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「お前、また僕のことを可愛いと思っているだろ」
「そうですね。長年、成長を見守ってきた殿下ですから、可愛いという気持ちはありますね」
「よし、次は僕がお前を洗ってやる」
「いえ、自分でできますよ」
「僕がお前を洗ってやりたいんだ。お前は僕の専属騎士なんだから、僕の言葉は絶対だろ?」

 こういったときに、専属騎士としての立場を求めてくるのはズルイと思う。

「ぼ、僕だって恥ずかしいんだ。僕だけ恥ずかしい思いをするのは不公平だろ! お前も恥ずかしくなれよ」

 私は今でも充分に恥ずかしい。

「わ、わかりました。殿下がそこまでおっしゃるのなら」
「ちょっと待て。お前はいつまで、僕を殿下と呼ぶんだ? 名前で呼べ。婚約者になったのだから」

 専属騎士の立場を求めたと思ったら、すぐに婚約者の立場を求めてる。結局、自分にとって都合のよい立場を選んでいるのは、私だって理解しているけれど、それでも拒めないのは、私もその立場を利用しようとしているからだ。

「レインハルト様? それとも、レイン?」
「あっ」

 なぜかレインハルト殿下が情けない声を出す。

「お前、そうやって不用意に色っぽい声で僕の名前を呼ぶのをやめろ! 見ろ! 勃ったじゃないか」

 それって私のせいなの? と思いつつもあたふたするレインハルト様はやはり可愛い。顔を真っ赤にして、虚勢を張ろうとしている。

「お前、あっちを向け。僕に背中を見せろ。僕を見るな」
「はいはい」
「くぅっ」

 悔しそうなレインハルト殿下の声が聞こえたが、私は素直に背中を向けた。
 ひたっと背中に何かが触れた。たくさんの泡を含んだ海綿にちがいない。こうやって他人に洗ってもらうのは、記憶がある限りでは初めてかもしれない。

「痛くはないか?」

 レインハルト殿下も、洗ってもらうのはしょっちゅうあったとしても、他人の背を洗うのは初めてだろう。何しろ高貴なるお方なのだから。

「はい。とても、気持ちいいです。人に洗ってもらうって、こんな感じなのですね」
「お前に洗ってもらうのは、とても気持ち良かった」
「そうですか。私も力加減がわからないから、ちょっとドキドキしましたが」
「ドキドキとか言うな」

 そんな彼の言葉も、どことなく震えていた。何を言っても文句を言われそうだから、私は黙って洗ってもらうことにしたのだが。

「ちょ、ちょっと。どこを触っているのですか!」

 レインハルト殿下の手がいつの間にか、前に伸びてきている。

「前も洗ってやる。いや、洗わせろ!」

 右側の胸の先端を、彼の親指が掠めていく。
「あっ、ん」

 思わぬ刺激にはしたない声が漏れた。
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