのは、屋敷のこと、定期的に王城へ足を運ぶこと。これくらいである。
クライブのいない間は、女主人として屋敷の切り盛りをする。数字は苦手であるが、そうも言ってられない。いやいやながらも付き合っているものの、最後の確認だけはクライブにやってもらう。
最初は「このような簡単な計算も間違えるのか」「いったいどのような教育を受けてきたのだ」と散々であったが、最近では計算間違いも減ってきた。
「閣下、こちらの確認をお願いします」
そう言ってイリヤがクライブに手渡したのは帳簿である。
「それから、マーベル子爵がお会いしたいと手紙がきておりました」
マーベル子爵、つまりイリヤの伯父。
手紙を受け取りながらも、その名を聞いたクライブは、眉間にしわを寄せた。
「日にちの指定はあるのか?」
「いえ、閣下のご都合のよい日にとのことで。公爵邸を来訪したいとのことです」
「当分は、無理だな。今、王城の仕事がごたごたしている」
エーヴァルトはあのときのトリシャの喝が効いたのか、最近では真面目に政務に励んでいるようだ。それでもごたごたしているというのであれば、エーヴァルト絡みの件ではないのだろう。
クライブは髪の間に指を入れるようにして頭を抱えた。よく見れば、目の下にもうっすらと隈ができている。
「まぁ、よくあることですから。そうやって加減を覚えていくのですよ。何をどうしたら痛みを感じるのか、怪我をするのかって」
アルベルトはトリシャからこっぴどく叱られているようだ。マリアンヌの泣き声は落ち着いてきたのに、アルベルトが嗚咽を漏らし始める。
「トリシャ様、マリアンヌは大きな怪我もありませんし」
「まりぃ、ごめんなさい」
次からやらなければそれでいいのだ。
「マリーも驚いただけですよ。ですが、やはりぶつかると痛いですから。気をつけてくださいね」
「まりぃ、いたいのいたいの、ごめんなさい」
アルベルトが手を伸ばして、マリアンヌの頭をなでた。
落ち着きを取り戻したマリアンヌは、うつらうつらとし始める。
「アルベルト様、マリーはそろそろお昼寝の時間のようです」
イリヤの腕の中で、マリアンヌは鼻水を垂らしながら眠っていた。
そうなるとアルベルトも眠そうに目をこすり始める。トリシャがメイドを呼んで、アルベルトを預けた。
「マリアンヌ様もお預かりしましょうか?」
メイドはそう声をかけてくれたが、イリヤはそれを断った。多分、今はイリヤの腕の中のほうが眠ってくれると思ったからだ。寝台におろした途端、起きそうな気がした。
そのままマリアンヌを抱いたまま、四人は他愛のない話をした。
だが、トリシャはエーヴァルトに政務をきちんとこなして、クライブに迷惑をかけないようにとビシッと言ってくれたのは大きいだろう。
クライブが顔をほくほくと輝かせていた。これでトリシャとクライブの仲が少しだけ改善されるとよいのだが。
イリヤもなんとかクライブとの生活に慣れた。いや、裸の彼と共寝することだけは慣れない。慣れたのは、屋敷のこと、定期的に王城へ足を運ぶこと。これくらいである。
クライブのいない間は、女主人として屋敷の切り盛りをする。数字は苦手であるが、そうも言ってられない。いやいやながらも付き合っているものの、最後の確認だけはクライブにやってもらう。
最初は「このような簡単な計算も間違えるのか」「いったいどのような教育を受けてきたのだ」と散々であったが、最近では計算間違いも減ってきた。
「閣下、こちらの確認をお願いします」
そう言ってイリヤがクライブに手渡したのは帳簿である。
「それから、マーベル子爵がお会いしたいと手紙がきておりました」
マーベル子爵、つまりイリヤの伯父。
手紙を受け取りながらも、その名を聞いたクライブは、眉間にしわを寄せた。
「日にちの指定はあるのか?」
「いえ、閣下のご都合のよい日にとのことで。公爵邸を来訪したいとのことです」
「当分は、無理だな。今、王城の仕事がごたごたしている」
エーヴァルトはあのときのトリシャの喝が効いたのか、最近では真面目に政務に励んでいるようだ。それでもごたごたしているというのであれば、エーヴァルト絡みの件ではないのだろう。
クライブは髪の間に指を入れるようにして頭を抱えた。よく見れば、目の下にもうっすらと隈ができている。
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