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第六章:そのお仕事、お引き受けいたします(2)
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わけのわからない高揚感が襲ってきたが、それを態度に出すようなことはしない。
門番には「今後、不審な者がきたときには、勝手に追い返すことなく連絡をするように」と伝えた。この要望は騎士団にも伝えておくべきだろう。
不審者を入れないのが門番の仕事ではあるが、その不審者の情報を共有しておくのも必要だ。もしかしたら、その者たちが町中で何か問題を起こすかもしれないし、そのための下見かもしれない。
とにかく、偶然が重なった結果、クライブはイリヤと出会えたのだ。いや、偶然ではなく運命にちがいない。
わずらわしいと思っていた女性の存在が、心強いと思ったのも初めてであるし、だからこそ彼女を知りたい。
だけど、そんな彼女はなかなか手強い。
「陛下、準備が整いました」
神官長の言葉で、クライブもはっとする。
これから、聖女召喚の儀が行われる。
本来であればひっそりと行うこの儀式だが、口うるさい奴らを黙らせるために、儀式を行うことを通知した。だから別室では、そんな口うるさい彼らが待っている。
召喚の儀が行われるこの部屋に、他の者がいないことも確認してもらった。疑心暗鬼になっているような彼らは、召喚して現れた人物ですら「聖女ではない」と言いかねないからだ。ただこの狭い部屋に、多くの人々を立ち合わせるのは難しい。
エーヴァルトが立ち合うと言えば、権力に屈したあいつらも渋々と納得する。国王本人がそれの言い出しっぺであることなど、彼らは知らないのだ。
聖女召喚の儀式を行うのは、神官長と魔法使いの三人。神官長も魔法使いも、前回の召喚の儀に関わった者たちである。この茶番劇に一役買ってもらう。
エーヴァルトが立会人を務め、クライブはそれの補佐をする。
「では、頼む……」
狭い部屋に描かれた魔方陣。召喚の儀が成功すれば、この中心部にマリアンヌを抱いたイリヤが現れるはず。そしてイリヤを聖女(代理)と認めるのだ。
チクチクと胸が痛むのだが、クライブにはその原因に心当たりなどなかった。ぐっと拳を握りしめる。
*~*~*
幅広の布を肩から斜めにかけて、ハンモック状になった部分にマリアンヌを入れる。クライブがどこからか情報を仕入れて、手配してくれた抱っこ紐である。マリアンヌがぴたっとイリヤに密着しているから、彼女の体温を感じられる。
「まんまぁ?」
抱っこ紐の中でマリアンヌは手を振り回していた。機嫌がよい。
クライブは、今日の昼過ぎに聖女召喚の儀を行うと言っていた。そこで召喚されるのは、マリアンヌを抱っこしているイリヤである。いや、イリヤに抱っこされているマリアンヌか。
とにかく、昼過ぎからはマリアンヌとこうやってくっついている必要があった。
「パパ。まだですかね~?」
昼過ぎとしか聞いていないし、召喚されるとはどのような感じであるかもわからない。
ただ待っているだけというのは、意外と暇というか手持ち無沙汰というか。何をしたらいいかがわからない。
とにかく、落ち着かなかった。できるものなら、さっさと終わってほしいとすら、思えてくる。
チャールズやサマンサたちには事情を伝えている。突如、イリヤとマリアンヌが屋敷からいなくなるのだ。何も言っておかなかったら、彼らだって驚く。
「ぱ、ぱ、ぱ、ぱ、ぱぁ~」
門番には「今後、不審な者がきたときには、勝手に追い返すことなく連絡をするように」と伝えた。この要望は騎士団にも伝えておくべきだろう。
不審者を入れないのが門番の仕事ではあるが、その不審者の情報を共有しておくのも必要だ。もしかしたら、その者たちが町中で何か問題を起こすかもしれないし、そのための下見かもしれない。
とにかく、偶然が重なった結果、クライブはイリヤと出会えたのだ。いや、偶然ではなく運命にちがいない。
わずらわしいと思っていた女性の存在が、心強いと思ったのも初めてであるし、だからこそ彼女を知りたい。
だけど、そんな彼女はなかなか手強い。
「陛下、準備が整いました」
神官長の言葉で、クライブもはっとする。
これから、聖女召喚の儀が行われる。
本来であればひっそりと行うこの儀式だが、口うるさい奴らを黙らせるために、儀式を行うことを通知した。だから別室では、そんな口うるさい彼らが待っている。
召喚の儀が行われるこの部屋に、他の者がいないことも確認してもらった。疑心暗鬼になっているような彼らは、召喚して現れた人物ですら「聖女ではない」と言いかねないからだ。ただこの狭い部屋に、多くの人々を立ち合わせるのは難しい。
エーヴァルトが立ち合うと言えば、権力に屈したあいつらも渋々と納得する。国王本人がそれの言い出しっぺであることなど、彼らは知らないのだ。
聖女召喚の儀式を行うのは、神官長と魔法使いの三人。神官長も魔法使いも、前回の召喚の儀に関わった者たちである。この茶番劇に一役買ってもらう。
エーヴァルトが立会人を務め、クライブはそれの補佐をする。
「では、頼む……」
狭い部屋に描かれた魔方陣。召喚の儀が成功すれば、この中心部にマリアンヌを抱いたイリヤが現れるはず。そしてイリヤを聖女(代理)と認めるのだ。
チクチクと胸が痛むのだが、クライブにはその原因に心当たりなどなかった。ぐっと拳を握りしめる。
*~*~*
幅広の布を肩から斜めにかけて、ハンモック状になった部分にマリアンヌを入れる。クライブがどこからか情報を仕入れて、手配してくれた抱っこ紐である。マリアンヌがぴたっとイリヤに密着しているから、彼女の体温を感じられる。
「まんまぁ?」
抱っこ紐の中でマリアンヌは手を振り回していた。機嫌がよい。
クライブは、今日の昼過ぎに聖女召喚の儀を行うと言っていた。そこで召喚されるのは、マリアンヌを抱っこしているイリヤである。いや、イリヤに抱っこされているマリアンヌか。
とにかく、昼過ぎからはマリアンヌとこうやってくっついている必要があった。
「パパ。まだですかね~?」
昼過ぎとしか聞いていないし、召喚されるとはどのような感じであるかもわからない。
ただ待っているだけというのは、意外と暇というか手持ち無沙汰というか。何をしたらいいかがわからない。
とにかく、落ち着かなかった。できるものなら、さっさと終わってほしいとすら、思えてくる。
チャールズやサマンサたちには事情を伝えている。突如、イリヤとマリアンヌが屋敷からいなくなるのだ。何も言っておかなかったら、彼らだって驚く。
「ぱ、ぱ、ぱ、ぱ、ぱぁ~」
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