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第五章:それは追加契約になります(4)
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「奥様、今日はお疲れのようですね」
「えぇ。マリアンヌが夜泣きして」
「まだまだ、手もかかる時期ですから。奥様もご無理をなさいませんように」
サマンサの言葉が身に染みた。
マリアンヌの部屋に寄り、彼女を腕に抱いて食堂へと向かう。
クライブは先に席についていた。黒い髪を後ろになでつけ、眼鏡もかけている。いつも通りの彼である。
寝起きの彼と目の前の彼。
髪型と眼鏡だけで、がらりと雰囲気が異なる。
ドキッと心臓が震えた。
「おはようございます」
「あ~あ~」
イリヤの言葉に合わせて、マリアンヌも声をあげると、クライブの顔はゆるむ。
「ああ、おはよう」
先ほども挨拶したが、マリアンヌがいる前でも挨拶をするのが日課となっている。
イリヤはマリアンヌを隣の椅子に座らせた。これはマリアンヌ用にと高さを合わせ、落ちないようにと固定してある椅子である。
「あ~あ~あ~」
最近のマリアンヌは、ここに座ると食事ができることを覚えたのか、両手をぶんぶんと振り回す。
「マリアンヌは、朝から元気だな。昨日のことなど、覚えてはいないんだろうな」
「この頃には多いようですから、気にしてはなりません」
マリアンヌに食事を与えるのは、イリヤの役目である。これは、イリヤ自らが望んだこと。
「旦那様」
マリアンヌの口元をぬぐいながら、イリヤはクライブを呼んだ。視線は彼には向けない。
「昨夜のこと。お引き受けします」
近くにはナナカやチャールズもいるため、伝える言葉は最小限である。それでも彼は、この言葉の意味を理解したはずだ。
「……そうか」
彼に伝えるのであれば早いほうがいいと思った。
クライブはこのあとは王城へと向かってしまうし、そうなると返事は夜になる。その間、もだもだと一人で考え込むのが嫌だった。こうやって彼に伝えておけば、イリヤ自身の覚悟が決まる。
「では、その件は夜にでも話をしよう」
「はい」
イリヤはもう一口、マリアンヌの口元にスプーンを運んだ。彼女は大きく口を開けて、スプーンをくわえるともぐもぐと口を動かす。
「マリアンヌはよく食べるな。昨日、一暴れしてお腹が空いたのか?」
いつの間にか食事を終えていたクライブは目を細めた。
「あ~だ~だ~」
「イリヤ。マリアンヌを預かろう。君も食べなさい」
クライブがやってきてひょいとマリアンヌを抱き上げ、自席へと連れていってしまう。自分の膝の上に乗せて、今度は彼がマリアンヌにご飯を食べさせる。
正面にいるマリアンヌは、クライブが言ったようによく食べる。食べて喜んで、喜んで食べる。
見ているだけで心の奥がぽっとあたたかくなった。だから、このあたたかさを失いたくないのだ。例え、血の繋がりはなくても、マリアンヌはクライブとイリヤの子。子を守るのが親の責務。だから、あの話を引き受けようと決心した。
食事を終え、クライブを見送る。マリアンヌをナナカに預けたイリヤだが、やはり昨夜の件が尾を引いていた。
「えぇ。マリアンヌが夜泣きして」
「まだまだ、手もかかる時期ですから。奥様もご無理をなさいませんように」
サマンサの言葉が身に染みた。
マリアンヌの部屋に寄り、彼女を腕に抱いて食堂へと向かう。
クライブは先に席についていた。黒い髪を後ろになでつけ、眼鏡もかけている。いつも通りの彼である。
寝起きの彼と目の前の彼。
髪型と眼鏡だけで、がらりと雰囲気が異なる。
ドキッと心臓が震えた。
「おはようございます」
「あ~あ~」
イリヤの言葉に合わせて、マリアンヌも声をあげると、クライブの顔はゆるむ。
「ああ、おはよう」
先ほども挨拶したが、マリアンヌがいる前でも挨拶をするのが日課となっている。
イリヤはマリアンヌを隣の椅子に座らせた。これはマリアンヌ用にと高さを合わせ、落ちないようにと固定してある椅子である。
「あ~あ~あ~」
最近のマリアンヌは、ここに座ると食事ができることを覚えたのか、両手をぶんぶんと振り回す。
「マリアンヌは、朝から元気だな。昨日のことなど、覚えてはいないんだろうな」
「この頃には多いようですから、気にしてはなりません」
マリアンヌに食事を与えるのは、イリヤの役目である。これは、イリヤ自らが望んだこと。
「旦那様」
マリアンヌの口元をぬぐいながら、イリヤはクライブを呼んだ。視線は彼には向けない。
「昨夜のこと。お引き受けします」
近くにはナナカやチャールズもいるため、伝える言葉は最小限である。それでも彼は、この言葉の意味を理解したはずだ。
「……そうか」
彼に伝えるのであれば早いほうがいいと思った。
クライブはこのあとは王城へと向かってしまうし、そうなると返事は夜になる。その間、もだもだと一人で考え込むのが嫌だった。こうやって彼に伝えておけば、イリヤ自身の覚悟が決まる。
「では、その件は夜にでも話をしよう」
「はい」
イリヤはもう一口、マリアンヌの口元にスプーンを運んだ。彼女は大きく口を開けて、スプーンをくわえるともぐもぐと口を動かす。
「マリアンヌはよく食べるな。昨日、一暴れしてお腹が空いたのか?」
いつの間にか食事を終えていたクライブは目を細めた。
「あ~だ~だ~」
「イリヤ。マリアンヌを預かろう。君も食べなさい」
クライブがやってきてひょいとマリアンヌを抱き上げ、自席へと連れていってしまう。自分の膝の上に乗せて、今度は彼がマリアンヌにご飯を食べさせる。
正面にいるマリアンヌは、クライブが言ったようによく食べる。食べて喜んで、喜んで食べる。
見ているだけで心の奥がぽっとあたたかくなった。だから、このあたたかさを失いたくないのだ。例え、血の繋がりはなくても、マリアンヌはクライブとイリヤの子。子を守るのが親の責務。だから、あの話を引き受けようと決心した。
食事を終え、クライブを見送る。マリアンヌをナナカに預けたイリヤだが、やはり昨夜の件が尾を引いていた。
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